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トップページに戻る若き本木雅弘が禅寺で修行をする周防正行監督の『ファンシィダンス』、最近ではスネオヘアーが悩めるお坊さんを演じた『アブラクサスの祭』や宮藤官九郎の脚本で仏教系男子校が舞台にした連ドラ「ごめんね青春!」など、意外と仏教をテーマにしたエンターテイメント作品は多い。昨年公開され、伊藤淳史が新米坊主に扮した『ボクは坊さん。』はまさにそうした系譜に連なる“坊さん系エンタメ”である。
「仏教やお坊さんについて、よくは知らないけど人生の局面に関わるし、みんな、意外と興味を持ってるのでは?」――。映画の原作者であり、映画の舞台にもなった四国八十八箇所巡り(=お遍路さん)のひとつ栄福寺の住職である白川密成さんはそう語る。
白川さんは高野山での修行後、書店で働いていたが、急逝した祖父の跡を継いで24歳で住職に。そこでの日々をエッセイとして2001年より約7年にわたりネット上の「ほぼ日刊イトイ新聞」にて連載(のちに映画の原作『ボクは坊さん。』(ミシマ社刊)として書籍化)。映画でも主人公の新米住職の仕事ぶりや苦悩がつづられる。
映画化がきっかけで、栄福寺を訪れる人やお遍路を行う若者が増えたと明かす白川さん。映画は、いわゆるお坊さんの“お仕事紹介”的な部分にとどまらず、「人を救う」ためにある宗教に向き合う主人公の苦悩や葛藤なども描かれる。
「いわゆる“お坊さんあるある”から一歩踏み込んで、青春群像として描かれてる。原作を元にセンチメンタルなドラマにも出来るし、ドタバタ劇も作れるし、いろんな作り方ができたと思うけど、あぁ、そういう切り取り方したか! と面白かったです。個人的に溝端淳平さんの『お前は本当にそう思ってるのかよ?』という言葉が胸に刺さりました。普段、いわゆる“ありがたいお話”をする僕らに対する問いかけでもあるし、いまの時代、多くの人の心に響く言葉だと思います」。
もちろん、“あるある”の部分もクスリと笑わせてくれるが、様々な細かい描写は白川さんの実体験?
「着メロが般若心経のお坊さんが出てきますが、僕の携帯に先輩がイタズラして般若心経にして、それがホテルのロビーで鳴ったというのが元ネタです。僕は、いままで仏教系の着信にしたことはないですね。でも最近は、鐘・木魚アプリがあるそうで、画面をタップすると鳴るらしいです。もちろん、法事では使えませんが(笑)、坊さんが会議などをする際、般若心経を唱えてチーンと鳴らすことがあるのですが、そこで使ったり…完全に内輪ウケです(笑)」。
世間における“仏教”や“お坊さん”に対するイメージは確実に変容しており、仏教界もまた確実に変化している。「僕の本自体、時代が時代なら許されなかった。そういう意味で『若いやつらを応援しよう』という意識、このままじゃ立ち行かなくなるという危機感もあると思う」とうなずく。最近では「amazon」による「お坊さん便」も話題に…。仏教界からも賛成・反対どちらの意見も出ているようだが…。
「お坊さんをテーマに賛否があるというのが少し新鮮でしたね。ある僧侶の会の代表は『お布施は対価じゃないからネットでいくらと出せるものではない』と抗議されていて、それは一理ある。でも、坊さんが、仏教がこれから世の中に何をもたらしてしていくのかが問われているという意見もあり、その意見も正論だと思います。世の中も『お金で買えばいい』という感性も確実に増えているし、世間、仏教界どちらも変化している。あれが大きなニュースになること自体、興味深いなと思います」。
白川さんにも連載終了後、大きな変化が訪れた。「ボクは坊さん。」に続く「坊さん、父になる」を出版。タイトル通り、妻帯し父親となった。一見、普通のことに見えて、それは元々の仏教の「妻帯禁止」の戒律に向き合うことを意味している。信念や主張を訴えるのが目的ではない。向き合う過程そのものを見せるというのが白川さんのスタンス。
「結果的に、そういう部分が出てきたという感じです。先輩の僧侶に本を持って行ったら『タイトルからいきなり僧侶の妻帯に正面から触れてる。こんな書き方した坊さんはいままでいなかったんじゃないか』と言われました。そういった部分は僕だって書くのはやはり難しいんです。でも、今回はそれを正面から捉えてみました。うちの妻は尼さんで、結婚式の二次会ではお坊さん達もわりと大騒ぎでした(笑)。でも『この感じもジャパニーズ仏教かもしれない…』と思ったり。そういう誇りや躊躇を含めて描いてます」。
「坊主も悩むかですか? 僕の場合は、案外、普通の人よりあれこれ心揺れてるかも…。ホントはそうじゃいけないんでしょうけど(苦笑)」。実録・坊さんエンタメを楽しんでほしい。
なお、ブルーレイ特典には、白川さんの般若心経を収録!
text:Naoki Kurozu
白方光円、24歳。突然の祖父の死をきっかけに、四国八十八ヶ所霊場、第57番札所・栄福寺の住職になったばかり。この寺で生まれ育ったけれど、住職として足を踏み入れた“坊さんワールド”は想像以上に奥深いものだった!初めて見る坊さん専用グッズや、個性豊かな僧侶との出会いにワクワクしたり、檀家の人たちとの関係に悩んだり。お葬式や結婚式で人々の人生の節目を見守るのはもちろん、地域の“顔”としての役割もお坊さんには必要。職業柄、人の生死に立ち合うことで“生きるとは何か? 死ぬとは何か?”と考えたりもする。坊さんとしての道を歩み始めたばかりの光円に何ができるのか。何が伝えられるのか。光円は試行錯誤を繰り返しながら、人としても成長していく…。
発売日:3月16日(水)
価格:【セル】般若心経 ミニ経本付き、アウターケース仕様
ブルーレイ ¥4,700+税
DVD ¥3,800+税
監督:真壁幸紀
キャスト: 伊藤藤淳史、山本美月、溝端淳平、濱田岳、松田美由紀、イッセー尾形
オフィシャルサイト:http://bosan.jp/
発売・販売元:ポニーキャニオン
© 2015 映画「ボクは坊さん。」製作委員会
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