『16ブロック』レビュー
ブルース・ウィリスには“予期せぬ”アクシデントが似合う。いやがおうにもトラブルに巻き込まれていくのは『ダイ・ハード』以来、彼の“オハコ”ともいえる役どころかもしれない。しかし、彼も実年齢では中年を通り越して高年にさしかかった。そんな時の流れをまざまざと感じさせたのが今回扮したジャックという刑事役だった。ニューヨークの治安を取り締まるベテラン刑事に扮したブルース・ウィリスからは、アクションスターのオーラは消え、汚れた風貌ながらも渋さを増した個性派俳優の雰囲気がビシビシ伝わってくる。
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証人を護送するというそれだけのストーリーだが、もちろん劇中には大都会を舞台にした期待通りのアクションシーンがある。でもそこにいたのは、これまでのようなやみくもに暴れ回るブルース・ウィリスではなく、警察内部の不正を暴かれたくない同僚との心理戦を巧みに利用し、正面から対峙しようとする“イケてる”ブルース・ウィリスだった。16ブロック、距離にしてたった1キロちょっと。目的地に着きそうで着けないもどかしさ。その短い間に凝縮された“予期せぬ”緊張感がなんとも心地よかった。