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柳楽優弥インタビュー 「実力なんてない…」ともがいた時間/『許されざる者』

「撮影前は、煮詰まりすぎるほど悩んでいました…」。

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柳楽優弥『許されざる者』/Photo:Mana Kikuta
柳楽優弥『許されざる者』/Photo:Mana Kikuta
  • 柳楽優弥『許されざる者』/Photo:Mana Kikuta
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  • 渡辺謙&佐藤浩市/『許されざる者』 -(C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.
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  • 『許されざる者』 -(C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.
  • 渡辺謙&柄本明&柳楽優弥/『許されざる者』 -(C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.
  • 柳楽優弥『許されざる者』/Photo:Mana Kikuta
「撮影前は、煮詰まりすぎるほど悩んでいました…」。

これは、約1年前の柳楽優弥さんの発言。彼を悩ませていた映画とは、ハリウッドの重鎮クリント・イーストウッドが監督・主演した伝説的名作『許されざる者』の日本版リメイク作品。人斬り十兵衛と恐れられつつも、ある出来事を機に、平穏な暮らしを送っていた男が生きるため、生活のために再び刀を抜く──北海道を舞台に誰のために生きるのか、生きるということとは何なのかを描いた深い人間ドラマだ。

主演は渡辺謙、共演は柄本明、佐藤浩市、監督は李相日という日本を代表する映画人が揃う大作。この映画で柳楽さんは、渡辺さんの演じる十兵衛と柄本さんの演じる金吾と共に賞金稼ぎの旅に出るアイヌ出身の若者・五郎を演じている。現在23歳の彼が、凄すぎる競演者から受けた刺激とはいったいどんなものだったのか。

柳楽さんと言えば、主演デビュー作『誰も知らない』(是枝裕和監督)でカンヌ国際映画祭の「最優秀男優賞」を史上最年少、日本人初で受賞した子役として記憶に刻まれている人だ。

その後も『星になった少年 Shining Boy & Little Randy』『シュガー&スパイス 風味絶佳』『包帯クラブ』などコンスタントに映画に主演してきたが、そこには当然、期待されるがゆえのプレッシャーもあったはず。そんなふうに、若くして世界から注目を浴びた柳楽さんにとって、この映画は「前に進むことができた」と、大きな意味のある作品としてフィルモグラフィーに刻まれたそう。前進できた理由は、想像以上の“厳しさ”を経験したことにある。

「李監督の演出は、厳しかったですね。『五郎ってもっとバカなんじゃないの?』『そんな五郎じゃ面白くない』とか、胸に突き刺さる言葉はたくさんありました。でも、そうやって厳しくしてもらえる現場にいられることは、幸せだと強く思ったんですよね。北海道での撮影が終わって、東京で監督と飲んだときに『もっとひょうきんな役ができる俳優も、もっと芝居の上手い俳優もいるのに、なんで僕を選んだんですか?』って聞いたんです。そうしたら、『芝居の上手い人だけを求めていたならほかの人を選んでいたよ』と返ってきて…」。芝居の上手い下手ではなく、五郎に近い“何か”を感じ、自分を選んでくれたことが「嬉しかった」と語る。

こうも言う。「ずっと不安はあったけれど、李監督がOKを出してくれたことを信じて、監督の言うことだけを聞いて演じていました」。李監督にすべてを委ね、そして「謙さんや柄本さん、浩市さんからいろいろアドバイスをもらいましたが、最終的に演じるのは自分自身なんだなって、当たり前のことを気づかされた現場でした」と、少し前の自分自身と対峙する。これを成長と言うのだろう。そうやって出来上がったのは、憎めなくて、馬鹿っぽくて、愛嬌のある五郎というキャラクター。彼以外にこの役は演じられなかったと思わせる演技力と存在感は、これまで見たことのない俳優・柳楽優弥をスクリーンに映し出している。けれど、彼はそれを実力だとは決して言わない。

「運も実力のうちと言うけれど、今回の僕は運しかなかったと思うんです。実力なんてない…。この映画に参加させてもらったこと、李監督の演出を受けられたこと、それが僕の運。でも、セリフだけは(しっかり頭に入れて)間違えなかったんですよ」。この、ふとしたときに見せるチャーミングさが魅力でもあり、だからこそ李監督を始め、先輩俳優たちは彼に厳しい言葉を浴びせながらも成長させたいと願うのかもしれない。

そして、「一番嬉しかったことは?」という問いに柳楽さんが選んだのは、やはり李監督との思い出だった。「クランクアップの日に花束と一緒に『頑張ったね』って李監督に言ってもらえたのが嬉しくて、嬉しくて。それから撮影後に会ったときに、ラストシーンの十兵衛とのシーンで『あっけねえ、あっけねえ』って言うシーン、『あれは、よかったよ』と言ってくれたんです。普段まったく褒めてくれない監督が『よかった』って言ってくれた。できれば、もう一回ぐらい聞きたかったですね(笑)」。

厳しさの先にある愛情を知ったことで、柳楽さんは「間違いなく、この作品をきっかけに前に進むことができていると感じています」と力強い言葉を口にし、決意ともとれる一言を残す。

『許されざる者』でどれだけ学べたのかは、今後の作品に出てくると思うんです。李監督とまた一緒に仕事はしたいけれど、ちゃんと前に進んでいる状態で再会したい。これじゃあ『許されざる者』のときの柳楽と一緒じゃないか、と言われたらおしまいなので、前進します。必ず前進します!」。

この映画で一歩前進した柳楽さんが、さらに先を歩く姿を目にする、その日はきっと近い。
《text:Rie Shintani / photo:Mana Kikuta》

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