映画『爆弾』が日本公開に先駆けて第38回フィンランド・ヘルシンキ国際映画祭でワールドプレミア。完売満席の会場で、舞台挨拶に主人公・類家役の山田裕貴と、謎の男スズキタゴサク役の佐藤二朗が登壇した。
9月18日(木)から9月28日(日)まで開催中の第38回フィンランド・ヘルシンキ国際映画祭。アジア映画のショーケース部門「Asian Cuts」に選出された本作は、9月24日(水)に日本公開に先駆けて世界初となるワールドプレミア上映を実施。
上映チケットは発売開始から即完売し、上映会場となったビオ レックス ラシパラツィ(Bio Rex Lasipalatsi)には現地の観客やフィンランド在住の日本人客が詰めかけ、415席に対して430人の観客が来場。キャパシティを超える来場者で会場は熱気に包まれていた。

今回が初の海外映画祭参加となった山田は、華やかに敷かれたレッドカーペットを歩きながら、観客の大歓声に感激しきり。佐藤とともに満面の笑みを見せ、世界中のメディアからも注目を浴びていた。
上映前に行われた本作舞台挨拶では、山田と佐藤がそれぞれフィンランド語で自己紹介を行い、あたたかい拍手で観客に迎えられた。

山田は満員の会場を見渡しながら、「僕にとっては初めての海外映画祭で、フィンランドの方にこれだけ日本の作品の関心が高く、こうして集まっていただけることが何より嬉しいです。日本には素晴らしい作品、素晴らしい監督、素晴らしい俳優がたくさんいます。『爆弾』はそれをもっと知っていただくための足掛かりになるような面白い作品になっていると思うので、ぜひぜひ楽しんで言ってください!」と笑顔でコメント。
佐藤は好きなフィンランド語として「SISU」という言葉を挙げ、「フィンランド人の魂、不屈の精神ということで若いころからこの言葉が大好きで、敬愛するフィンランドに来られて幸せです。今日はこの上映が終わった後、サーモンスープを食べるのが楽しみです!」と語り、会場からも大きな拍手が上がっていた。
佐藤二朗演じるタゴサク「フィンランドで大ウケだったと話せますね!」
上映後にはスタンディングオベーションがわき起こり、満員の観客と共に本編を鑑賞した山田は、本映画祭で初上映を迎えられたことをあらためて喜びながら、「まだ日本で上映してないからわからないですが、フィンランドのみなさんがこんなに笑ってくれるんだとびっくりしました!」と観客のリアクションについて言及。
上映中は、佐藤演じる、爆弾の存在を予告する謎の男・スズキタゴサクに対する反応が多かったようで、山田も「僕がこの映画で一番好きなタゴサクの“動画”のシーンで、めっちゃウケてましたね!」と大興奮。
佐藤は「ものすごくひどいことも言っているのに、みなさんとても笑っていて…日本で公開した時は、フィンランドで大ウケだったと話せますね!」と笑顔を見せた。

興奮冷めやらぬまま突入したティーチインでは、さっそく「非常に優秀な類家というキャラクターを演じる上で、どんな準備をしましたか?」という質問が。
山田は「僕自身は頭がよくないので、類家のように頭がよく見えるようなジェスチャーだったり、そういう人の喋り方、歩き方、話すテンポを色々盛り込んでそういう風に見せています。猫をかぶっています」と役作りについてコメント。
実力派俳優揃いの演技合戦については、「優秀な若手と強力なベテランの共演はいかがでしたか?」という質問が飛び、佐藤が「染谷将太、渡部篤郎、そして山田裕貴。みなさん素敵な俳優で、向かい合って会話劇をして、撮影中は彼らから刺激をもらって、とても楽しい毎日でした」と充実の撮影を振り返る。
続いて山田が「佐藤さん演じるタゴサクは、セリフとしてもお芝居としても表現しなきゃいけない時間の流れが一番多い役。それがお芝居ではなくて、実在しているんだなと思わせる絶大なパワーが佐藤さんにはあったので、この化物をどう倒そうか、僕は日々頑張っていました」と語ると、2人の熱演をねぎらうかのように大きな拍手が起こっていた。

来場客からも途切れることなく手が挙がり、山田と佐藤のあまりの演技力に、「台本を読んで先のセリフは知っているはずなのに、本当に驚いているように見えるのはなぜ?」という質問も。
これに対し佐藤は、「我々役者は決まったセリフを言うのが仕事。でもその中で、演じるたびに相手の、たとえば山田さんの芝居も微妙に変わるし、何としても逃さないように受けるというのがお芝居の面白さの一つだと思います。スポーツや音楽のグルーヴ感にはかなわないかもしれないけど、俳優には俳優の面白さがあるんです」と、演技の力について熱弁した。

続いて「スズキタゴサクという、気持ちの悪い、いやしいキャラクターを演じるのどんな気分でしたか?」という質問には、佐藤が「まず原作の小説がすごく面白くて。タゴサクはとんでもないキャラクターだけど、俳優としては正直誰にも渡したくないなと思ったし、ぜひやりたかったんです」と答えると、会場からは拍手喝采!
「今回の役を演じる上で難しかったことは?」という質問には、山田が「原作小説が悪魔的に面白かったので、それを約2時間にまとめて、僕たちがすべてを表現しきれるかということ。この作品に限らず、原作のある映像化では難しいなと感じるところですね」と答えつつも、大きな拍手を浴びながら手ごたえを感じている様子。
そして映画のメインの舞台となる取調室のシーンに関しては、「同じ部屋のシーンが連続しますが、どうやって乗り越えましたか?寂しくはなかったですか?」という質問が飛び、これには山田が「そこに取り組まなきゃいけない撮影がある限りは、寂しさは感じないです」と即答。
そして「スタッフさんがいて、キャストや監督がいて、みんなチームでがんばってるから寂しいと感じることはないけど、僕はすごく集中しないといけない役だったので…。現場でも静かに過ごしていたんですが、もっとみんなでトークを楽しんだりしたかったなと思います。伊勢役の寛一郎くんには、最後『もうちょっと山田くん、心開いてくれたらよかったな』と言われちゃいました(笑)」と撮影現場でのやりとりを明かし、会場は笑いに包まれていた。
映画祭での熱気と交流を経て、山田と佐藤はヘルシンキ大聖堂を訪れたり、遊覧船で街を巡ったりと束の間の海外を満喫。

劇中では、冷静かつ飄々とした振る舞いの裏に鋭い眼差しを秘める類家と、一見平凡だがその佇まいに底知れぬ不気味さを漂わせるタゴサクとして、緊迫のやり取りを繰り広げる2人。しかしその火花を散らす対峙ぶりとは裏腹に、穏やかな表情が印象的なワールドプレミアの旅となった。

『爆弾』は10月31日(金)より全国にて公開。



