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世界の映画館vol.11 デリー「インド映画だけど誰も踊らず、誰も唄わない」

初めてインド映画を観たのは1999年の初夏だったと思う。『ムトゥ踊るマハラジャ』という日本でもヒットしたインド映画である。当時、僕は女性ファッション誌の編集長をしていた。生きることの意味だとか、踊ることの意味だとか唄うことの意味だとか考えるのではなく、ただ単に唄って踊りまくるインド映画の楽しさに完全にやられ、映画担当の編集者が持ってきたアート系の映画を押しのけて、映画ページの第一特集にしてしまった。映画はアートじゃなくて、娯楽なんだと改めて教えてもらった映画だった。その雑誌は全く売れず、営業サイドから、内容に問題があると、いろいろダメ出しをくらった。インド映画を特集に持ってきたことにも話題が飛んだ。

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デリーの中心地にある映画館。シネコンじゃないのが良い! photo:ishiko
デリーの中心地にある映画館。シネコンじゃないのが良い! photo:ishiko
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初めてインド映画を観たのは1999年の初夏だったと思う。『ムトゥ踊るマハラジャ』という日本でもヒットしたインド映画である。当時、僕は女性ファッション誌の編集長をしていた。生きることの意味だとか、踊ることの意味だとか唄うことの意味だとか考えるのではなく、ただ単に唄って踊りまくるインド映画の楽しさに完全にやられ、映画担当の編集者が持ってきたアート系の映画を押しのけて、映画ページの第一特集にしてしまった。映画はアートじゃなくて、娯楽なんだと改めて教えてもらった映画だった。その雑誌は全く売れず、営業サイドから、内容に問題があると、いろいろダメ出しをくらった。インド映画を特集に持ってきたことにも話題が飛んだ。

「イシコさんはサブカル雑誌でも創るつもりですか?」

と責められた。責められている間も、きっとインドでは、映画館で観客も踊りまくり、唄いまくりながら楽しく映画を観ているんだろうなあ。楽しいだろうなあ。インドでインド映画を観たいなあと、営業の罵詈雑言を右耳から左耳に流しながら、聞いていた。

あれから10年が経ったんだなあ。100ルピー(約300円)の一番高いバルコニー席(2階の中央席)に座りながら、当時のことを思い出していた。デリーというインドでも保守的な街だからなのか、それともただ単に選んだ映画が悪かった(歴史大作のようで決して楽しい作品ではなかった)のかは分からない、僕が想像していたインドの映画館とは明らかに違っていた。誰も踊らず、誰も唄わない。違わないのは、インド映画は3時間以上あって相変わらず長いということだけである。でも、さっき休憩の間に食べた売店の揚げたてのベジバーガー(ベジタリアン用のハンバーガー)が、美味しかったなあ。あれが20ルピー(約60円)で食べられるのは庶民の味方だなあ…と雑誌のときに、怒られたときと同じように、映画の音声は右耳から左耳へと流していた。それでも、シネコンにならず、こういった映画館がど〜んと街の中心にあるデリーという街は大好きである。

(text/photo:ishiko
《シネマカフェ編集部》
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