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「生きるとか死ぬとか父親とか」田中みな実インタビュー 「人間性がにじみ出る」音声コンテンツならではの表現

好きな時間、好きな場所で好きなだけ。聴くという形で本を楽しめるオーディオサービス、Amazonオーディブル。個人的に交流のある著者に「聴いてもらうのはドキドキします」と笑顔を見せながら心境を明かす田中さんに、聴くメディアの魅力や収録の裏話を語ってもらった。

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田中みな実/photo:You Ishii
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好きな時間、好きな場所で好きなだけ。聴くという形で本を楽しめるオーディオサービス、Amazonオーディブル。文学作品からノンフィクション、実用書まであらゆるジャンルがタイトルに揃い、伝えることに長けた朗読によって内容が浸透していく。文字で追うのともまた違う読書体験だ。

12月27日よりラインナップに加わるのが、TVやラジオのパーソナリティ、俳優と活躍の場を広げる田中みな実が朗読する「生きるとか死ぬとか父親とか」だ。

作者はユニークな切り口のコラムやエッセイを手がけ、ラジオやポッドキャストでの悩み相談への名回答の数々で幅広い層の共感を得ているジェーン・スー。母親は20年ほど前に他界し、80代の父親のエピソードを中心に、40代半ばになった一人娘の著者が“家族”というものと向き合うエッセイは2018年に刊行され、2021年にドラマ化された。

ドラマ版に出演していた田中さんは、アナウンサーだった経験から「声には人間性がにじむ」と言う。個人的に交流のある著者に「聴いてもらうのはドキドキします」と笑顔を見せながら心境を明かす田中さんに、聴くメディアの魅力や収録の裏話を語ってもらった。


Audibleで「生きるとか死ぬとか父親とか」を聴く



――田中さんはドラマで、スーさんをモデルとした主人公のラジオ番組で進行を務めるアナウンサーを演じられました。今回のオファーが来た際はどんなお気持ちでしたか?

親交のあるジェーン・スーさんの作品で、何年か前にドラマにも参加させていただいていたので、二つ返事でお受けしました。あと、最近うちの母がAudibleにハマっていて。「Audibleに出会って人生が変わった!」と嬉々としている様子をみて、少しでも親孝行になれば、と(笑)。

――ご自身は、今までAudibleにはあまり馴染みがなかったのでしょうか?

CMなどで知ってはいたのですが、インスト―ルはしていませんでした。それが、母の影響で気になって。「運転しながら聴いていて泣いちゃったわよ」なんて言うものですから、そんなに?!って。今では私も登録して、すっかりハマっています。

――どんなところが魅力でしょうか。

今回の読み手としてのお仕事の参考になればという気持ちで聴き始めたものの、気付けばどっぷりと世界観に浸ってじっくり聴き入ってしまった作品がいくつもありました。妻夫木聡さんの「ノルウェイの森」は空気感や温度感、濡れたような声に包まれる感覚がとても不思議で、それを母に伝えたところ「でしょ!高橋一生もいいのよ~」って(笑)。聴いた人だけが得られる感覚かと思うので、ぜひ一度ご体験を。

――「ノルウェイの森」は小説ですが、今回朗読されるのはエッセイです。どのように臨まれましたか?

スーさんご本人をよく存じ上げていることもあって、どう読んだらいいかかなり考えさせられました。様々なパターンを試してスマホに録音して聞いてみたのですが、変にスーさんに似せて読むのはかえって聴きづらくなると感じたので、聴き手にとって心地よいテンポやトーンを第一に心掛けながら準備をしました。

――田中さんの前職は放送局のアナウンサーですが、朗読はニュース原稿を読むのとは違うテクニックが要りそうですね?

TBS時代の先輩、堀井美香さんが現在は朗読のお仕事を多くなさっているので、堀井さんが読み手のAudibleの作品を事前にいくつか聴かせていただいたのですが、朗読の世界の奥深さを思い知らされて、収録当日を迎えるのが少し怖くなりました。

もともと作品のファンだった場合、読み手によってそのイメージや世界観を壊しかねないと感じたので、私はなるべく田中みな実を感じさせないように努めてフラットに読むことを意識しました。カギ括弧内の会話の人物もそれほど芝居にならないようにしましたね。聴き終えて「あー、なんかいい話だったな」とぼんやりあたたかな気持ちになっていただけたら、読み手としてこのうえなく幸せです。

――読んでいて印象深かったところは?

スーさんとお父様とのやり取りでしょうか。そこに見え隠れする本音や、親だから言えないこと、自分が親よりも経済力を持ってしまう切なさみたいなものとか。私自身、そういった経験はないのですが、確かに、何とも言えない気持ちになるだろうな、と想像して。

娘を立派に育て上げて年金暮らしになった今、家賃が少し高いマンションに住みたいと相談する父親の気恥ずかしさや、どう伝えるか作戦を練る様子などが、コミカルすぎず、でも深刻になりすぎずに描かれます。施設に暮らす叔母の話、そして所々で語られる亡き母の話に喉の奥がグッとなりました。

――作者ご本人と知り合いである影響など、ありましたか?

不思議なのは、これだけ親しくさせていただいていても何だか現実のスーさんとリンクしないというか。私が悩み相談をすると、いつでも軽快にスパッと答えを出して笑い飛ばしてくれて、ラジオリスナーのみなさんにとっても同じように愛情深く、心強い存在のスーさんが、こんなにも迷い、葛藤しているのが別の誰かのことのようで。でも、だから人の痛みに本当の意味で寄り添い、深いところで理解をしてくれるのだとも知り、読むたびジェーン・スーさんという人を愛しく思いました。

――一番聴いてもらいたい方でしょうか。

いや、一番聴いてもらいたくないかもしれないです(笑)。母には聴いてもらいたいかな。客観的な意見を述べてくれそうです。

――お母様はいつも感想や意見をくださるんですか?

家族全員、私の仕事に何も口を出さないし、興味もなさそう(笑)。でも、こちらから意見を求めると、特に母は、実に的を射たことを言ってくれます。母は私の声の仕事が好きみたいです。TVに出るお仕事はどうしてもちょっと特異なところ……要するに“ぶりっ子”“あざとい”みたいな部分が強調されがちですが、“声”という本質的なものは姿形が見えない分、人間性が嫌でもにじみ出る。「みな実の声は優しいね。だから私はあなたのラジオが好きなの。時々ドキッとするほど素が出ているのはどうかと思うけど」って(笑)。このような形での声のお仕事は初めてなので、それを母に聴いてもらえるのがとても嬉しいです。

――収録はどのように進めたのですか? 

私の場合は1日大体4~5時間を週に1、2回のペースで4~5日の予定です。情けないことに、日を空けないと声や集中力が続きません。読み始めて2時間が経過すると言い淀む回数が明らかに増えます。集中力を取り戻そうと、スタジオの廊下を歩いてみたり、深呼吸したり、簡単なストレッチをしてみたり。本当は逆立ちもしたかったけど、さすがにとどまりました。

――逆立ちですか!

ずっと同じ姿勢で読み続けていると、エコノミー症候群になりそうで。加えて、1人で声を出していると酸欠みたいな状態になって手先が少し痺れてきたり・・・。逆立ちをすると全身の血流が巡って頭がクリアになりそうだな~とぼんやり考えていました(笑)。

――先ほど声についてのお話がありましたが、今後の音声コンテンツの可能性についてはどう思われますか?

私が就職した時はTBSは恐らく民放で唯一、アナウンサーがラジオもTVも担える放送局でした。はじめは「声の仕事はごまかしがきかない」と諸先輩に言われた意味がいまいち理解できませんでしたが、たしかに、苦手な音などはラジオだと顕著に分かるのです。人間性も隠せない。だから、音声コンテンツは面白いし、話し手としては少し恐ろしくもあるのです。声のメディアは、マスではなくより個人に届けるものという感覚もなんとなくあって。細々とでも、形を変えてでもいいから、音声を主体としたコンテンツはずっとずっとあり続けて欲しいです。

――最後に、この作品をどのように聴いてもらいたいですか?

配信は年末年始になるのかな。ホリデーシーズンは、どこもかしこも賑やかで、皆が楽しそうでキラキラしていて、ほんの少し取り残されたような気持ちになる人も少なくないと思うんです。そんな誰かにとって、押しつけがましくなく、じんわり心があたたまって「連絡しづらかったけど、親戚にメールでもしてみるか」とか何かしらの栄養になってくれたら嬉しいなと思います。私はそうやってスーさんの本やラジオに励まされてきたから。


Audibleで「生きるとか死ぬとか父親とか」を聴く

〈提供:Audible, Inc.〉

《text:冨永由紀/photo:You Ishii》

好きな場所は映画館 冨永由紀

東京都生まれ。幼稚園の頃に映画館で「ロバと王女」やバスター・キートンを見て、映画が好きになり、学生時代に映画祭で通訳アルバイトをきっかけに映画雑誌編集部に入り、その後フリーランスでライター業に。雑誌やウェブ媒体で作品紹介、インタビュー、コラムを執筆。/ 執筆協力「日本映画作品大事典」三省堂 など。

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