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【シネマモード】一流職人に見る“仕事の美学”…『世界一美しい本を作る男』

凡人からすればほんのささいなことにも思えることにもこだわりを貫き、超一級の結果を残す。どんな分野にも、そんな一流職人たちがいるものです。その分野が、例え自分にとって…

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『世界一美しい本を作る男-シュタイデルとの旅-』
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凡人からすれば、ほんの些細なことにも思えることにもこだわりを貫き、超一級の結果を残す。どんな分野にも、そんな一流職人たちがいるものです。その分野が、例え自分にとって未知の領域で、これまで興味を持ったことがなかったとしても、彼らが導く魔法のような(でも現実である)結果を観ていると、心を奪われてしまうもの。『世界一美しい本を作る男-シュタイデルとの旅-』で垣間見た、ゲルハルト・シュタイデルの仕事も素晴らしく、興味をそそられるものでした。

彼が経営するのは、写真家ロバート・フランクやノーベル文学賞を受賞した作家ギュンター・グラスら多くの天才クリエイターたちがこよなく愛し、信頼を寄せるドイツのシュタイデル社。世界で一番美しい本を作ると言われています。

そこの親分であるゲルハルトの方針は、同社は本の企画から編集、装幀、デザイン、印刷、製本、出版まですべての工程を自社で行うこと。それにより、高い完成度を誇っています。そのために欠かせないのが、世界中に散らばる顧客たちとの打ち合わせのため、各地を飛び回ること。通信手段が発達したこの時代に? そうです。

彼のポリシーと成功の秘訣は、「直接、クライアントと話をするのが一番早い」というもの。「旅は好きじゃないが、会って打合せをするのが一番。2、3か月かかる仕事が4日間で終わる」というのがゲルハルトの持論。

写真家ロバート・アダムスの自宅キッチンで打合せをしたかと思えば、保険総額が78万ドル(約7,680万円)にのぼるヴィンテージプリントを抱えてジェフ・ウォールが待つバンクーバーへ。中東カタールの砂漠の豪華トレーラーで石や土の色を活かした自然な装丁を提案し、ロバート・フランクの自宅を訪ねてカナダのノバスコシアに赴いたかと思えば、その翌日には「シャネル(CHANEL)」のデザイナー、カール・ラガーフェルドと次の印刷物についてパリでショー直前に話し合う。

ゲルハルトは、言葉だけでなく、声のトーン、取り巻く空気、目や手の動きなどから、顧客の希望を逐一読み取っているかのようです。そして、自らの経験と感覚、感性により導き出したベストのスタイルを提案していく。そんな彼に密着した1年がまとめられているのがこのドキュメンタリー。面白くないわけがないのです。

特に興味をそそられるのは、写真家ジョエル・スタンフェルドと作り出す新しい写真集「iDubai」の制作プロセスが紹介されているくだり。一筋縄でいかないクリエイターたちが彼の前では非常に素直な子どものようになってしまうのを見るのは、微笑ましいもの。天才たちがどれだけ彼の判断を頼りにしているかがよく分かるのです。

本作は、シュタイデル社やゲルハルトの魅力だけでなく、仕事とは何であるのか、仕事師として一流になるには何が必要なのかを伝えています。出版業界にいる人や興味がある人、仕事をしている人はもちろん、働くとはどういうことなのかを模索している若い方々にもぜひお勧めしたい1作。

自分の仕事に誇りを持ち、自分らしいスタイルを見つけ、こだわりを貫く。それは私利私欲の満足のためではなく、すべては最高の結果のため。顧客に最高の満足を捧げるためなのです。これこそ、シュタイデル流の美学。それを丁寧に実践してきたことで、彼は天才たちに支持され、世界中にシュタイデル社製の本をコレクションする収集家を誕生させ、“世界一美しい本を作る男”という名誉ある称号を得たわけです。でも、これらはあくまでも結果であることは、本作を観れば分かるはず。世界一の仕事師の美学をとくとご覧あれ!
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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