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「私は決してヒトラーを理解できない」ヒトラーを喜劇で描く『わが教え子、ヒトラー』

悪名高き独裁者、アドルフ・ヒトラー。60余年経ったいまも、“ヒトラー”を題材にした映画は多く制作され、本国ドイツのみならず世界中で話題になり、そしてヒットを記録する。『わが教え子、ヒトラー』は、そのヒトラーの人となりを、さらに掘り下げ、これまでとは違った視点で描いている。“演説の天才”と呼ばれるヒトラーに演技指導をした人物がいたという事実に基づき、その史実をベースにしたフィクション、『わが教え子、ヒトラー』のダニー・レヴィ監督に話を聞いた。

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『わが教え子、ヒトラー』 ダニー・レヴィ監督
『わが教え子、ヒトラー』 ダニー・レヴィ監督
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悪名高き独裁者、アドルフ・ヒトラー。60余年経ったいまも、“ヒトラー”を題材にした映画は多く制作され、本国ドイツのみならず世界中で話題になり、そしてヒットを記録する。『わが教え子、ヒトラー』は、そのヒトラーの人となりを、さらに掘り下げ、これまでとは違った視点で描いている。“演説の天才”と呼ばれるヒトラーに演技指導をした人物がいたという事実に基づき、その史実をベースにしたフィクション、『わが教え子、ヒトラー』のダニー・レヴィ監督に話を聞いた。

──本当に数多くのヒトラー映画が作られている中、この題材を選んだのにはどんな理由があるのでしょうか?

このテーマは私にとって大変重要なものなんです。そしてドイツにとって、常についてまわる影のようなものでもありますね。ドイツ人の血の中に生きているんです。ドイツ人の心、心理状態がどうだったのかを、ユダヤ人である私の視点から作ろうと思ったんです。また、この時代の映画を作るということは私にとって個人的にも重要なことでした。私の家族はナチの時代にスイスに亡命しています。母は幼少期にヒトラーの時代を経験しています。私自身の精神セラピーという意味でも、この映画を作ろうと思ったんです。

──多くのヒトラー映画は悲劇的な要素を含んでいます。この作品は確かに悲劇的ではありますが、喜劇的な要素も多いですね。

このテーマを描くために手段はいくつかあったと思いますが、私自身は喜劇が唯一の手段だったんです。コメディであれば、ただ単に哀しみに埋没することなく、このテーマに対して一定の距離を保ち、皮肉を持って描くことが出来ます。脚本を書いてみて気がついたことは、この作品はコメディのみならず、悲劇も含まれているということ。普通であれば、ふたつの異なる映画が出来上がるのかもしれませんが、喜劇と悲劇を融合させてひとつの映画を作ったんです。そもそも悲劇と喜劇は姉妹関係にあると思っています。映画というものが悲劇、そしてまた喜劇の要素を持つというのは私にとっては自然のことであり、普通のことだと思います。

──ポール・デヴリエンという実在の人物の手記を読んでインスピレーションを受けたそうですね。このデヴリエンという人物こそ、ヒトラーに演技指導をした人だそうですが、どこまで史実に基づいているのでしょうか?

まず言いたいのは、この映画はデヴリエンを題材にしたものではないということです。手記では1932年ですが、映画では1944年を舞台にしています。手記からはインスピレーション、そして刺激を受けただけだったんです。正直に言って、私はポール・デヴリエンという人物には興味がありませんでした。彼を描くのではなく、ヒトラーに先生がいたという史実とフィクションを組み合わせたのです。映画に登場するヒトラーの先生・グリュンバウムはユダヤ人(デヴリエンはドイツ人)で、フィクションの人物です。いろいろな史実に基づいてインスピレーションをもらい、それを基にして自分の宇宙を作っていったんです。この作業はすごく楽しかったですよ。自分の思うようにやったんですからね(笑)。

──本国でも大ヒットしたそうですね。おめでとうございます。

ヒトラーを喜劇で描いたことに、多くの批判がありました。スキャンダルになることは予想していましたが、議論の内容が熟していないことに驚きました。私は、“どういう喜劇になるのか?”という議論を想像していたんですが、問題は“喜劇で描いていいのか?”ということでした。公開時には、なんと“第三帝国を笑っていいのか?”というアンケート調査までされ、60%の国民がNOと答えたのです。これはショックでしたね。

「ドイツ国民は、私がヒトラーを人間的に描いたことで、ヒトラーを許していると解釈しているようですが、私は決してヒトラーを許すことはありません。そして、ヒトラーを理解することもできませんでした」と熱く語る監督。しかし劇中でのグリュンバウムの葛藤と同じような気持ちが監督にあるのかもしれない。
《シネマカフェ編集部》

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