1969年のアテネ。10歳の少年・イリアス(ヨルゴス・カラヤニス)は両親とお兄さんの4人家族。しかし家電の行商をしている父(ステリオス・マイナス)はたまにしか帰ってこない。そのせいで少し家族はぎくしゃくしている。そんなことはお構いなしにパパが大好きなイリアスは無邪気にアポロ11号が月面着陸する時を一緒にテレビで見ようと約束をする。ところが父が突然、交通事故で帰らぬ人となってしまった。死の事実を受け入れることができないイリアスは、アルツハイマーの祖母(デスポ・ディアマンティドゥ)に父になりすまして手紙を書いたり、クラスメートに嘘をついたりしながらひたすら父との再会を信じ続ける。イリアスにママ(イオアンナ・ツィリグーリ)もお兄さん(クリストス・ブヨタス)も心を痛め、気分を変えるべく海辺の家に引っ越した。そしてついに父との約束の月面着陸の日が訪れる――。限りない想像力で愛する者の不在を乗り越えていく少年の心を見つめながら、3世代にわたる家族の喪失と再生を綴る珠玉の作品。
ペニー・パナヨトプル