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『ジーン・ワルツ』海堂尊インタビュー 納得の出来に原作者も「危険な映画(笑)」

『チーム・バチスタの栄光』、『ジェネラル・ルージュの凱旋』といった医療ミステリー映画の原作者であり、作家デビューわずか5年たらずでスター作家の地位を確立した海堂尊。彼の小説の面白さは、なんと言っても外科医を経て現在は病理医という“現役の医師”であるからこその豊富な医学知識と医療行政への鋭い指摘にあり、新作が発表されるたびに注目を浴びている。そして、海堂氏にとって9作目となる「ジーン・ワルツ」は菅野美穂の主演で3作目の映画化となった。産婦人科医療を舞台にしたドラマティックな物語がスクリーンに登場する。

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『ジーン・ワルツ』原作者・海堂尊インタビュー
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  • 『ジーン・ワルツ』 -(C) 2011「ジーン・ワルツ」製作委員会
『チーム・バチスタの栄光』、『ジェネラル・ルージュの凱旋』といった医療ミステリー映画の原作者であり、作家デビューわずか5年たらずでスター作家の地位を確立した海堂尊。彼の小説の面白さは、なんと言っても外科医を経て現在は病理医という“現役の医師”であるからこその豊富な医学知識と医療行政への鋭い指摘にあり、新作が発表されるたびに注目を浴びている。そして、海堂氏にとって9作目となる「ジーン・ワルツ」は菅野美穂の主演で3作目の映画化となった。産婦人科医療を舞台にしたドラマティックな物語がスクリーンに登場する。

分からないからこそ描ける女性の心理

『ジーン・ワルツ』で書きたかったのは、いまの産婦人科医療や妊娠に関する問題点。それらを1冊の本にしてみたかったんです。(自分自身が医師なので)本物の素材(医療)を使ってはいますが、あくまでも小説の肝はエンターテイメントだと思っていて。いつもエンターテイメント性100%の小説を書いているつもりです。社会的に訴えたいテーマがあるわけではないんですよ。だから僕の小説にはこうすべきだという結論はないんですよね…」と語るように、映画『ジーン・ワルツ』にも明確な答えは用意されていない。あえて答えを用意しないことで生まれる余韻——それが海堂作品の面白さのひとつと言える。しかしながら、不妊治療を軸としたこの物語には、刑事告発された産婦人科医や代理出産など様々な問題が提示され、特に女性は「もしも自分だったらどうするのか?」と深く考えることだろう。

不定愁訴外来の田口と厚生労働省の白鳥コンビが医療現場の事件を解き明かしていく「チーム・バチスタの栄光」から連なるシリーズとは異なり、本作の主人公は顕微授精のスペシャリスト曾根崎理恵。彼女と彼女がサポートする4人の妊婦たちの出産までの十月十日の物語が綴られる。女性の様々な心情が丁寧にかつミステリアスに描かれるのだが、それを男性が書いているのは興味深い。なぜ、あそこまでリアルに女性の心理を描けるのか?
「分からないから、なんじゃないですかね。妊娠が女性にどういう感情をもたらしているのかは、(僕の)想像でしかなくて、それがあたっているかどうかも分からないけれど、バイスタンダー(傍観者)として女性の妊娠を見ていると、心情の起伏とか疾風怒濤とか、普通ではないんだなという認識はあります。女性を分かっていたらもっとモテていると思うし(笑)」。

女性のことはよく分からないと照れくさそうに笑いながら、キャラクターを生み出す瞬間の話題へ。
「実は、小説を書く際に詳しい人物設定をしないんです。最初に決めるのは、性別と年齢と少しの要望——ハンサムか美女かというくらいで、あとは物語を転がしていくうちにキャラクターの属性が出てくる。僕自身が書いてはいるんですが、言うことを聞かない連中(キャラクター)ばかりなので。特に“バチスタ”シリーズの白鳥はね(苦笑)。でも、キャラクターが自然に流れていくのが一番いいんですよ」。

“菅野版”曾根崎理恵に絶賛

映像化にあたっては一切口を出さないという海堂さんだが、撮影現場を見ることは「大好き!」だと声を弾ませる。「映画の現場では当たり前のことであっても、素人から見ると好奇心を持つことが多いですからね。特に今回は美人な女優さんが多くて!」とテンションが上がり、曾根崎を演じる菅野さんについては「しっかりと(映画としての)人物像が確立されていた」と絶賛。完成した映画については「ありきたりですが、感動しました…」と語り出す。
「自分が書いた作品であるのに、自分が作ったものが基になっているというのが信じられないという感じでしたね。僕は小説を書くときも映画を観るときも解析はしないんです。ただ自分の価値判断の基準としては、観ているときに作品に集中できて気持ちが動くこと、終わった後に明るい気持ちになれること。その2つを基準にしている。そういう意味ではものすごくいい映画だなと。あと、男は映画を見て泣いちゃいけないって決めているんですが、この映画はかなり危険な映画ですね(笑)」。その言葉からは、原作者の涙腺がゆるむほどの出来、納得の映画化であったことが伝わってくる。

自分が書いた小説を1冊でいいから出したい、本屋の片隅に自分の書いた本が1冊並んだら嬉しい——そんな幼い頃からの夢を実現させ、いまやベストセラー作家の仲間入りを果たしている海堂さんに、生命誕生を描いている『ジーン・ワルツ』にちなんで、最後にこんな質問を投げかけてみた。もしも生まれ変わるとしたら? その答えは?
「ずるい答えかもしれないけれど、生まれ変わりたいとは思わないですね。いまこうして生きていることが奇跡で、思うようにいかないことも多々あるけれど、こういう生き方(いまのような生き方)をするしかないと思う。だから“もしも”という設定の小説は、僕は書かないだろうし…」。

何とも海堂さんらしい答えだ。ちなみに、彼の「生きていることが奇跡」という“奇跡”という言葉は、曾根崎が原作でも映画でも発している言葉でもある。自分の小説に結論はないと前置きした海堂さんだが、もしかすると“奇跡”を知ること=いまを生きることを伝えたかったのかもしれない。



特集「『ジーン・ワルツ』 現場が伝える女性の『生き方』&『働き方』」
http://www.cinemacafe.net/ad/gene/
《photo / text:Rie Shintani》

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