「老夫婦の愛の絆を描きたかった」サラ・ポーリー監督『アウェイ・フロム・ハー』

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『アウェイ・フロム・ハー君を想う』サラ・ポーリー photo:Yoshio Kumagai
  • 『アウェイ・フロム・ハー君を想う』サラ・ポーリー photo:Yoshio Kumagai
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『スウィート ヒアアフター』や『死ぬまでにしたい10のこと』、『あなたになら言える秘密のこと』など、その聡明な美しさと高い演技力で私たちを魅了するサラ・ポーリー。芸能一家に生まれ、4歳から俳優として活動を始めるも、若くして社会活動に従事するなど、いわゆるハリウッド・セレブとは違う経歴を持つサラが、ジュリー・クリスティ、ゴードン・ヴィンセント、オリンピア・デュカキスら名優を迎えて『アウェイ・フロム・ハー君を想う』で長編映画初監督を果たした。

原作はアリス・マンローの短編「クマが山を越えてきた」。グラントは、44年間連れ添った妻・フィオーナがアルツハイマーと診断され、嫌々ながらも老人介護施設へフィオーナを預けることを決心する。毎日のように施設を訪れるグラントだが、フィオーナは次第にグラントのことを忘れていってしまう…。29歳という若さで老夫婦を主人公にした映画を監督したサラだが、彼女にとって重要なのは年齢ではなかった。
「映画で描かれる恋愛や愛の形というのは、その多くが始まりを描いているんです。でも私はグラントとフィオーナのように何年も連れ添って、お互い相手に持っていた幻想もなくなり、裏切りもあったかもしれない、それでも共に愛し合う絆がある2人の愛に興味をそそられました」。

“アルツハイマー”という病気も大きなテーマだ。
「でも、そうした病気よりも、ラブストーリーとしての物語に惹かれました。人の記憶というものが、その人の人生においてどんな役割を果たすのかに興味があったんだと思います。それに、私の祖母が数年間、アルツハイマーではないんですが、介護施設で過ごしたことがあって、何度もお見舞いに行きました。その介護施設の環境にも興味があって、それを映画で捉えたいと思ったんです」。

サラは本作の脚色も担当し、今年のアカデミー賞で脚色賞にノミネートされている。
「アルツハイマーという病気を知るために、関連書籍をかなり読みましたし、お医者さまやご家族に患者さんがいらっしゃる方にも話を聞いたりしました。いろいろな老人介護施設に出向いて、家族向けのツアーみたいなものに参加したり。ただ、最初にこのストーリーを読んだのが21歳のときで、それから5年間くらい構想を温めていたんです。考えて温めて、ちょっと忘れてまた考えてという感じで、ゆっくりと頭の中で映画が出来ていきました。実際に書く作業は3か月くらいでした。今回は脚本を当て書きしたんです。だから、その方々に出演してほしかった。そこが一番大変でした。特に(フィオーナ役の)ジュリーは口説き落とすのに1年近くかかりましたよ!」

俳優業を続けながら監督業に進出する人は多くいるし、中には監督と出演を兼ねる場合も少なくない。しかしサラは「ノー!」と笑う。
「演技をする喜びと監督する喜びは自分にとっては全く別のものだから。私にとって、演技をするというのは、監督のビジョンに溺れるくらい、ほかのキャラクターになること。でも、監督をすることは圧倒的な責任を負って、たくさんの人たちと密なコラボレーションをすることが喜びなんです。この二つを両立させるのは矛盾することなので、出演については、全く考えませんでした」。

そうしてサラが監督業に没頭した本作は、アカデミー賞脚色賞、主演女優賞(ジュリー・クリスティ)にノミネートされたほか、多くの映画賞から高い評価を受け、“サラ・ポーリー監督”としても今後が期待される。
「でも監督としてはまだまだこれから。私にとってもスリリングな仕事なんです。だから女優業と監督業のバランスを取りながらやっていきたいと思っています。去年は演技に専念して、3本の映画に出演したから、そろそろ1年くらい監督する方に力を費やしたいと思っています」。

次回作については、「3つくらい考えているストーリーがあるんだけど、どれから手を付けようか悩んでいるところ」だそう。女優として、監督として、今後のサラ・ポーリーに注目したい。

《photo:Yoshio Kumagai》

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