有名な高級レストランで料理長を務める美しい女性。でも、極端な完璧主義者であるがゆえに、人と関わることは大の苦手。プライベートを満喫することもなく、仕事にばかり没頭してきた。ところがある日、彼女の存在を脅かすライバルが出現。自由奔放で陽気な(そしてかっこいい!)男性の副料理長がやってきたのだ。彼にことごとくペースを崩され、彼女は絶不調に。そんな折、姉の突然の死により、たった一人の肉親となった姪を引き取ることに。彼女の人生は大きな転機を迎えていく──。これは、先日来日し、輝くようなオーラを振りまいていったキャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演最新作『幸せのレシピ』のストーリー。でも、「あれ、どこかで聞いた話だな…」と思っていたらやっぱり! 日本でも2002年に公開されたドイツ映画『マーサの幸せレシピ』のハリウッド版リメイクでした。ドイツ映画=ごつい、というイメージを覆した小気味の良いスタイリッシュな作品。派手さはないけれど、丁寧な下味作りによる豊かなコクを感じさせる、上質なメイン料理のような味わいで、たっぷりと満足感があったことを今でも覚えています。この作品に目をつけるとはさすがハリウッド。オリジナルで主演を務めたマルティナ・ゲデックは、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した傑作『善き人のためのソナタ』に出演。ロバート・デ・ニーロ監督2作目となる『グッド・シェパード』にも登場しているので、映画ともども存在感を示したようです。設定などを調整はしたものの、『幸せのレシピ』の根底に流れるテーマはオリジナルと同じ。幸せは、ほんのちょっとのさじ加減でやってくるというもの。確かに、ひとさじの調味料を加えただけで、がらりと違った味になる料理は、人生ととても似ています。どこかピリッとしないなら、自分でスパイスを加えなければ、美味しくなんてならないというわけ。だって、自分の人生の味の調整なんて誰も手伝ってくれません。もし、誰かの手に委ねたとしたら、それは別の人の人生になってしまうのですから。そうならないためにも、自分の味には責任を持つ。隠し味を持っていれば、ぜんざいに加える塩や、カレーに加えるチョコレートのように、あなたの魅力を引き立ててくれるかもしれません。そして、まずは人に気に入ってもらうより、自分自身が気に入ることのできるオリジナルの味を目指すこと。自分だけの“幸せのレシピ”を見つけられれば、人に流されることもなく生きていける。そんな気がしませんか?