ハビエル・バルデム インタビュー 憧れの『007』への挑戦「特別な想いがあったよ」

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『007 スカイフォール』 -(C) 2012 Danjaq, LLC, United Artists Corporation,Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.
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  • 『007 スカイフォール』ハビエル・バルデム(Photo:Cliff Watts)/-(C) 2012 CTMG, Inc. All rights reserved.
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とてつもなく強烈な役を演じ、しかもそのキャラクターがハマり役であると、俳優にとっては嬉しさ反面、いつまでもその印象がついて回り、それを乗り越えなければならない、さらなる挑戦を課せられてしまうものだ。スペイン出身の名優ハビエル・バルデムにとっては『ノーカントリー』で演じた殺人鬼アントン・シガーがそれにあたるだろう。あの殺人鬼は見た目も演技も強烈すぎた──そんな彼が『007』シリーズ最新作『007 スカイフォール』で新たに挑む悪役は、ジェームズ・ボンドと“MI6”を脅かすシルヴァ。アントン・シガーとは一味違う悪を映画史に刻んだ。

目指したのは“居心地の悪い”悪役

この手のアクション映画に登場する悪役は、大抵の場合、世界をどうにかしようという野望を抱いている場合が多い。けれど、シルヴァにおいては「とてもパーソナル」だとハビエルは分析する。
「壊れてしまったものを持ったキャラクター、という印象を最初に抱いたんだ。シルヴァがほかの悪役と異なるのは、世界を滅ぼしてやる! とか、壮大な計画を持っているわけではなく、自分のために復讐しようとしていることだね。やろうとしていることはとてもパーソナルで、世界滅亡を企む悪と比べたらものすごく小さいんだよ(笑)。でも、そこが面白いと思ったし、演じ甲斐があるとも思った」と、役への興味を語る。

ボンドと同じく、かつては“M”のもとでトップエージェントとして活躍しいていたシルヴァ。ある事件を機に彼のMへ忠誠心は崩壊、Mへの復讐心へと変わっていく。そんな複雑な一面を持った悪役を演じるにあたって、ハビエルが重きを置いたのは“居心地の悪さ”。サム・メンデス監督との話し合いで出てきた言葉をヒントに生まれたその居心地の悪さとは?
「まず、サムと話し合いをした結果、金髪にしようということになったんだ。というのは、今回のボンドの敵はとにかく居心地が悪い、思わずむずむずしてしまうような、そういう居心地の悪いものにしようということになってね。アグレッシブであっても、怖さであってもいい、どんな居心地の悪さでもいいから、とにかくシルヴァをそういう存在にしたいと思ったんだ」。

確かに、違和感のある金髪、話し方、歩き方、声のトーンに至るまで、言いようのない居心地の悪さを感じる。と同時に、そういう雰囲気をまるで最初から設定されていたかのような悪として、そこに“いる”のが、ハビエルが演技派と言われる所以でもある。
「なにか一つこうしたというのではなく、言動すべてに居心地の悪さが滲み出るように心がけた。シルヴァはどんなレッテルも張ることのできない、自由な存在でもあるんだ。その自由を使ってボンドを非常に居心地の悪いところに追い詰めていくんだよ」。

『007』への憧れ

自由に、リアルに、しかも奇妙さや異質さを合わせ持った絶妙なバランスの悪を心から楽しんで演じたハビエルだが、苦手なこともあったそうで…「実はeメールも苦手なほどコンピュータには弱いんだ」と、いたずらっぽく笑う。そう、今回のシルヴァはコンピュータの天才という設定。「ほんとに苦手なんだけど、そんな自分がコンピュータの天才を演じているというのが面白いだろう(笑)。映画づくりの面白いところは、本当じゃないこともあたかも本当のように信じさせることができることでもあるからね」。

コンピュータという切り口としては、シルヴァだけでなく“Q”の愛称として知られるボンドの武器開発係もITの天才だ。ダニエル・クレイグのボンドでは今回の『スカイフォール』でQは初登場となる。ほかにもボントとMの関係が初めて描かれるなど、さまざまな見どころが詰まっている最新シリーズだが、そもそもハビエルにとって『007』はどんな存在なのだろうか。遡ること35年──。彼がボンドと出会ったのは、11歳の頃。シリーズ11作目『007 ムーンレイカー』だった。それから現在に至るまで、いちボンド・ファンとしてシリーズを楽しんできたハビエル。今回の出演は断る理由など全くなかったはず。しかし、「特別な想いはあったけれど、脚本を読むときはまた別なんだよ」と、プロフェッショナルとしての言葉を残す。
「オファーをもらったときは、『007』の世界に関わることができる! と、ものすごく心躍ったよ。いままで自分が見てきた『007』の映画であったり、その当時の記憶を思い出したりもした。ただ、演じるとなるとまた別物で、ファンであることを全て忘れて俳優として脚本と向かい合わなければならないんだ。自分がファンであることが頭にあると、プレッシャーに押し潰されてしまいそうだからね(笑)。この役は自分自身が面白いと思って演じられるかどうか、とてもシンプルなことだけを考えて脚本を読んだ。今回のシルヴァという役はそれに値する役だった、というのは言うまでもないけれどね」。

“6代目ジェームズボンド”ダニエル・クレイグの魅力

また、引き受けた理由には「キャストの素晴らしさもあった」と続け、“6代目ジェームズ・ボンド”のダニエル・クレイグがどれだけ素晴らしいかを力説する。
「歴代ボンドを演じてきた役者は、それぞれにボンドに個性をもたらしたと思うよ。でなければ、これだけ長くシリーズを続けることはできないからね。僕が一番クールだと思うボンドは、初代ボンドのショーン・コネリー。彼自身があまりにもクールだからボンドもクールだった。一方、ダニエルはファンタスティックでパワフル、しかも複雑さを持った役者だと思う。だからこそ、これまでのボンドになかったような多層構造というのかな、より複雑な一面をもらたすことができたんだと思う。何がすごいって、ボンドにはある程度基本となるスタイルがあるわけだけれど、そのフレームから出ずに個性を出すことはとても難しいもの。でも、規範を踏襲しつつ何でもやってしまうのがダニエルなんだ。そこがすごい! 彼の才能を感じるよ」。

そんなダニエル扮するボンドを追い詰めていくシルヴァを演じたハビエルも、もちろんすごいわけで。これからシーズンを迎える様々な賞レース。映画ファンとしてはハビエルがどう絡んでくるのかも気になるところだが、俳優にとって賞は「最終的なゴールじゃない」と、きっぱり。
「客観的ではない演技を選ぶわけだから、その結果が正しいのかどうかは実際は誰にも分からないものだと思うんだ。たとえば、オリンピックのレースは10人が走って一番最初に着いた人が一番の賞を得るわけだけれど、演技はスポーツと同じようにはいかない。だから、たとえ演技の賞をもらったとしてもどう受け止めていいのかいまだに戸惑ってしまう。とはいっても役者である以上、認知はされたいし、虚栄心もあるし、拍手喝采は浴びたいよ(笑)。でも、賞というゴールだけを目指して仕事をしたら必ず失敗に繋がる。大切なのは、どれだけたくさんの人に映画を観てもらえるか、そして気に入ってもらえるかだからね」。ゴールのない道を歩き、時に新しい道を開拓し、また歩き続ける──そんなハビエル・バルデムの役者人生の途中で生まれた“居心地の悪い”シルヴァという悪役。どれだけ居心地が悪いのか(=素晴らしい演技なのか)、その目で確かめてみて。



特集:『007 スカイフォール』
http://www.cinemacafe.net/feature/skyfall/

© 2012 CTMG, Inc. All rights reserved.
《text:Rie Shintani / Photo:Cliff Watts》

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