気になるアノ美女vol.1 『パリ、恋人たちの2日間』で見るアノ美女の成長

役者が監督業に進出するのはよくあることですが、フランス女優がアメリカで製作、脚本、監督、編集、音楽、出演までやってしまうというのは前代未聞。しかも、その作品が“ウディ・アレン作品を思わせる”と絶賛されれば、これは驚くべき偉業としか言いようがありません。それをやってのけた人、それはジュリー・デルピー。

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『パリ、恋人たちの2日間』
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役者が監督業に進出するのはよくあることですが、フランス女優がアメリカで製作、脚本、監督、編集、音楽、出演までやってしまうというのは前代未聞。しかも、その作品が“ウディ・アレン作品を思わせる”と絶賛されれば、これは驚くべき偉業としか言いようがありません。それをやってのけた人、それはジュリー・デルピー。

14歳でジャン=リュック・ゴダールに見出され、『ゴダールの探偵』で銀幕デビュー。幸運なスタートを切った彼女は、フランス映画界が誇る美少女として、着実にキャリアを重ねました。レオス・カラックスの『汚れた血』、クシシュトフ・キエシロフスキーの『トリコロール/白の愛』。「気が合う」と彼女が語るゴダールとは、『ゴダールのリア王』『ゴダールの映画史』など、何度も仕事をしてきています。

そんな彼女が先日来日した際に、語ってくれたところによると、スクリーン・デビューしてまもなく、監督業に興味を持ったのだそう。1990年には、大好きなスコセッシ、スパイク・リーらを輩出したニューヨーク大学に入学し、映画を専攻。以来、短編、試験的な映画などを撮っていました。ということで、本人曰く、本格的な映画監督デビューは、今月公開の『パリ、恋人たちの2日間』とのこと。

ニューヨーク在住のフランス人女性とアメリカ人男性のカップルが、パリで体験する騒動を、カルチャーギャップ、ジェンダーギャップなどを交えて、オモシロ切なく描くお洒落なコメディ。軽妙でナチュラルだけれど良く練られた会話劇、実の両親(ともに俳優)ほか気心の知れた仲間というキャスト(脚本執筆時から想定した俳優たちを起用)、美しい夏のパリなどを魅力的に織り重ねて、笑いと頷きの絶えないリアルな30代の姿を映し出していきます。

フランス映画に出ていた頃は、デリケートで神経質そうなイメージが強かったけれど、目の前の彼女は明るくて、コロコロとよく笑う気さくな美女。スノッブな感じなど一切ありません。すでにトータルでアメリカ在住15年にもなるそう。水が合っているのでしょうか。

私がこれまでインタビューしたフランス女優は一様に「アメリカでは歳を重ねた女優に、魅力的な役は与えられないのよ」と不満げだったけれど、ジュリーは違います。文句を言い、不満を並べるのではなく、着実に自分の道を進み、自ら魅力的な作品、魅力的な役を生み出しさえしている。ブーたれる暇があったら、一歩でも前に進むという感じなのでしょうか。こういう人を見ていると、才能だけでなく知性、クリエイターとしての信念、映画愛などをひしひしと感じるのです。

確かに、ゴダールに愛されて映画界入りした彼女は、普通の監督志望者よりも恵まれていたこともあったでしょう。でも、劇場公開作品を完成させたのは、彼女が監督を志してから20年以上が経ってのことだという事実を考えると、決してこれまでの道のりは平坦ではなかったはず。有名な女優であることが、かえって邪魔になったこともあったかもしれません。そんなことを考えていると、素晴らしい出来映えの作品にだけでなく、ジュリー自身の頑張りにも拍手を送りたくなるのです。

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すでに、次回作『The Countess』(原題)の撮影を終えたばかり。『パリ、恋人たちの2日間』とは打って変わり、美を追求する女の執念を描いた“悪女モノ”。ブラム・ストーカーやグリム兄弟にも影響を与えたシリアスな物語だそうですが、笑える要素も盛り込んだのだとか。曰く「だって、笑いの要素を入れないなんて我慢できないんだもの!」

シンガーソングライターとしても活動している彼女。いまは監督業が忙しくなってしまったようだけれど、もしまたツアーが行われるようならば、ぜひ一度、コンサートに足を運んで、その魅力的な人柄に直に触れてみて。

《text:June Makiguchi》

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