スーツケースを抱え、いつものように地下鉄の駅に降り立つ長谷部真次(堤真一)。営業マンとして1日歩き回った帰り道に携帯電話のメッセージを確認すると、弟から父親が倒れたという知らせが入っていた。入院がニュースになるほどの父とは、もう長らく会っていない。真次が、強い反発を覚えたのは、まだ中学生の頃の、まさに今日だった。威圧的な父とケンカした兄が、家を飛び出し、還らぬ人となったのだ。過去に思いを馳せながら、地下道を歩き始めた真次は、前方を横切る男が兄に見えて、思わずあとを追いかける。階段を上るとなんとそこは、昭和39年の東京。しかも兄を失くした“運命の日”だった…。
篠原哲雄