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『はちどり』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』ほか「ジェンダー・ギャップ映画祭」開催

今年11回目を迎える“日芸映画祭”は「ジェンダー・ギャップ」映画祭として『はちどり』『RBG 最強の85才』『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』など全15作品を上映。

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現役の日本大学芸術学部映画学科3年映像表現・理論コース映画ビジネスゼミで毎年実施している“日芸映画祭”は、11回目を迎える今年、「ジェンダー・ギャップ」映画祭として全15作品を上映する。

今年3月、「日本の男女平等指数が世界で120位」というニュースが発表された。2月にはJOC森前会長による「性差別発言」もニュースとなった。日本は、「女だから」「男だから」という無意識な差別や偏見、男女差別が根強く残る国。2017年にアメリカの映画界で始まった#MeToo運動も諸外国と比べると日本では拡散が弱く、これから社会に出る学生たちは将来に大きな不安を抱えているという。

『はちどり』

そこで今年度の映画祭のテーマを「ジェンダー・ギャップ」に決定。映画史の様々な作品を学ぶからこそ、長年見過ごされてきたジェンダー・ギャップという問題にいま一度、映画を通じて改めて観客と共に向き合いたいとして映画祭を企画。古今東西の映画15本から、いかに女性たちが戦ってきたのか、そして社会はそれをどう阻んできたのかジェンダーをめぐる価値観はどう変わっていったのか、国によってどう違うのかなどを観客と共に考えていく。

取り上げるのは、主に性差に疑問や悩みを持ち、行動してきた“女性”を描いた作品。中国の蔡楚生監督『新女性』と溝口健二監督『浪華悲歌』は、製作国こそ違えど、同時代作品においてどちらの主人公も女性であるがゆえに苦しい選択を迫られている。

『新女性』

そして女性監督の筆頭であるアニエス・ヴァルダ作品からは『5時から7時までのクレオ』を選出。また、家庭や学校での性差に悩む少女の繊細な心情を捉えたキム・ボラ監督の『はちどり』はスタッフ全員一致で選出。日藝映画祭で初選出となるアニメーションは、遊女であるリンの生き方がさらに深く描かれた片渕須直監督『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

また、『RBG 最強の85才』『この星は、私の星じゃない』のように、男女平等の道を切り拓いてきた女性のドキュメンタリー作品にも注目。そして、2020年東京国際映画祭コンペティション出品作の舩橋淳監督による『ある職場』は、本映画祭でプレミア上映として公開する。

『ある職場』

例年以上に現代の作品を多く選定したのは、今後の自分たちの生き方の鍵が見えやすいと考えたゆえという。今も昔もジェンダー・ギャップに満ち溢れた世界の中で、本映画祭を通して“変わりゆく男女観”に気づき、幅広い層の方々と共に自由に語り合えることを目指していく。

なお、本映画祭はテーマ設定、企画から作品選定、上映交渉、ゲスト交渉、チラシやパンフレットのデザイナー探しから制作、そして会場運営に至るまで、全て3年生の学生主導で行なっている。


「ジェンダー・ギャップ映画祭」に著名人からコメント到着


上野千鶴子(社会学者、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長)
「自分の目の黒いうちに、区別が差別に昇格した」と名言を残したのは、女性学の大先輩、駒尺喜美さん。映画は社会の状況を反映する。おんなとおとこの「あたりまえ」がどうやって「あたりまえ」になったか、そして「あたりまえ」でなくなっていったかを知るためには映画は最高の歴史資料。ううむ、へええ、まさか、やっぱり、と驚きと感動の連続であることを請け合います!

ブレイディみかこ(ライター・コラムニスト)
「ジェンダー・ギャップ」は何も特別な概念ではない。政治家や識者が議論するポリティカル・イシューでも、ジャーナリストが新聞やネットの記事に書くための専門用語でもない。それはわたしたちの足元につねに蹲っていて、この社会を生きる一人一人の暮らしの中に浸み出しているものだ。その影響を受けているのは女性だけではないから、すべての性の人々が考えるべき問題でもある。1本の映画が、自分の生活の中にもあった不可視化された差別や格差について気づくきっかけになることがある。気づいてしまった後に何をするかは、あなた次第だ。

片渕須直(アニメーション映画監督)
両性のあいだにはどうしても相違があってしまい、それゆえに理解が難しいのであるなら、それを乗り越えさせるものこそ「想像力」ではないか。かつて自作『アリーテ姫』(2000)で語ろうとしたことです。『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019)の主人公もアリーテ姫と同じ魔法にかけられてしまい、やはりもともとの名前や、それまで携えてきたアイデンティティを失わされます。そして、そこからの解決がもたらされない、というのは現実の負の面を反映しているから。両映画の間の20年近くの時間はなんだったのでしょう。

「ジェンダー・ギャップ」映画祭は12月4日(土)~12月10日(金)、ユーロスペースにて開催。


<上映作品一覧>※制作年順
『新女性』(蔡楚生/1935)
★国立映画アーカイブ収蔵のプリントで、活弁と生伴奏付きの上映
『浪華悲歌』(溝口健二/1936)
『赤線基地』(谷口千吉/1953)
『月は上りぬ』(田中絹代/1954)
『女が階段を上る時』(成瀬巳喜男/1960)
『5時から7時までのクレオ』(アニエス・ヴァルダ/1961)
『叫びとささやき』(イングマール・ベルイマン/1973)
『百万円と苦虫女』(タナダユキ/2008)
『ハンナ・アーレント』(マルガレーテ・フォン・トロッタ/2012)
トークゲスト★矢野久美子フェリス女学院大学教授
『少女は自転車にのって』(ハイファ・アル=マンスール/2013)
『はちどり』(キム・ボラ/2018)
『RBG最強の85才』(ジュリー・コーエン、ベッツィ・ウェスト/2018)
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(片渕須直/2019)
トークゲスト★片渕須直監督
『この星は、私の星じゃない』(吉峯美和/2019)
トークゲスト★田中美津さん(登場人物、鍼灸師)
『ある職場』(舩橋淳/2022)
トークゲスト★舩橋淳監督、平井早紀(主演)
《シネマカフェ編集部》

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