あることがキッカケで刑務所暮しを経験し、縁あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎。ある日、その店の求人募集の張貼り紙をみて、千太郎にその店で働くことを懇願する一人の老女、徳江が現れる。彼女の勢いに押されるように、半信半疑のままに、翌日からどら焼きの粒あん作りを任せた千太郎だが、彼女が作る粒あんがあまりに美味しく、次第に来客数も増え、店がみるみるうちに繁盛していく。いつも、潰れたどら焼きだけをもらいに通っていた近所の女子中学生・ワカナも次第に徳江と心を通わせていく。ある日、徳江が昔ハンセン病を患っていたことが近所の噂になる。一気に客足が遠のき、千太郎も徳江を辞めさせなければならないこと状況になる。この状況を察した徳江は、潔くその店を去り、それ以来徳江は千太郎やワカナの前に姿を見せることはなかった。徳江は、今どうしているのだろう…。それぞれの想いを抱えて、徳江の足跡を探す千太郎とワカナ。そして、二人が対面したものは…。
河瀬直美