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【インタビュー】イーサン・ホーク 12年間にわたる“家族”との撮影『6才のボクが、大人になるまで。』

2014年2月、第64回ベルリン国際映画祭で、映画関係者そしてシネフィルたちを驚かせ大絶賛された『6才のボクが、大人になるまで。』。それは、6歳の少年・メイソンとその家族の物語を、12年もの長きにわたり同じ主要キャストで…

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イーサン・ホーク/『6才のボクが、大人になるまで。』
イーサン・ホーク/『6才のボクが、大人になるまで。』
  • イーサン・ホーク/『6才のボクが、大人になるまで。』
  • イーサン・ホーク/『6才のボクが、大人になるまで。』 (c)2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved.
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2014年2月、第64回ベルリン国際映画祭で、映画関係者そしてシネフィルたちを驚かせ大絶賛された『6才のボクが、大人になるまで。』。それは、6歳の少年・メイソンとその家族の物語を、12年もの長きにわたり同じ主要キャストで紡ぎ続けるという画期的な作品でした。この映画を完成させたのは、『ビフォア』シリーズほか革新的な映画作りで知られるリチャード・リンクレイタ―監督。彼の盟友でもあり、メイソンの父親を演じた俳優イーサン・ホークを直撃し、“奇跡”の秘密に迫りました。

12年に渡る映画製作という驚くべきアイディアが、大きな魅力となっている『6才のボクが、大人になるまで。』。制作前、この企画について聞いた多くの人が、そんなことができるのか? と思ったに違いありません。この作品についてオファーされたとき、イーサンはどう感じたのでしょう。途中で本作が完成するかどうか、不安になることはなかったのでしょうか。

「素晴らしいアイディアだと思った。それに、すでにリチャード(リンクレイター監督)とは3本作品を撮っていたから全く躊躇はなかったよ。時間について描くというのはとても魅力的なものだと感じたしね」。

長い製作期間中、自分自身も共演者の変化や成長を、ひしひしと感じる場面に出くわしたとも話します。

「ものすごい変化があったよ。撮影が始まった頃、主人公のエラー・コルトレーンはチャイルドシートに座っていたけど、最後には自分で運転をするようになった。一緒に時間を過ごすことで僕に慣れ親しんでくれて、リラックスした様子を見せるようにもなったんだ。僕が若かった頃、多くの人達に優しくしてもらったけど、今は逆の立場だ。若い人達に恩返しするような気持ちで、優しく指導してあげたいと思っているよ」。

長い時間を共に過ごし、スタッフ、俳優の間には密な関係性が生まれたことで、本作には他の作品にはないリアリティが生まれたそう。

「この映画は家族について描いていて、キャラクターの個性がとてもユニークに表現されている作品だ。本作の特別なところは、12年という時間の流れや、突然訪れる出来事、撮影毎に日々変化していく関係性、コミュニティ、政治、その時代の様々なものに影響されているところにある。そういったものすべてが家族や人々の個性を形成していく、という事を伝える役割があったんだと思っているよ」。

では、長きにわたって、自分の生活の一部になっているプロジェクトを離れる気持ちは、どのようなものだったのでしょう。

「もう、圧倒されたよ。麻痺しているような感覚になった。僕の撮影はクランクアップの1か月前に終わったんだ。その後、監督と主人公を演じたエラーはメイソンが大学に行くシーンや、ラストシーンを撮ったんだ。終わった時には監督とエラーは抱き合って、達成感を感じていたようだった。僕も後からそれを見て、胸が張り裂けるくらいの喜びを感じたんだ。僕には16才の娘がいるんだけど、彼女は僕がこの作品に関わっていない時代を知らない。彼女が物心ついた時から、僕はこのプロジェクトに参加していたからね。そういった個人的な理由もあって、僕にとってものすごく重要な作品なんだ」。

リンクレイター監督の作品についてはこう話します。

「最近の文学や映画は皮肉に溢れたものが多いよね。美しいものをあえて斜にかまえて描写してみたり、人の弱さを強調したりする傾向がある。でもリチャードは、美しいものは美しいままに、素直に描き出す。例えば、女性にメイクをして、強いライトを当てるより、ありのままの姿を撮る方が好きなんだ。それは女性に限らずね。ある意味で彼の作品はトルストイの作品に似ていると思う。非常にはっきりとした明確なものを描くんだけど、それは周囲との共同作業によって生み出されているんだよ」

リンクレイター監督と幾度も組んで個性的な作品を作り出してきたイーサン。俳優イーサン・ホークにとって、監督はどんな存在なのでしょう?

「僕とリチャードは親友なんだけれど、その事を口にするとなんだかそれが陳腐なものになってしまうような気がして…説明しづらいんだ。僕は恵まれた星のもとに生まれてきたんだと思う。まわりには、僕を導いてくれる守護神のような人達がたくさんいるけれど、その中でも最も感謝すべきは、僕をリチャードに紹介してくれた人だ。大体の監督はエゴが強くて、自分こそがフレームを支配する人間だと思っているし、自分だけのビジョンを強く持ってる。それが普通の監督なんだ。でも、リチャードは唯一、自分の意志も明確に持ちながら、“一緒にビジョンを作り上げてくれ”と言い、僕たちの考えも喜んで受け入れてくれる。だから、リチャードは“My Vision”という言葉を決して使わない。必ず“Our Vision”と言うんだ。リチャードの作品には知性があるけど、それは彼が色んな人のアイディアを素直に受け入れるからだと思うし、チームのリーダーでありながら、人の話を本当によく聞いて、そして心から興味を持ってくれる。彼は本当に人が好きなんだと思うよ」

良き理解者として、共に新しいことに挑戦し続け、刺激し合いながら、映画界での成功を手にしてきたリチャード・リンクレイタ―監督と俳優イーサン・ホーク。 “奇跡的な名作”に欠かせないのは、素晴らしき仲間の存在なのだと感じさせてくれるインタビューでした。百戦錬磨のベテラン俳優、イーサンすら興奮させる未知の世界。ぜひご自身の目で確かめてみてください。
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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