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【インタビュー】<前編>北野武×藤竜也 笑いの天才の覚悟 vs 非コメディ俳優の矜持

「お笑いはおれにとっては本職だから、一番神経使うところだね。『つまんない』ってなったら“コメディアン”、“芸人”としてのキャリアが全部否定されちゃう可能性だってあるんだから」。

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北野武、藤竜也『龍三と七人の子分たち』/photo:Naoki Kurozu
北野武、藤竜也『龍三と七人の子分たち』/photo:Naoki Kurozu
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  • 藤竜也『龍三と七人の子分たち』/photo:Naoki Kurozu
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  • 北野武『龍三と七人の子分たち』/photo:Naoki Kurozu
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「お笑いはおれにとっては本職だから、一番神経使うところだね。『つまんない』ってなったら“コメディアン”、“芸人”としてのキャリアが全部否定されちゃう可能性だってあるんだから」。

自虐と毒舌を交えた、この男なりの照れ隠しの口調の中にふと一瞬、本音とこの新作に対する強い覚悟、そして自信が顔をのぞかせた。

北野武監督の監督作17作目となる『龍三と七人の子分たち』はぞろぞろと(元)ヤクザたちが登場するが、決してヤクザ映画ではない。大人…いや、ジジイたちが大暴れする娯楽映画である。そんな、北野作品としては稀なる「笑い」を全面に押し出した本作で、主人公の龍三役を演じるのは、コメディのイメージが強いとは言えない藤竜也である。「俺たちに明日なんかいらない!!」は本作のキャッチコピーだが、明日なきジジイたちは、いったい何に向かって銃を撃つのか? 北野監督、藤さんにたっぷりと話を聞いた。

極道の道を引退し、息子夫婦の家で隠居生活を送るも、世知辛い世の中に「義理も人情もあったもんじゃねぇ」と嘆く龍三。ある日、オレオレ詐欺に遭遇したことで、元暴走族の若者たちによる「京浜連合」の存在を知り、若い者には負けられないとかつての仲間たちを招集するのだが…。

――『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』とこれぞ北野映画といったバイオレンス全開の2作をヒットに導いたが、本作は先述のように、元ヤクザたちがコントの連続のような笑いを繰り広げる。

北野監督:「『アウトレイジ』シリーズをそのまま続けていくと抜けられなくなって、『仁義なき戦い』の深作(欣二)さんみたいになっちゃう。そう思って、以前に書いた台本をひっぱり出してきて、全く違うところを目指してみようと。そこで「笑い」をってなったんだけど、映画である以上はストーリーがあるので、笑わせるんだけど、コメディアンは極力、使わないで、アドリブやボケとかじゃなくて、映画らしく芝居の中で笑いとペーソス(=哀愁)を撮っていけたらと思った。

――監督の言葉を借りるなら目指したのは「正統派のお笑い映画」であり「お笑いをやりそうにない人に出てもらい、一生懸命に芝居をした結果が笑いになっている」とのこと。主演を担った藤さんは、確かにコメディの印象はないが、最初にオファーを受け、脚本を読んだ印象は?

藤:まさにいま監督が仰ったようにお撮りになるんだろうと思いました。僕には「笑い」はやろうったってできませんからね、そんな難しいこと。僕が考えたのは、どう笑わせようってことじゃなく、ただ龍三のやりどころのない「何かやってやろう」という思い、残り少ない命で一花咲かせてやろうっていう老人を一生懸命やらせてもらうってことだけです。

――共演陣には近藤正臣、中尾彬ら、若い頃には任侠映画で斬り合いやドンパチをやっていた同じ世代の仲間たちが顔を揃えた。

藤:そうですね。僕も若い頃はずいぶん、ヤクザ映画やりましたからね。20代の頃はあっという間に死ぬような役もたくさんやってました(笑)。そう考えると、引退後のヤクザがまた集まって…というのは面白いですね。中尾さんも同じ日活にいたし、そういう意味では因縁めいた話でもありますね。まあでも、現場に入るとみんな、一生懸命ですよ。品川(徹)さんが「これで私はイメージチェンジできますかね?」なんて仰ってたけど、みんな、同じような気持ちでとにかく一生懸命でした。

――実際、藤さん自身も龍三という役に、いままでの自分とはまたひと味違ったもの、これまでとは違う顔を見せているという感覚を持っているのだろうか?

藤:それはあると思います。まあこれから感じていくものなのでしょうけどね。僕の世間的なイメージがあるとしたら、そこから少し外れたもの、違うところを見せていると思うし、それは嬉しいことですよ。やはり、毎回変わっていかなきゃつまらないし、同じことはやりたくないですからね。やってみて一番ありがたかったのは、何度も回さずに鮮度のいいところで『OK!』と次に行くところ。あっちから、こっちからと複雑に撮ってたら、みんな最後までもたずに、途中でくたばっちまってたんじゃない(笑)?

北野監督:みなさん、職業が俳優だからね。こっちもイメージはあるけど、セリフを間違えない限り、だいたい思った通りの芝居をしてくれるんです。リハーサルなんてほとんどやらないし、本当はすぐ本番でいいんだけど、さすがにカメラマンさんと音声さんが大変だからね(笑)。こっちもお笑いのクセがあるから「何回も同じネタやれるかよ」ってのがある。最初の本番が一番、気合も入るし、テイク重ねるとイヤになって来ちゃう。自分の身に置き換えても、スタミナなくなっちゃうから、とにかく早く撮ろうって。

――藤さんをはじめ、主要キャスト8人の平均年齢が73歳超ということがことさら、大きな話題となっているが、その点でこれまでの撮影との違いなどは?

北野監督:いや、そこは若いか年寄りかってのはあまり関係ないね。野球と同じでさ、若手もベテランも同じルールでやってるんだから。映画も“映画”というルールの中で芝居やるだけで、若いのを使う時と何も変わらない。ハナッからおれは喋んないしね、現場で。役者のところにいないで、横で隠れてモニター見て笑ってるだけで、よほどのことがない限り、役者のところに行かないし、「よーい、スタート!」を掛けるのだって助監督が言うんだもん。

藤:日本一、無愛想な監督ですよ(笑)。徹底的に無愛想。でもそういう方だと思えば、全く問題ない。むしろ、ややこしいこと話すよりもありがたいですよ。

――さらにここから、話は年齢を重ね「ジジイ」になることで開けた“境地”、若い世代への思い、さらには「死」に対する意識などへと移っていく。

≫【インタビュー後編に続く】
《photo / text:Naoki Kurozu》

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