第97回米アカデミー賞国際長編映画賞のベルギー代表に選出された『ジュリーは沈黙したままで』より本編映像と、監督のインタビューテキストが解禁された。
レオナルド・ヴァン・デイル監督による本作は、テニスプレーヤーとして有望視される15歳の少女ジュリーが、担当コーチが指導停止となったことを受け、それについて沈黙を続ける、というストーリー。
この度解禁された本編映像は、主人公ジュリーを演じる現役のテニスプレーヤーであるテッサ・ヴァン・デン・ブルックが実際のプレーヤーとして本物のサーブで実力を発揮しつつ、ジュリーとして<事件>との距離を見極めようとする微妙な心情を映し出すシーン。力強く響くサーブの音と、社会への不信感が交錯し、不安が漂う映像に仕上がっている。
監督のレオナルド・ヴァン・デイルは、声を上げるのではなく沈黙を守る主人公を物語の中心に据えた理由について「ジュリーが主体性を少しずつ取り戻し、前に進む物語を描きたかったのです」と言う。
「ジュリーが沈黙しようと決断した裏は彼女なりの自立心と反抗心があり、映画はジュリーのペースで進みます。周囲の圧力には屈しません。物語が進むにつれジュリーは現代のヒロインとして姿を現し、私たちの時代を形作る、隠れた圧力や不正に光を当てていきます。ジュリーはノーと言う勇気を持っています。声を上げることを求める世界で彼女は沈黙を貫き、その沈黙によって世界は彼女に耳を傾けるようになるのです」と語る。
だが「沈黙は暴力的にもなりえます。少しずつ自分自身の感覚をむしばんでいきます。しかし、声を上げることも深く傷つける結果を招くことがある」とも言う。そして「このジレンマに直面した時、どのように決断すべきでしょうか?沈黙するか、声を上げるか」「どちらを選んでも何かを失う恐れがあります。つまるところ、本作が描いているのは「生きるべきか、死ぬべきか?」という実存的な問いなのです」と説明。
演技初挑戦となる現役テニスプレーヤー、テッサ・ヴァン・デン・ブルックについて監督は「テッサは場を明るくする力があるからこそ、ジュリーの沈黙との対比が胸を締めつけた」と語る。

オーディション映像を見せた際には涙をこぼすほどで、「スクリーンで放った存在感は圧倒的でした。優れたテニス選手は優れた俳優にもなれると気づかされました」と絶賛している。
他の多くの出演者もノンプロ&演技未経験だったため、監督は「考える時間を与え、“まだ分からない”と言える余裕と安心できる環境を作った」と述懐。リハーサルにも、撮影中にも常に俳優やコーチ、スタッフを同席させ、出演者が孤立しないよう配慮、現場には家族や友人の同伴も奨励し、「アクション」の瞬間は集中しても、「カット」後は映画作りを楽しめる空気を大切にしたという。
数週間で大きく成長していく若い出演者たちの姿に、監督は強い喜びを感じたとも言う。「彼らは<映画>というものを受け入れ、積極的に関わる勇気を持ってくれました。情熱を持って、自分自身をさらけ出して、ジュリーとその物語をスクリーンに映し出してくれたのです」「1人1人がそれぞれのやり方で映画のメッセージを支えてくれました。私にとってそれは本当に重要なことでした」「まさに彼らのためにこの映画を作っているからです。彼らが安心して生きられる世界で育ってほしいと願っています」と想いを寄せた。
『ジュリーは沈黙したままで』は10月3日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開。


