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ファッション小噺vol.77 煌びやかなお召し物の下にあるものは? 『恋の罠』

最近、一時のような勢いのない韓国映画。あの頃の騒ぎが異常だったことは、誰もが認めるところでしょう。やっと落ち着いてきたというところでしょうか。そんな折に、韓国映画界が日本で人気を得るきっかけとなった人ともいうべき俳優が戻ってきてくれました。ハン・ソッキュ様…。戻ってきたといっても、別にどこかへ行っていたわけでもなく、単に日本では公開作があまり目立たなかっただけですが。

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『恋の罠』 -(C) 2006 IM Pictures Corp. All Rights Reserved.
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  • 『恋の罠』 -(C) 2006 IM Pictures Corp. All Rights Reserved.
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最近、一時のような勢いのない韓国映画。あの頃の騒ぎが異常だったことは、誰もが認めるところでしょう。やっと落ち着いてきたというところでしょうか。そんな折に、韓国映画界が日本で人気を得るきっかけとなった人ともいうべき俳優が戻ってきてくれました。ハン・ソッキュ様…。戻ってきたといっても、別にどこかへ行っていたわけでもなく、単に日本では公開作があまり目立たなかっただけですが。

彼の新作は、『恋の罠』。李朝後期の絢爛たる宮廷を舞台に展開する、貴族作家・ユンソと、王の寵愛を受ける王妃との秘められた恋の物語、といえばあまり珍しい気もしませんが、これがなかなか珍味な作品。面白いことを見聞きすると書かずにはいられない、そんな作家の性が災いして、ユンソが自らの情事を官能小説として執筆、売り出したことから、ことは大スキャンダルに発展。当時、禁止されていたにも関わらず春画入り官能小説は瞬く間に人気となり、やがて王妃の耳に入ってしまったからさあ大変…というわけなのです。

ややコミカルな文体で筆をすすめているのは、この作品が持つ滑稽な人間描写と軽妙感に敬意を表してのこと。どんなに取り繕った世界に生きていても、どんなに高尚に見えていても、人間は“性”や“快楽”からは切り離せない。その辺りをドスンと突いているのが豪快でいいのです。性にまつわるエピソードのドタバタ劇もくすくす笑いを誘ってくれて楽しい限り。でも、恋にまつわるエピソードはシリアスで切ない。ある意味、韓流的なので、その辺りを期待している方にもお楽しみいただけるかと。

さて、本作はファッションという視点に立った場合も、なかなか面白いものが見られます。ここでは、高貴な方々のお召し物の下の話が登場するので、煌びやかな召し物の下に、彼らはどんな下着をつけていたのかとか、冠(被りもの)の下はどうなっていて、寝るときはどうしていたのかなど、観ているうちに自然といろいろな興味も増してきますが、脱ぐ、着る、寝るという行為を伴う場面が多いだけに、そういった興味にもしっかり応えてくれているのが嬉しいのです。

私が言う「嬉しい」にどんな含みがあるかはさて置いて、服飾関係者にとってもこういった映像は、ひとつの資料、参考として嬉しい存在なのではないかと思うのです。韓国の服飾について謎が多いのかどうかは知りませんが、欧米の中でも伝統的な衣服というのが廃れてしまっている国々では、服の下がどうなっていたのか未だに解明されていない部分もあるのだそう。特に高貴な女性の場合は、下着や靴下などについて資料としての記述があまり残されていないので、専門家にすらわからないこともあるとのこと。そんなとき、歴史の解明に役立つのが春画とか。ある服飾関係の専門家に話を伺ったところ、春画には、男女の絵の側に必ずと言ってよいほど脱いだ衣服が描かれているのだとか。そこに何が脱ぎ捨てられているか解明することで、分かってくることもあるらしいですよ。単に昔のわいせつ画と春画をバカにするなかれ。いまでは昔の風俗、習慣を知る貴重な歴史資料です。エロス万歳、ですね。あれ? なんだかテーマから外れてしまったような…。まあ、いいか。

《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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