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「誠実に真っ直ぐ作った」坂部監督『奈良美智との旅の記録』のもうひとつの旅の記録

3か月で8万人を動員した展覧会「A to Z」。それまでずっと一人で作り続けてきたアーティスト・奈良美智が初めて“ほかの誰か”と作り上げた手作りの展覧会だ。奈良さんの相棒となったのは大阪のクリエイティブ・ユニット、grafの豊嶋秀樹。奈良さんの故郷である青森県弘前市にあるレンガ倉庫で開催された「A to Z」に至るまでの道のり、そして滅多にメディアに出てこない奈良さんの素顔を白日の下にさらしたドキュメンタリー『NARA:奈良美智との旅の記録』のDVDが発売された。500日という長い月日を奈良さんと過ごした本作の監督、坂部康二に話を聞いた。

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『NARA:奈良美智との旅の記録』坂部康二監督
『NARA:奈良美智との旅の記録』坂部康二監督
  • 『NARA:奈良美智との旅の記録』坂部康二監督
  • 『NARA:奈良美智との旅の記録』 -(C) Hako Hosokawa
  • 『NARA:奈良美智との旅の記録』
3か月で8万人を動員した展覧会「A to Z」。それまでずっと一人で作り続けてきたアーティスト・奈良美智が初めて“ほかの誰か”と作り上げた手作りの展覧会だ。奈良さんの相棒となったのは大阪のクリエイティブ・ユニット、grafの豊嶋秀樹。奈良さんの故郷である青森県弘前市にあるレンガ倉庫で開催された「A to Z」に至るまでの道のり、そして滅多にメディアに出てこない奈良さんの素顔を白日の下にさらしたドキュメンタリー『NARA:奈良美智との旅の記録』のDVDが発売された。500日という長い月日を奈良さんと過ごした本作の監督、坂部康二に話を聞いた。

「奈良さんの作品を見て心に残るな」と思っていたという坂部監督。本作を作るきっかけはTVのドキュメンタリー番組だった。
「そこで奈良さんの絵を扱っているギャラリストの番組を作ったんです。そのときに奈良さんにもコメントをいただいたりしていて。そこで奈良さんの作品を生で見たり、別の展覧会に行ったりしている間に『何か出来たらいいな』と漠然と思っていたところに、そのギャラリストの方から、『“A to Z”という展覧会をやるけど、普段はTVとかに出ない奈良さんが今回に限っては出ても良いと言っている』と連絡をいただいて始まった企画なんです。TVはTVで面白いと思っていたんですが、どうせなら映画にしたいと思って」。

元々「情熱大陸」というドキュメンタリー番組を制作している坂部監督。しかし、奈良さんのドキュメンタリーはTVだけではなく、映画としても作りたかった。
「TVも良いんですけど、映画というメディアでドキュメンタリーを作りたいなと、漠然と考えていたんです。僕は題材として人を追うことが多いんですが、『じゃあ誰だったら映画として成立するんだろう?』と考えたとき、奈良さんって僕の中で、リストの一番上にあったんですよね。もう願ってもないという感じでスルスルっと話が進みました。『情熱大陸』って何となく“情熱大陸のフォーマット”みたいなものがありますが、そうじゃない白紙の、監督としての僕なり、製作チームなり、スタッフなり、そして奈良さん本人なりにある程度委ねられた状態で、どうやって作ろうか悩みました」。

500日間という長い日々を奈良さんと過ごした坂部監督。今回のDVD発売に際して、“もうひとつの旅の記録”と題して、77分のドキュメンタリーを収録した。
「本編を作って、そこで燃え尽きた感はなかったんです。かといって、モヤモヤしていたというわけでもないんですが、『これで気持ちよくさようなら』っていう感じではなくて、また別なカタチで何かやりたいと、割と早い時期から思っていたのかもしれません」。

もちろん本編に不満があるわけではないのだ。
「1人反省会とかよくやるんですけど(笑)、取材自体が100点満点だったかというと、そうじゃないと思うんです。ただ、やっぱり、あの時点で、あの時期の自分には、ああいう形の取材しか出来なかったんです。いまの自分が撮っていたら、別の撮り方が出来るかもしれない。でもそれが、出来として良いものになるか悪いものになるかはちょっと分からないですけどね。逆に言うと、あのときの自分だったから、ああいうことが撮れた。もっとテクニックがある人が撮ったら、もっと良いものになってたかもしれないと思うんです。でもあのときの自分には納得しています。『こうすれば良かった』とか『こう質問すれば良かった』とかというのは結果論であって、その時点でその人と対面したときに、そうは撮れなかったんですよ。撮影時の坂部監督には。なので、あんまり後悔とかはないかな…。反省はするけど(笑)」。

DVDを購入した人に向けて制作した“もうひとつの旅の記録”。本編とは違うテーマがそこにある。
「DVDを買う人って、映画館に足を運ぶ以上に奈良さんへの関心や想いが強い方たちだと思うんです。そういうみなさんに対する姿勢として、包み隠さず、誠実に、真っ直ぐに、きちんとしたカタチで(DVDを)出したいと思ったんです。本編の反省としてキレイにまとめすぎたんじゃないかという気がしているんです。そうじゃない部分も意識的に入れたかもしれません」。

確かに、本編も“もうひとつの旅の記録”もアーティスト・奈良美智の断片でしかないかもしれない。しかし、そこで見せる奈良さんの笑顔や仲間との触れあい、そして情熱は本物だ。

『NARA:奈良美智との旅の記録』のもう一つの記録
http://www.cinemacafe.net/100dvd/tfc/080321/

『NARA:奈良美智との旅の記録』
発売中
発売・販売:東北新社
価格:6,090円(税込)

© 2006 Hako Hosokawa
《シネマカフェ編集部》

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