イタリア国内で監督史上最大のヒットを記録した『パルテノペ ナポリの宝石』より、「サンローラン」のクリエイティブが光る冒頭シーン、ファッションに着目した見どころが公開された。
本作は、神秘的な美しさと悲劇を背負う女性“パルテノペ”の生涯を描く。
本作の衣装ディレクターを務めたのは、「サンローラン」のディレクター、アンソニー・ヴァカレロ。イタリア人の両親をもつベルギー出身のアンソニー・ヴァカレロは、2008年にブランド「アンソニー・ヴァカレロ」を立ち上げたのち、2016年より「サンローラン」のクリエイティブ・ディレクターに就任した。
アンソニー・ヴァカレロが手掛け、かつてのイヴ・サンローランからインスピレーションを受けた、美しい衣装は必見。

そして、歴史、文化、商業が交差するナポリのシンボル的存在のショッピング施設「ガッレリア・ウンベルト」のあるサンカルロ通りを、ナポリの自然を想起させるような同系色の衣服を身に着けた男女が行き交う様子が、スローモーションに映し出される今回の映像。

パルテノペが着用している日々のワードローブに注目してみると、前半の探求心に満ち溢れている若き日のパルテノペは、色とりどりの衣服や水着、軽やかな薄手のドレスを身にまとい、溢れんばかりの活力と自由への希望を感じる。身体のラインにまとわりつく薄手のドレスは、若き日の軽やかさを示唆する一方で、決して振り払うことのできない過去の記憶に囚われているかのよう。

さらに、成長し人類学への志を固めていくにつれ、堅実で落ち着いたクラシカルなスーツスタイルへと変化。「サンローラン」にとってのスーツスタイルは、創業者イヴ・サン=ローランのパーソナルスタイルで、ブランドのアイコンとしても愛され、さらに男性の衣服であったジャケット×パンツのスーツスタイルを、ウィメンズとして確立させた。男性的なシルエットのジャケットを羽織るパルテノペは、成長と自立、そして逸脱の象徴となると同時に窮屈さや脆さも併せ持ち、自由と社会の期待の間で揺れ動く女性としてのジレンマが垣間見える。
時間の経過と共に変化していくワードローブは、人生の美しさから時間の無常さまでのコントラストを、より鮮やかに彩るだけでなく、二面性をもつナポリの街とパルテノペそのものを反映している。本作では、映像美とともに、華やかな衣装も注目となっている。
『パルテノペ ナポリの宝石』は新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国にて順次公開中。


