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『ウィンターズ・ボーン』D・グラニック監督「“闘う人間”の力の源を描きたかった」

鬱蒼とした森林が続く、アメリカ・ミズーリ州の山村を舞台に、家族を守るため厳しい環境の中で奮闘する一人の少女の“生”を力強く描き、本年度のオスカーに名を連ねた傑作『ウィンターズ・ボーン』。女性ならではの繊細さと力強さでもって、少女の現実を見事にとらえたデブラ・グラニック監督に話を聞いた。本作を通して彼女が描きたかったものとは? また、主演を見事に遂げたジェニファー・ローレンスに、彼女は何を託したのか?

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『ウィンターズ・ボーン』 -(C) 2010 Winter's Bone Productions LLC. All Rights Reserved.
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鬱蒼とした森林が続く、アメリカ・ミズーリ州の山村を舞台に、家族を守るため厳しい環境の中で奮闘する一人の少女の“生”を力強く描き、本年度のオスカーに名を連ねた傑作『ウィンターズ・ボーン』。女性ならではの繊細さと力強さでもって、少女の現実を見事にとらえたデブラ・グラニック監督に話を聞いた。本作を通して彼女が描きたかったものとは? また、主演を見事に遂げたジェニファー・ローレンスに、彼女は何を託したのか?

便利なものに囲まれた現代日本での生活からはとても想像しがたい、17歳の少女・リーが置かれた苛酷すぎる生活環境と、それでも生き抜く彼女の不屈の魂が観る者に希望と共に衝撃を与える本作。原作となったD・ウッドレルの小説との衝撃の出会いを監督はこうふり返る。
「幸運にも私は本を読む機会をもらったのですが、3ページ目から引きこまれてしまいました。その物語がとても気に入って、『この少女(リー)がどうなってしまうんだろう』ということに興味をひかれました。どうしてこんなに力強いんだろう、と。どうして負けそうになったり、ギブアップしそうになりながらも頑張れるのだろうかという、彼女自身の魅力に惹かれたわけです。私は“ファイター=闘う人間”、何らかの正義に向かって闘う人たち、またその力がどこから来るのかというところに大きな魅力を感じるわけです。そのまま一気に本を読んで、製作のパートナーに『今夜中に読んでほしい』とお願いしたら、彼女もとても強い反応を覚えていて。すぐにこの映画を撮りたいということを打診しました」。

そこから、いままでのアメリカ映画では描かれていない場所を描きたいという思いが募り、すぐにミズーリ州に飛び、そこに実在する女性たちを始め、家や学校など徹底したリサーチを行ったという監督。何よりも「その場所で実際に見たものをどう感じるか」という事を大切にした。そして、それは主人公・リーを演じたジェニファー・ローレンスとの共同作業においてもブレなかった。
「自分が彼女に何かを伝えるよりも、実際に同じ場所で時間を過ごしてもらい、彼女自身が想像力を駆使して、理解して、どう感じたかということが一番大事だと思いました。だから、彼女はミズーリ州の隣のケンタッキー出身なのですが、故郷に帰っておいで、と。美しい方言がある場所に戻ることを提案しました。そして、実際に物語が繰り広げられる場所に来て、いろんなことを学んでほしいということも伝えました。ジェニファー自身、興味を持ってこのキャラクターを気に入ってくれたので、『じゃあ自分ならどうするのか? 小さな家を脅かされる状況に陥った場合どうするのか? そのリスクにどう立ち向かうのか?』ということを彼女自身が感じていたことがとても大事だったわけです」。

不本意な生活環境や人間関係というものは誰しも生きていく中で少なからず経験するものだが、本作では17歳のリーがそことどう折り合いをつけ、大人の世界へと踏み出していくのかが観る者に共感を与える。奇しくもリーと同じ17歳という年齢は、本作以外にもこれまでに様々な映画で題材として描かれてきたが、監督自身、この「17歳」という年齢について思うことはあるのだろうか?
「15歳から16歳、17歳…における人生というのは、とても生々しいものだと思うんです。それは、極めて力を必要とする世代でもあって、自分が教えられてきたものが通じなかったりするような環境に追い込まれたりするものなんです。正しいことをするべきだと教えられたにも関わらず、多くの大人がそれを出来ていない、していないという状況に直面するわけです。それに対して、今度は反応しなければいけないわけですが、同時に『助けたい』という気持ちも残るのです。それは映画の環境においても同じで、17歳において(薬物中毒の)叔父や父親、母親ら大人たちを見たときに、そういう気持ちが生まれる。しかし、自分で問題が解決できないということも分からない年齢でもある。分からないことに対して立ち向かっていかなければならない、何かをやろうとする気持ちを考えると、本当に激しい体験をする時間だと思います」。

映画づくりを学んできた若き日々から、どの国の映画でも「人生を生きるために何が必要か。幸せを得るためには何をすればいいのかとか、そういう日常から来るもの」を描く映画に強い影響を受けてきたという監督。「普通の生活を描く」ということをテーマに掲げる彼女に、今後の映画づくりについて聞いてみた。
「1年ほど作業しているドキュメンタリーが一つあって、もう一つは脚本段階で、もうちょっと強くしたいという気持ちで作っているものがあります。あと、ボルティモアを舞台にした映画もあります。元々は産業都市だったのですが、いまのアメリカにおいてはあまり魅力的でないと言われているような都市なんですけど、そういった場所においてもおもしろい物語があるということでそれを描いていきたい、自分が伝えていきたいと思っています」。

特集『ウィンターズ・ボーン』
http://www.cinemacafe.net/ad/wintersbone/
《シネマカフェ編集部》

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