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「音楽はもう一つの主人公」「すごく幸せ」藤井道人×野田洋次郎、トップクリエイターが語る『余命10年』

小松菜奈と坂口健太郎のW主演でベストセラー恋愛小説を映画化した『余命10年』。本作で監督を努めた藤井道人と、音楽を担当した「RADWIMPS」野田洋次郎の対談が実現し、本作について徹底的に語り尽くした。

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『余命10年』(C)2022映画「余命10年」製作委員会
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小松菜奈と坂口健太郎のW主演でベストセラー恋愛小説を映画化した『余命10年』。本作で監督を努めた藤井道人と、音楽を担当した「RADWIMPS」野田洋次郎の対談が実現し、本作について徹底的に語り尽くした。


>>『余命10年』あらすじ&キャストはこちらから


本作は、“涙よりも切ない”恋愛小説として、発売以来、SNSを中心に反響が広がり続けているベストセラーを、『新聞記者』『ヤクザと家族The Family』「アバランチ」の藤井監督が映像化。不治の病にかかり、もう恋はしないと心に決めた茉莉(小松菜奈)と、生きることに迷いながらも茉莉と出会い、恋に落ちていく和人(坂口健太郎)。彼らの人生が交わるとき、ありふれた毎日が嘘みたいに輝き出す――。

著者の小坂流加さんは、茉莉と同じく難病を抱え、小説の文庫化を待たずして亡くなった。俳優陣とスタッフ陣が、“原作者・小坂流加さんの生きた証を残したい”という思いのもと作り上げられた本作は、3月4日に公開を迎え、週末動員ランキング初登場実写映画No.1を獲得、公開3日間で興行収入3億円超えの好スタートを切った。

また本作は、実写映画としては初めて、「RADWIMPS」が全編にわたり音楽・主題歌を手掛けているのも注目ポイントだ。

――主題歌「うるうびと」の歌詞は、和人の目線でつくられています。最初からそのような打ち合わせがあったのでしょうか?

藤井監督:なかったですね。台本をお渡しして、その感想を曲にしてくださいとお伝えさせていただきました。

野田:(藤井監督からは)最初から全幅の信頼を寄せていただいていたので、まずは思ったままにつくってみますとお伝えしました。ただ監督から「衣装合わせの前にデモがあると嬉しいです」と言われたので、一昨年の夏くらいにデモをお渡しました。

――作品と音楽が密接になっている作品なんですね。

藤井監督:音楽はもう一つの主人公だと思っています。

野田さんが作ってくださった音楽が本当に見事に調和してくれたといいますか、野田さんがすごく作品に寄り添って、茉莉ちゃんに、和人に寄り添って曲を練りこんで作り上げてくれたから良かったんだと思います。

野田:俳優でご一緒した時も、一番最初は撮影前に脚本打ち合わせを何ヶ月かやりながら作り上げていき、その後役者として合流していきました。そして、今回本作では音楽を担当させてもらって、作品との向き合い方みたいなものも含め、互いにすごく理解し合っていた気がします。

僕も現場でいえば音楽監督、バンドで言えば監督的な立場でやっているので、そこら辺の視点みたいなもので通ずる部分があるんだなと、勝手に思っているわけですが、その心地良さみたいなものを感じながら曲を作れたという感じです。

――お二人のお話しを聞いていて、考え方や感情の受け止め方が似ているのかなと思いました。

野田:藤井監督が「シーンによってはもう少しこういうのも聞いてみたいです」と仰ると、基本的には一回全部を吸収して、飲み込んで受け入れて作っていきます。それでもどうしても僕がこっちの方が良いと思った時は僕も折れないですし、監督自身も折れないんです。でもそんなときは、譲ったり、お互い分かり合っていたと思います。

藤井監督:お互い見えている図や想いは一緒ではありますが、音楽の細かい部分に関して僕は分からないので。「これが良い」と野田さんが信じてくれたものを自分は大事にしたい。

僕が今回『余命10年』の音楽をやって欲しいと伝えて、承諾いただいた後「大体どれくらい曲数あるの?」と聞かれたときに、とっさに「15曲くらい…そんなに音楽多くないイメージなんですよ」とお伝えしたのですが、結果倍ぐらい作ってくださいました(笑)。

野田:今回のサントラ30曲入りですね(笑)。こんなに音楽ばっかりで大丈夫なのかなって心配になりました。

――撮影していく中で、この作品には音楽が必要だと監督ご自身が感じたということでしょうか?

藤井監督:最初15曲とお伝えした時はそんなに考えていなかったのですが、劇伴音楽って“風”のような存在だと思うんですよ。野田さんの音楽もまさに“風”のようなもので、二人(茉莉と和人)はこんな“風”を受けているというような空気を作ってくださる。この映画をすごく多くの人に届けたいと思った時に、二人のお芝居が足りてないから、音楽を足すのではなくて、より豊かな空気の中で二人の芝居を良く見せたい。そこに野田さんの音楽がついてくださったというのが、一番曲が増えた要因なのかなと思います。

――普段の楽曲作りと、本作での楽曲作りでの違いはありましたか?

野田:僕は今回の方が個人的に自分として幸せが多いという感じがしましたね。

今までは、自分が歌うために曲を作り、自分はこうなんだということを示して、それで多くの人に聞いてもらって、20年近くやってきました。でも今回は全く新しい違う喜びなんですよ。素晴らしい作品があって、そこに生きている瑞々しい登場人物と、監督の想いがあって。その人たちのために何ができるだろうと考えた時に、今回はもしかしたら喜びが強いと言うか、その人たちを喜ばせたい、監督を驚かせたいとか。そのために考えている時間がすごい好きですし、その両方があって音楽だと思いますね、すごく幸せでした。

――野田さんの気持ちの変化があった時に、藤井監督がお声掛けをしたというのは何か縁を感じますね。

藤井監督:今回、自分にとっても多くの人に観てもらいたいという想いが出てきた時に、野田さんに全ての音楽を直接お願いしに行きました。いつかやってもらいたいとずっと思っていたのですが、自分にとってやっとそういう時期が来たなと。

――なぜ、“そういう時期”が来たと感じ、この作品と野田さんが繋がったのでしょうか?

藤井監督:10代の頃から(RADWIMPSさんの)音楽を聴き続けてきて、野田さんの音楽の特徴というのは目に見えない、人が言い表せない心の感情の機微というものをずっと届けてくれていたような気がしていて。僕たちも“映画でしか表現できないもの”というものを追い続けてきましたが、“あと10年しか生きられない”という感情は言葉にはできないと思うんです。でも、小坂さんが生きた10年を野田さんの音楽で聞いてみたかったというところが一番大きな理由ですね。

野田:嬉しいですね。結果こういう作品が出来上がってみて、監督の直感は正しかったんだなと思いました。

――改めて楽曲制作ではなく、完成した作品を鑑賞したご感想は?

野田:藤井監督も最初仰っていたように、“余命モノ”と言われる映画を作るのは、まずそれだけで覚悟が必要ですし、観る側にも一つバイアスやフィルターがかかって観られるものであると思うんですよ。だけど、それを遥かに飛び越えるくらいの、まっすぐさというか、情熱というか、真摯さみたいなものが映像を観た時に、画面から飛び出してくるように感じました。

ずっと残っていくような作品だなと感じましたし、このような作品に、初めて実写映画に音楽をつけられて本当に幸せでした。一生大事にしたいと思える映画です。キャスティング含めて、本当にすごいですよね。みんなが一つの意志のもと繋がっている感じが、観ていてすごかったです。

――藤井監督の作品にまた俳優として出演したいと思いますか?

野田:こんな大御所の監督になられてしまって(笑)。あの時(ドラマ「100万円の女たち」)はまだ新人同士でしたからね、ピチピチでしたよね(笑)。

藤井監督:僕は俳優としてもお願いしたいですね。例えばアクションとか。でもアクション練習を野田さんとやるのは緊張しますね(笑)。僕は野田さんといて一番気持ち良いのは、お互いが強制し合わないこと。いつかピタッと来るその瞬間を待てるから一番安心できるんです。

野田:お互いが武者修行しているじゃないですけど、HP(ヒットポイント)をどんどん増やすみたいな、(藤井監督に対して)「次会う時までにお前かっこよくなってろよ」という感覚がどこかにあって。俺も絶対次なんかやるんだったら驚かせたいし、どんな冒険をしてきたのかということを伝えたいし、藤井監督も多分そうやって生きていくだろうし、そういう戦友みたいな心強さは感じますね。

――お二人にとってこれまでの10年は、どのような10年でしたか?

藤井監督:デビューが26歳で、メジャーデビューがワーナー・ブラザーズさんの映画でした。浮かれて頑張ったけど、全然ダメで。作品がというより、自分が監督として全然ディレクション出来ていなくて、人をまとめる力も技術もなくて。それで一回監督を辞めて、自主映画をまた撮り直し始めました。全部勉強し直してというのが二十代後半。ずっと録音の機材を勉強したり、CGの勉強をしたり、自分に体力をつけて戻ってきたいと思った一発目の作品が「100万円の女たち」で30歳の頃ですね。

野田:27歳くらいで初めて映画の主演の話を頂きました。それまでは自分の中で閉じながら音楽を作っていたのですが、10年ぐらい前からいろんな人と繋がっていって、コミュニケーションを取りながら違う分野で“表現”というものをしてみようと思い始めたんです。それがあって今があります。

バンドはバンドの“自分達だけ”という美しさもあると思うんですが、それだけだと息が持たなかったと思います。この10年はいろんな出会いを求めながら、新しいものを自分が作れている10年間だったと思いますね。

――これからの10年はいかがでしょうか?

野田:藤井監督は45歳くらいが一番カッコ良さそうですね(笑)。10年後もこのペースで作品を作っていそうです。

藤井監督:本当ですか? このペースでやっていったらやばいかな(笑)。変わんないというのが人生の目標というか。例えば、お金をたくさんもらって、かっこよく使えればいいんですけど、そうなれる自信がないので。あまり飾らず、作品でちゃんと語ると言うか、そういう大人になれなくなったら辞めようというのはなんとなく自分の中では考えていますね。

野田:藤井監督は変わらない気がする。多分自分の満足を、お金だったり名声だったりではダメで、自分の作品以外では満たせない気がします。そこは自分と通じるものがあるなと思いますね。

間違いなく今より自分が表に立っていくというのは減っていくと思います。見られるような、見てくれじゃなくなっていくかもしれないですし(笑)。でもそれがすごい楽しみです。例えば、自分よりもずっと違う歌い手さんのプロデュースをしてみたり、映画の音楽だろうと、何の音楽だろうとそこに自分の何かを足したら面白いものになるだろうなというのに挑んでいるんじゃないかなと思います。

『余命10年』は全国にて公開中。

《シネマカフェ編集部》

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