全編手描きの墨絵が印象的、長編アニメーション映画『新しい街』9月公開
ヴェネチア国際映画祭にてワールドプレミア、その後も名だたる映画祭のコンペティション上映された異色のアニメーション映画『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』が、9月より公開決定。予告編が解禁された。
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日本では村上春樹の翻訳で知られている短編の名手レイモンド・カーヴァーの、隠れた小説「シェフの家」にインスピレーションを得た本作。
主人公となる離婚した元カップルは、過去に引きずられる男と未来へと思いを向ける女。その再開と再度の別れを淡々と描き出す20ページほどの短編が、本作では1995年、カナダからの独立を目指し住民投票を行ったフランス語圏のケベック州のカップルに置き換えられた。
アルコール依存症の詩人ジョセフは別れた妻エマを思い出の地、ヴィル・ヌーヴに呼び出す。壊れた愛を再生しようとして、すれ違うカップルの普遍的でロマンティックな物語でありつつ、世界中で高まる独立運動やそれへの弾圧といった現代の問題ともリンクする。
全編が墨絵の手描きによって生み出される、シンプルながら情感にあふれた映像美、随所に詩の朗読が挟まれる芸術的な構成を生み出したのは、本作が初めての長編アニメーション作品となる新鋭アニメーション作家フェリックス・デュフール=ラペリエール。
これまでにない成熟したテーマと物語を贅沢に語り上げる手法で、ヴェネチア国際映画祭「ヴェニス・デイズ」部門でプレミア上映後、アヌシー、ザグレブなどの世界的なアニメーション映画祭で上映され、高い評価を受けた。
アニメーション作家の山村浩二は、「前進しているようでゆっくりと後退していく。モノクロームのミニマムな画面に、ケベックの黄昏の淡い色の変化を見た気がした」とコメント。また、映画評論家の秦早穂子は「分かりやすさばかりが求められる時代に息苦しさを感じるあなたの死んでしまった心を掻き起す映画」と述べている。
『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』は9月、渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。