橋本愛インタビュー 変化する17歳は「うまくいかないのが楽しい」

17歳の少女はめまぐるしく表情を変えていく。

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橋本愛『くちづけ』/Photo:Naoki Kurozu
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17歳の少女はめまぐるしく表情を変えていく。

朝8時にTVをつければNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で、ヒロインとは対照的なアイドル志望の美少女を演じ、お茶の間でも人気沸騰中の彼女の姿を見ることができる。一方で、昨年までは「血糊が似合う顔なので…(苦笑)」と語るように、貞子役を始め数々のホラー・サスペンスに出演し、触れれば切れるようなミステリアスな美しさを見せつけたほか、『桐島、部活やめるってよ』『ツナグ』ではいまどきの女子高生を体現。特に『ツナグ』では感情のリミッターを振り切ったような慟哭シーンで観客の心を奪った。

作品ごとに観る者に強烈な印象を植え付けながらも、そのイメージに落ち着くことなく変化を続ける橋本愛。そんな彼女がまた新たな一面を見せてくれるのがまもなく公開となる映画『くちづけ』である。

本作にも出演している宅間孝行が自ら率いる劇団でかつて上演し、涙なしでは見られないと話題を呼んだ舞台に堤幸彦監督が惚れ込み映画化。知的障害を抱える主人公(貫地谷しほり)とその父親(竹中直人)の深い愛情の物語が彼らの哀しい選択と共に綴られる。

「商業映画でオブラートに包んでしまいそうなところを露呈させた脚本で、宅間さんの檻をぶち破るような精神が『好きだな』と思いました。叩かれにくいものを出せばダメージは少ないけど、やっぱり大胆に出さなきゃ伝えたいことは伝わらないから」と橋本さんは物語が問いかけるメッセージに共鳴した。

彼女が演じたのは、知的障害者たちが暮らす自立支援ホーム「ひまわり荘」を運営する医師・国村の娘・はるか。幼い頃より住人たちと共に生活してきたため彼らへの偏見は一切なく、一緒に笑い、泣き、そして時に厳しく叱り飛ばす。橋本さんが演じる上で何より重要視したのは、障害者たちの中でごく普通の女子高生として生活するはるかの“立ち位置”だった。

「はるかがひまわり荘、この物語にいる意味は何なのか? 単に元気で明るい女の子ではなく、彼女のうーやん(宅間さん)たち障害者との接し方はどういう形であるべきなのか? 純粋で彼らへの偏見がなくて…というのはもちろんそうなんですが、時に母親や姉のようであったり、そうかと思えば彼らと一緒に子どものようであったり。シーンごとに相手との関係性というのを意識してました」。

「涙が止まらない!」という感想がクローズアップされがちの本作だが、涙と同じかそれ以上に笑いが散りばめられた作品でもある。個性的なひまわり荘の住人たちが引き起こす様々な事件がクスリとではなく、ドカンと笑いを誘うことは必至! この笑いの深さが結末へと繋がる悲しみややるせなさをより一層、浮き彫りにする。

そんな笑いのシーンにおける橋本さんの貢献度は半端ではない。うーやんがボケるたびに絶妙のタイミングと勢いでツッコみ、26歳も年上の宅間さんの頭を驚くほどの強さでビシバシとどついていく。コメディにおける魅力を見事に開花させたように思えるが…。

「そう言っていただけるとすごく嬉しいんですが、いまだにコメディは苦手なんですよね(苦笑)。今回の笑いのシーンに関しては、はるかは常に本気なんです。真剣に怒ってどついてる。だから私自身、ツッコミのタイミングとかどうやったら面白いか? というのを意識することなく愛情を持って本気でやってました。多分、そのスタンスがよかったんだと思います。笑わそうとするのではなく、後から笑いがついて来たというのは嬉しいです」。

「あまちゃん」でもこれぞ宮藤官九郎作品! というべき笑いが随所に見られるが、本人曰く「苦戦中です…」とのこと。

「脚本を読むと『これは絶対面白い!』って笑っちゃうんですが、全然自分のものにならないんです(苦笑)。共演者のみなさんが凄すぎて…見ている側がいいなぁって思いつつ…。やっぱり意識したらできないし、かと言って無意識に天然でできるほどのセンスもないので、後は自分を捨てて役になりきるしかないなって感じでやってます」。

笑いに加え、『くちづけ』でも橋本さんは『ツナグ』を彷彿とさせるような号泣する姿を披露している。2時間の映画で描かれるのは、ひまわり荘におけるほんの一時期の時間だが、泣きじゃくる橋本さんの姿は、背後に存在する彼女と住人たちの長きにわたる時間、様々な思い出をしっかりと感じさせる。だがこのシーンに関しても橋本さんは「全然、うまくいかなくて…」と反省しきり。

「号泣なのに、うまく涙が出てこなくて何度もリテイクを重ねました。途中で『目薬使う?』って言われて、素直に使えばいいのに『はい』と言えずに『もう1回だけやらせてください!』って繰り返して。終わってから監督に慰められて涙が出そうになりましたね(笑)」。

『ツナグ』の号泣シーンで初めて“自分がゼロになる”という感覚を知った」と語る橋本さん。その感覚を今回の現場では「見失ってしまった」とも。

『ツナグ』でできたことで、恐怖がなくなったというか…自信と言えなくもないんですが、これまでみたいに『できる、できる。大丈夫!』って自分に無理やり言い聞かせなくても、やれるようになってきてたんですね。だから今回の号泣シーンも『感情を込めて演じればやれる!』って思ってた。そしたら見事にできなくて(苦笑)。でもいまになって考えると、できなくてよかったなと。『ツナグ』で自分が“無”になる瞬間を感じられたことに意味があって、今回、それができなくなったことにも意味があると思う。『こなしたくない』という気持ちが強いので、うまくいかないのが楽しいですよ」。

最後にもう一つ。インタビューや舞台挨拶で彼女が口にする言葉の一つ一つは、17歳とは思えない独特のユーモアと鋭さをもって人々の心に染み込んでくる。「新人賞」を授賞したある表彰式では、これまでの自身について「活躍しているフリをしてた」と言ってのけ、「(去年)やっと子宮から出てきた、まだ生まれて一年も経ってない赤ん坊です」と語った。この日のインタビューでもセットが与えた影響の大きさについて語る際に、こちらの「現場の空気感」という言葉に対し「空気感じゃなくて空気そのもの。撮影所の空気じゃなくてひまわり荘の酸素がそこにあって、呼吸できたんです」と鋭い言語感覚の一端を垣間見せた。

「何でしょうね…(笑)? スルッと出てきたものを周りが面白がっていて、『不思議だな』と思うことは時々あります。授賞式のときは、本当に昨年、私を女優として産んでくれた方々がいて、そのときの苦しさや、やっと出てこられたという思いを含めて感謝の気持ちを伝えたいって思ったらああなりました。伝えたい感情が自分の中にあって、それをどうしたら一番伝わるのかって考えて、考えて…ポロっと出てくるような感じです。言葉って怖いし厄介だけど、でもやっぱり表現者として思いを伝えたいという意思は強く持ってます」。

本作に「あまちゃん」、さらに続く様々な作品を経て1年後、数年後、彼女は自らの現状をどんな言葉で表現してくれるだろう? 楽しみに待ちたい。
《photo / text:Naoki Kurozu》

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