ルーニー・マーラが出演する『ラ・コシーナ/厨房』より本編映像が解禁された。
第74回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で上映され、高い評価を受けた本作。ニューヨークの観光客向け大型レストラン「ザ・グリル」を舞台に、移民たちの人間関係をユーモラスかつ痛烈に描く。

この度解禁されたのは、職場恋愛中の恋人たちによる示唆的なやりとりを捉えた本編映像。
開店準備が進む「ザ・グリル」では、ウェイトレスとして働くアメリカ人のジュリア(ルーニー・マーラ)がお店のシンボルである大きな水槽を磨いていると、そこに何匹ものロブスターが投入されていく。すると彼女の恋人でメキシコ出身の料理人であるペドロ(ラウル・ブリオネス)が、「“ロブスターを食え”とどこのバカが勧めた? そいつのせいで、みんな必死にロブスターを食ってる」と語り始める。
高級食材になってまだ100年も経たないこの生き物や人間を巡るどこか滑稽な歴史が語られていく中で、彼をまっすぐ見つめ続けるジュリア。そっと近づきキスをして挨拶を交わし、以前から恋人同士であるふたりにしか分からないやりとりを繰り広げる。
ペドロの話は本作で描かれる複雑な人間模様をどこか示唆するもので、水槽の中でうごめくロブスターを体を覆う毛や水泡まで見えるほどに大きく捉えるカメラワークも強い印象を残すシーンとなっている。

この会話からペドロは理知的な人物であると同時にロマンチストであることも伝わってくるが、演じたラウル・ブリオネスは、「ペドロは社会的な闘士として戦い続ける存在です。彼は単なるキャラクターの枠に収まらず、その殻を破って本来の人間性を取り戻しつつあります。アメリカンドリームが映画の夢と重なるように、ペドロを通して、現代の私たちが生きる中で何が起こっているのか、そしてどう対抗すべきかと改めて考えさせてくれました」とその人物像を明かす。ふたりの恋模様のゆくえだけでなく、ペドロが起こすある行動にも注目してほしい。
当初からルーニー・マーラにジュリアを演じてほしいと考えていたアロンソ・ルイスパラシオス監督は、本作の脚本執筆中、ルーニー・マーラの代表作の1本『キャロル』を鑑賞したという。
「彼女のサブテキストを表現する力に驚きました。壊れそうなくらい繊細なのに、少ない言葉で多くを伝えられるんです。彼女は言葉こそ少ないけど、その分すごく強いエネルギーを持っている。その要素が、ジュリアというキャラクターには必要だったんです」とその魅力を語る。

ルーニー・マーラは、「今の私にとって大切なのは“体験”なんです。“これは意味のある体験になるだろうか? 自分が成長できる何かがあるだろうか?”と自問します。アロンソがこの映画を作ろうとしているやり方を知ったとき、私はすぐに“これはぜひ体験したい”と思いました。これまでやってきたどんな仕事とも違うものになると感じられたんです」と出演を決め、自身にとって初めてとなるメキシコでの本格的な撮影に臨んだ。
ラウル・ブリオネスは、ルーニー・マーラとの共演をふり返り「ルーニー・マーラと共に仕事をするのは、シンプルでありつつ温かみのある体験でした。それは、ルーニーが私やチーム全体に対して本当に率直に、自然体で接していたからです。彼女は規律を保ち、プロとしての責任感を持って自分の役割を果たし、私たち厨房にいる全員と同じように働いていました。その肩書にもかかわらず、素晴らしい人間性を持ち、だからこそ素晴らしい俳優であると言えるのです」と明かした。
『ラ・コシーナ/厨房』は6月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開。



