【どちらを観る?】フランスのいまを映す傑作2選『ベルサイユの子』&『夏時間の庭』

母親に捨てられた幼い少年と彼の面倒を見ることになったホームレス男性の交流を描く『ベルサイユの子』と、亡き大叔父の美術品コレクションを遺された三兄妹の葛藤と思慕を描く『夏時間の庭』。現代社会の事情を反映させながら、いまを生きる人々を見つめた2作で、フランス映画界の人気俳優たちが印象深い演技を見せている。

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『ベルサイユの子』 -(C) Les Films Pelleas 2008
  • 『ベルサイユの子』 -(C) Les Films Pelleas 2008
  • 『ベルサイユの子』 -(C) Les Films Pelleas 2008
  • 『夏時間の庭』
母親に捨てられた幼い少年と彼の面倒を見ることになったホームレス男性の交流を描く『ベルサイユの子』と、亡き大叔父の美術品コレクションを遺された三兄妹の葛藤と思慕を描く『夏時間の庭』。現代社会の事情を反映させながら、いまを生きる人々を見つめた2作で、フランス映画界の人気俳優たちが印象深い演技を見せている。

『ベルサイユの子』では、昨年10月に37歳の若さで急逝したギョーム・ドパルデューが、主人公のホームレス男性・ダミアンを熱演。ダミアンは社会に背を向けながら孤高の人生を歩む男という、ギョーム自身の生きざまを彷彿とさせるキャラクターだ。というのも、名優ジェラール・ドパルデューを父に持つギョームは、父との複雑な親子関係からか、しばしば問題児と見なされることもあったアウトロー。実力派の美形俳優として多くに愛される一方、ドラッグに明け暮れた過去を持ち、バイク事故後の感染症が原因で片脚を切断するという壮絶な人生を送ってきた彼が、複雑なダミアンの内面を繊細な魅力と共に演じ上げている。そんな彼が母親に見放された5歳の少年と出会い、不器用ながらも即席家族と化していく展開が見どころ。実生活では一児の父親でもあったギョームがダミアン役を通して、幼な過ぎて自分が置かれた悲劇的状況さえも理解できない子供の無邪気をたどたどしく見つめながら、失業やホームレスの問題を抱えるフランスのいまを浮き彫りにしてみせる。

一方、『夏時間の庭』には、『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー賞に輝いたこともある国際派女優ジュリエット・ビノシュが出演。自分たちに遺された亡き大叔父の美術品コレクションを前に、現実的な解決を見出そうとする三兄妹の長女・アドリエンヌを演じている。遺された高価な美術品の数々はいずれも家族の大切な思い出が詰まったものだが、いまや故郷のフランスにいる時間は少なく、ニューヨークを拠点に工芸デザイナーとして世界中を飛び回るアドリエンヌは、美術品をオルセー美術館に寄贈することを希望。近年は母性を感じさせる役柄が印象深いビノシュがブロンドのストレートヘアに真っ赤な口紅という外見作りと共に、現代人のドライな感覚と、表面的には崩壊ともとれる現代家族の姿を器用に示している。

自己投影とも言える役柄を演じたギョーム・ドパルデューと、外見に変化を加えたことから、自身とは離れた役だと推測できる女性を演じたジュリエット・ビノシュ。状況は違えど、役を通してテーマを物語るパワーは共通している。

《text:Hikaru Watanabe》

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