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【シネマモード】思わず応援したくなる脇役に注目『俳優 亀岡拓次』

映画好きなら、きっと好き。きっちりと決められた手順通りに進められる映画撮影の現場で、偶然という必然を引き寄せ魔法を起こす“最強の脇役”の日々を描く映画『俳優 亀岡拓次』…

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『俳優 亀岡拓次』 - (C) 2016『俳優 亀岡拓次』製作委員会
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  • 『俳優 亀岡拓次』のお酒マナー講座 - (C) 2016『俳優 亀岡拓次』製作委員会
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映画好きなら、きっと好き。きっちりと決められた手順通りに進められる映画撮影の現場で、偶然という必然を引き寄せ魔法を起こす“最強の脇役”の日々を描く映画『俳優 亀岡拓次』が。暇なときは酒を飲み、ぼんやりとした様子で現場入り。でも、マニアにファンの多いカルト映画に出演する、ある意味で伝説の脇役・亀岡。彼が引き起こす偶然に期待する監督も多く、なかなかの人気者。その生活を覗き見しているような本作は、俳優って華やかに見えて大変だなと、分かりきったことを改めて感じてしまうのです。妙にリアルで詳細な、脇役俳優の切なさを感じたりして。「どこかで見たことがあるような」と言われるけれど、はっきり俳優だと、ましてや名前など思い出してくれる人はほとんどいません。そして、何者かが分かった時点で、その辺の紙切れに「サインしてください」と言われてしまうのです。ぷぷっと笑いながらも、どこかやるせない。大きなドラマは起こりませんが、丁寧に描きこまれたディテールが、ある俳優の興味深い日常を、一風変わった興味深いドラマに仕立てているのです。

自信満々で、自分をばっちりアピールできて、どんどんのし上がる。そんなタイプのイケメン俳優とは正反対で、人生にも仕事にも恋にも不器用な亀岡。彼の人生は仕事で入り込むフィクションの世界と、現実の世界を行ったり来たり。観ているこちらも、その境界線がわからなくなり、不思議な浮遊感を覚えます。きっと、不器用な彼はその切り替えがそれほど上手くいかないから、いつもだるそうで、体温が低そうで、ちょっとぼんやりしているのかも。

そんな彼の七変化も、本作の見どころ。神社のホームレスから、ヤクザの子分、時代劇の泥棒、フィリピンパブのお客、そして世界的監督に請われて演じたモロッコの民まで。とにかく何でもしっくりフィットしてしまうのです。私たちのように、基本的に好きな服を選んで生きていける場合は何が似合うか、何が似合わないかが明確な方が楽ですが、俳優たちは、何でも似合うことが武器になるはず。主役級ならば、ある程度その人の特徴があってもいいけれど、小さい役をいくつも演じる必要のある脇役たちは、なるべく多くの役柄に染まれるよう、色がなく、特徴が無いほうがいいのかもしれません。それを意識してなのか、もともとそうなのか、亀岡は普段の様子もかなり地味。もしかして、次に呼ばれたときのために、自分を抑え続けているうちに、地味男になったのだとしたら。なんだかいじらしいぞ、亀岡!

そのいじらしさは、恋のエピソードでも炸裂します。ロケで訪れた長野県諏訪市で、偶然入った居酒屋「ムロタ」で、美しい若女将に一目惚れ(女将の麻生久美子がまた可愛い!)。気さくで気の利いた彼女との会話に、これまでになくいい表情を見せるのです。撮影が終わって東京に戻っても、彼女が忘れられない37歳、独身の亀岡は、ある日、一大決心をして告白しに諏訪に出かけます。その恋の結末は? 実はそこにも、ちょっと悲しい役者の性が見え隠れ。良くも悪くも、頭のてっぺんからつま先まで、全身役者とはこの人のこと。その日常を覗き見るうちに、亀岡が実在の俳優ならば、断然応援したいのにな……と思うのでした。
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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