日本アカデミー賞作品&主演賞受賞『ミッドナイトスワン』ひとりの人間の生を表現した俳優・草彅剛の輝き

「第44回日本アカデミー賞」授賞式が3月19日(金)に行われ、内田英治監督の『ミッドナイトスワン』が最優秀作品賞を受賞した。

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第44回日本アカデミー賞授賞式(C)日本アカデミー賞協会
  • 第44回日本アカデミー賞授賞式(C)日本アカデミー賞協会
  • 草なぎ剛/第44回日本アカデミー賞授賞式(C)日本アカデミー賞協会
  • 長澤まさみ/第44回日本アカデミー賞授賞式(C)日本アカデミー賞協会
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「第44回日本アカデミー賞」授賞式が3月19日(金)に行われ、内田英治監督の『ミッドナイトスワン』が最優秀作品賞を受賞した。また、本作で主演を務めた草彅剛が最優秀主演男優賞も受賞。最優秀主演女優賞は『MOTHER マザー』の長澤まさみ、最優秀助演男優賞は『Fukushima 50』の渡辺謙、最優秀助演女優賞は『浅田家!』の黒木華が受賞し、新旧入り混じった実力派の俳優勢が圧巻の受賞となった。

作品賞には、二宮和也が実在の写真家を演じた中野量太監督作『浅田家!』、国民的人気シリーズの50作目となった『男はつらいよ お帰り 寅さん』、小栗旬×星野源という実力派俳優の共演も話題を呼んだ『罪の声』、ロングランヒットで総動員数が52万人を超えた、草彅剛主演『ミッドナイトスワン』、福島第一原発事故を題材にした『Fukushima 50』の5作がラインナップ。テーマはすべて異なれど、心揺さぶる重厚な作品がそろった印象だ。

中でも、最優秀作品賞を受賞した『ミッドナイトスワン』は、トランスジェンダーとして身体と心の葛藤を抱え生きる凪沙(草彅さん)と、親から愛を注がれずバレエダンサーを夢見る少女・一果(服部樹咲)の心通い合う様子を描いた1作。切なくも美しい愛の形に、公開前の関係者試写の段階から絶賛の声が相次ぎ、9月25日(金)の封切り以降、現在まで超ロングランヒットとなり、「スワンの輪」は広がり続けている。

『ミッドナイトスワン』-(C)-2020「MIDNIGHT--SWAN」FILM-PARTNERS
本作においては、巨額な制作費の訴えや、「泣ける」などの華美なキャッチコピーは非ず、実直に心に訴える作品作りに評価が高まった。脚本も担当した内田監督をはじめとする制作陣、そしてキャスト勢の並々ならぬ思いと表現の凝縮した1作が、多くの観客の心に火をつけた。

特に、最優秀主演男優賞を受賞した草彅さんの演技は、すごみすら感じさせた。気高さと美しさに加え、脆さや弱さまでも内包し、ひとりの人間の生を草彅さんは全うした。育児放棄された親戚の少女・一果を疎ましく思っていたところから、いつしか母親のような思いが芽生えていく演技のなだらかさにも、思わず息を飲む。深い愛情と現実にさいなまれる凪沙の表情は、特に終盤、得も言われぬ輝きを放ち、場内を感動で静まり返らせた。

草なぎ剛/第44回日本アカデミー賞授賞式(C)日本アカデミー賞協会
草彅さんは受賞後のスピーチで、しばし呆然とした後、「いや…まじすか。ごめんなさい。頭真っ白になってしまって」と、たどたどしく言葉を紡ぐ。「本当に、今まで皆さんと仕事をさせてもらえたこととか、NAKAMAの皆さんに応援してもらっていることとか、しんごちゃん、ごろさんとか、近い人たちが支えてくれて…今日ここの舞台に立てたんだなと思って、うれしいです」と、草彅さんにまつわる大切な人たちの名前を挙げた。

さらに、「映画って、それぞれ作り手の方とか、役者の気持ちとか、いろいろな方向性はあると思うんですけど。なんか、ひとりひとりの人生が、よりよく自由にまっとうできるような、そんな作品作りと人と人との関わりの中で、これからも自分の人生をまっとうしていきたいと思います」と、かみしめるように、丁寧に、言葉を発した。

第44回日本アカデミー賞授賞式(C)日本アカデミー賞協会
作品賞を受賞した際にも、草彅さんは「奇跡が起きるんだなと思って。諦めたりしないで、一歩ずつというか。たまには振り返ることも人間誰しもあると思うんですけど、またそこから少しでも進むと、いいことがあるんだなと思って。本当にこの映画を愛していただいて、ありがとうございました」と感謝で綴った。

一方、主演女優賞を受賞した長澤さんは、『MOTHER マザー』で欲望のまま、身勝手に生きるシングルマザーを演じた。ホームレス生活を送り、社会から孤立するにつれ息子への執着を募らせる狂気じみた母親となり、圧巻の芝居を見せ、見事初の主演女優賞に輝いた。スピーチで、長澤さんはマイクを前に、ぐっと涙をこらえた。しかし、すぐに涙はあふれ、彼女の頬を美しくつたった。

『MOTHER マザー』(C)2020「MOTHER」製作委員会
「本当にたくさんの方に支えられなければ、映画作りはできないんだなって、去年、身に染みて感じました。きっと本当は作りたかった映画も、去年、作れなかった人たちもたくさんいると思います。公開できず先延ばしになっている人たちもたくさんいる中、公開されて、たくさんの方たちに見に行っていただけて、本当にうれしいですし、これからも誠実に映画作りに向き合っていきたいと思います」と、長澤さんは映画に対する強い思い入れと、映画人への愛を表明した。

長澤まさみ/第44回日本アカデミー賞授賞式(C)日本アカデミー賞協会
そのほかの主な受賞は、最優秀監督賞に『Fukushima 50』の若松節朗、最優秀アニメーション作品賞に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、話題賞の俳優部門には『罪の声』の小栗旬、同作品部門には『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が受賞した。また、新人賞に『望み』、『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』、『弥生、三月-君を愛した30年-』の岡田健史、『MOTHER マザー』の奥平大兼、『弱虫ペダル』の永瀬廉、『ミッドナイトスワン』の服部樹咲、『朝が来る』の蒔田彩珠、『ラストレター』森七菜が選出された。
《text:赤山恭子》

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