※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

「プロジェクトX」? 日本版『ダークナイト』? 初心者も楽しめる『シン・ゴジラ』

ほとんどの日本人がその存在を知っているゴジラ。でもキャラクターとして知ってはいても「実は、映画は1本も見たことがない」という若い人や女性も多いのではないでしょうか。

最新ニュース コラム
注目記事
『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
  • 『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
  • 『シン・ゴジラ』(C)2016 TOHO CO.,LTD.
  • 『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
  • 『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
  • 『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
  • 『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
  • 『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.
  • 『シン・ゴジラ』 (C)2016 TOHO CO.,LTD.

■アメコミ映画の対極? 日本の日本人による日本的ヒーロー映画!

一方で、主人公の矢口をはじめ、国民の命を第一に考え、この国の未来を真剣に案じる者たちの姿も描かれます。不眠不休で身を粉にして事態に立ち向かう政治家や官僚、研究者ら対策チームの面々、そして彼らが立案した作戦に文字通り命がけで従事する自衛隊や消防関係者などの姿は、絶望的な事態の中のひと筋の“光”であり、庵野監督が本来あるべき為政者の姿として物語の中に込めた希望、祈りと言えるでしょう。

そして、いい意味でこの映画が“日本的”であるのが、主人公らが決して飛び抜けた大天才ではないというところ(もちろん、国家を動かす代議士、官僚、そしてその道の第一人者である研究者である以上、ひとりひとりが優秀であることは間違いないのでしょうが…)。矢口も、会議の席で突飛な発言をして煙たがられるなど政治家としてやや異端の雰囲気を持ってはいますが、あくまでも若手の一政治家であり、基本的に上司の顔を立て、部下を気遣い、実に日本的な根気のいる交渉と根回しでことを進めていきます。対策チームのメンバーたち(石原さとみ、高良健吾、市川実日子、高橋一生 etc…)も個性派で魅力的な面々ですが、あくまでもチームとして知恵を出し合います。その姿は「プロジェクトX」そのもの!

スティーブ・ジョブズや“アイアンマン”トニー・スタークスのような一人の天才の存在や超人的なパワーに頼るのではなくチームワークの勝利を目指す――アメリカンドリームやアメコミヒーローとはある意味で対極にある、日本の日本人によるヒーロー映画といえるのかもしれません。先ほど、“お役所体質”と批判的に書きましたが、非常事態にあっても倫理と秩序を保とうとする姿勢は、一方で日本社会の美徳とも言えます。ある登場人物のセリフとして「役所のすること」という言葉が出てきますが、実に味わい深いセリフとして胸に響きます。

長くなりましたが、最後にもうひとつ。東京湾に出現し、首都を蹂躙するゴジラをどうすべきか? という会議の中で「駆除するのか?」「捕獲するのか?」それとも「静観する(海に還っていくのを待つ)のか?」といった解決の選択肢が掲げられます。外の世界からやってきた異種の存在、招かれざるスーパーパワーを持った存在、人類が自ら生み出してしまったのかもしれない手に負えない存在――ゴジラをどう解釈するのかにもよりますが、そうした存在とどう付き合うべきか? ここでもまた現実の世界を反映しつつ、選択が突き付けられます。

ここ10年ほどハリウッドでは、長くアメリカで親しまれてきたヒーローを最新の映像技術で現代版として映画化したアメコミヒーローシリーズが人気を博していますが、アメリカにおけるアメコミヒーローに日本で相当する存在がゴジラなどの怪獣なのかもしれません。

バットマンという、アメリカ人が慣れ親しんだヒーローの物語をクリストファー・ノーラン監督が新たな解釈を加えて大ヒットに導いた『ダークナイト』三部作には、9.11の影響が多く見られると言われます。『シン・ゴジラ』はその意味で、約60年にわたって日本人が愛し続けてきた怪獣を用いて3.11以降の日本、現在の世界を改めて解釈した作品といえるかも知れません。ゴジラについての知識の有無や怪獣映画への理解の深さに関係なく、現代を生きるひとりの日本人として、まっさらな気持ちで、もしいま、ゴジラが現れたら…? という体験を味わってみてはいかがでしょうか?

『シン・ゴジラ』は7月29日(金)より公開。
《黒豆直樹》

関連記事

特集

【注目の記事】[PR]

特集

page top