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パンク精神を貫く鬼才コックスが語る“復讐” 「映画でまじめに語っても伝わらない」

『レポマン』('84)、『シド・アンド・ナンシー』('86)とパンキッシュな世界観で多くの人々を魅了し、そのキャリアのスタートからハリウッドで輝かしい成功を収めたイギリス出身の鬼才、アレックス・コックス。それから20余年、ハリウッドの流れと逆行するがごとく、独自のスタイルでインディペンデント映画の道をひた走ってきた彼が、6年の沈黙を破り完成させたのは、アメリカ荒野を舞台にした中年男2人の“復讐”ロード・コメディ。『サーチャーズ2.0』を引っさげ来日した監督に話を聞いた。

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『サーチャーズ2.0』 アレックス・コックス監督
『サーチャーズ2.0』 アレックス・コックス監督
  • 『サーチャーズ2.0』 アレックス・コックス監督
  • 『サーチャーズ2.0』 -(C) 2007 COWBOY OUTFIT, LLC PRODUCTION
  • 『サーチャーズ2.0』 アレックス・コックス監督
『レポマン』('84)、『シド・アンド・ナンシー』('86)とパンキッシュな世界観で多くの人々を魅了し、そのキャリアのスタートからハリウッドで輝かしい成功を収めたイギリス出身の鬼才、アレックス・コックス。それから20余年、ハリウッドの流れと逆行するがごとく、独自のスタイルでインディペンデント映画の道をひた走ってきた彼が、6年の沈黙を破り完成させたのは、アメリカ荒野を舞台にした中年男2人の“復讐”ロード・コメディ。『サーチャーズ2.0』を引っさげ来日した監督に話を聞いた。

「インディペンデントはお金は少ないけど自由が利くし、監督として刺激をもらえる」と話す監督。本作のタイトルにある“search(捜索)”には、主人公が復讐すべき人物を捜すことと同時に、実は“予算を探す”という意味も含まれている。
『ラスベガスをやっつけろ』('98)で脚本を担当したときに、俳優に支払うギャラが10倍になったせいで、製作会社も変わり、いつの間にか僕のクビが切られていたんです(笑)。このとき、僕が学んだのは、“企画にお金が多く集まると作品のクオリティが下がる”ということ。だから“金がなければクオリティが上がるだろう”という逆の実験をしてみたんです。今回もキャストとクルーは全員同じ、一日100ドルの日給で予算を平等に分け合って作りました」。

ここで述べられた映画と予算という切っても切れない関係も含め、主人公のメルとフレッドの会話の端々には、監督のハリウッド映画界に対する鋭い批判がふんだんに盛り込まれている。それは映画を心から愛するからこその批判精神と言える。そうは言っても、やはり映画業界での本作の反応が気になるが…?
「業界人の反応は聞いてないからよく知らないけど、(B級映画の帝王と呼ばれる)プロデューサーのロジャー・コーマンは爆笑してくれたそうですよ。彼のオフィスの人からは『あんなに爆笑したのは何年ぶりか。いつもはボスにビビッてるからよかった』と聞けて嬉しかったですね(笑)」。業界の力関係が垣間見えるようだが、では男2人の復讐の的、残虐すぎる脚本家・フロビシャーに関しては誰かモデルがいたのかと尋ねれば、「全くモデルになった人はいません。フロビシャーは膨大な権力を暴虐にふるうけど、そんな脚本家はどこにもいません。脚本家がそんなパワーをふるうなんて全くの冗談ですよ」と一笑する。

“復讐”の旅を通して、それが正当化される矛盾と怖ろしさをストレートな言葉で表現しながらも、コメディという方法で伝える。「まじめに映画で語っても通じないからね」と監督は言う。
「シェイクスピアが描いたクラシックな復讐劇は、“復讐は割に合わないし、モラルに合わないからしてはいけない”ということの教訓的なものだったはずが、近年のアメリカ映画ではそのモラルが忘れられて、“復讐をすればハッピーエンド、復讐が良いもの”とされてきている。すごく危ないことだと思いますね。でもアメリカに住むようになって、政府とその国で暮らす人々が違うということは、はっきりとわかってきました。世界最強のリーダーを任じていても、健康保険に入るお金も仕事もない人々が大勢いる。アメリカに対するイメージと国民は全く一致しないということが分かりました」。

次回作は『レポマン』の女性版『REPO CHICK』。かつてカーローンで借金地獄に陥った人々が続出する時代に出現した車泥棒が、今度は奇しくも同じ、いやあの頃を超える大不況という時代を背景にして、女性となって戻ってくる。
「元々の『レポマン』の主人公はとても受け身な人格で、金もなければやる気もないというような男でしたが、今回は女性に変えただけではなく、ものすごく積極的な性格の人物にしたいと思っています。積極的で野心的、いい意味でモンスターのような激しい女性像なので、前作よりはるかにアクティブになるはずです。暗に不況をテーマにしている点を除けば、全然違う映画になると思いますよ」。

彼女がいかにして不況に立ち向かうのか、気になるところだが、ぜひ日本でも映画を作ってもらいたいというのが、日本のファンにとってのさらなる願望である。
「日本の俳優もスタッフもとても優秀だというのは分かっているのでぜひ作りたいです。特に『プロジェクトX』(NHK)の田口トモロヲ(ナレーションを担当)が大好きなので、彼がやりたいものはどんな作品でもやりたいです」。

作品から伝わる痛烈な毒素からは想像できない、とても穏やかな目で語ってくれた。
《シネマカフェ編集部》

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