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【インタビュー】西島秀俊、『MOZU』シリーズを通して得たもの

俳優たちの苛烈なアクションと演技バトル、そして謎が謎を呼ぶ展開で、テレビドラマの常識を超えてきた『MOZU』。その最終章『劇場版MOZU』がついに公開になる。壮大な物語に見合う大きさのスクリーン・サイズを得て、

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『劇場版MOZU』西島秀俊/photo:Nahoko Suzuki
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  • 西島秀俊、フィリピン・マニラでの海外ロケを敢行 (C) 2015劇場版「MOZU」製作委員会 (C)逢坂剛/集英社
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  • 西島秀俊、フィリピン・マニラでの海外ロケを敢行(C) 2015劇場版「MOZU」製作委員会 (C)逢坂剛/集英社
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俳優たちの苛烈なアクションと演技バトル、そして謎が謎を呼ぶ展開で、テレビドラマの常識を超えてきた「MOZU」。その最終章『劇場版MOZU』がついに公開になる。壮大な物語に見合う大きさのスクリーン・サイズを得て、さらにスケールとスピード感を上げた作品について、ドラマ・シリーズから主人公の公安警察官・倉木を演じ続けてきた西島秀俊に話を聞いた。

撮影に入って、ドラマとの違いを最も感じたのは撮影ペースだったという。「テレビシリーズの時はものすごいスピードで撮影していました。監督が1人、編集も1人でやられているので。8か月ぐらい撮っていましたけど、普通の連ドラよりもずっと速いスピードでしたね。それが今回は、ワンカットずつに時間をかけられるようになった。撮影の江崎(朋生)さんもカメラポジションを探れるようになって。ドラマ撮影時の江崎さんは、もう絶対に迷わないって決めたらしいです。迷う分だけ撮れなくなるから」。

主な舞台となる架空の国「ペナム」のシーンでもあるフィリピン・ロケについては「すごかった。本当に危なかったです」と、まずひと言。「フィリピンのスタッフには指示が日本語から英語、タガログ語で伝わるし、みんな性格も違うんで、どうなるか分からない雰囲気がありました。『俳優とカメラが乗っているから、ぶつけないで』と言っても、本番で興奮してバンバンぶつかったり。『いい画は撮れるんですけど』と監督も言っていましたけど、あと2回続いたら誰か死ぬな、と思うくらいでした」。

通常は味わえない途方もない緊張感と刺激に、その後日本に戻ってからの撮影を物足りなく感じたほどだという。「俳優自身にやらせてくれる現場って、もちろん僕も自己責任だと思ってますけど、何かあった場合はプロデューサーや監督が責任を取ると言ってくれるから、やれるわけで、それはありがたいです。もっときついアクションを僕はやりたい。飛行機にぶら下がったりしたいです(笑)。だから、自分でやらせてくれる現場に本当に感謝しています」。

我が身の大切さを忘れたように目的へ突進する。これは演じた倉木にも通じるものだ。「倉木という男は、奥さんが死んだ時点で頭の中では1回死んでいるんですね。あとは自分の娘の死、妻の死の謎を解くためだけに生きていて、謎が解けたら死ぬだろうという人物です。だから、それを見抜いた闇の勢力の人たちは『おまえはこっち側の人間だ』という。香川照之さんが演じる大杉と、真木よう子さん演じる明星という2人が何とか彼を、普通の生活を送る人間というものにつなぎとめようとしていて。倉木は、奥さんと娘の魂みたいなものを追いかければ追いかけるほど、ダークサイドに近づいていきます。結局彼はどっちを選んだのか、きっとラストのあるシーンに表れているんじゃないかなと思います」。

サスペンスに満ちたストーリーはもちろん、映像作品としての『MOZU』の面白さは、観客に見せたい画が明確であり、それを目指して俳優たちが演技で暴れ回るところだ。「すごい画があるという安心感というか。どんな演技をしても、おかしなことになったりしない画の強さがあると分かっているというのはありますね。だから、フィクションの度合いをどれだけ高く設定しても無理がない。多分、吉田鋼太郎さんのせいだと思うんですけど(笑)。ドラマで「してないもん!」ってベッドから起き上がったときに『あ、いいんだ』と、みんな思ったのか。台本をどう読んでもそんなふうに読めないような役作りを、みんなが想像力をこんなに膨らませて現場に来て。それは『MOZU』の本当に大きな魅力です。悪役がすごく輝いて、それぞれの役者さんたちが本当にほかでは見たことがないような演技をしている。現場でびっくりすることが多かったです。あれは相乗効果なんでしょうね。『こいつ、こうきたか。負けられない』みたいな。僕は大体総当たり戦でしたけど、すごく楽しそうに皆さん暴れて帰っていきましたね(笑)」。

映画の見どころの1つは、最後の黒幕「ダルマ」役でビートたけしが出演していること。西島さんは2002年、北野武監督の『Dolls』に主演して以来、久々の顔合わせとなった。「初めてなんですよ。“北野武”監督にはお会いしたことはありますが、“ビートたけし”さんにお会いするのは初めてで。監督としてもちろん尊敬していますけど、俳優としても本当に規格外の、日本の俳優の範囲に収まらないような演技をされる方です。ちょっと参考にできないくらい、本当にあの稀有な人生を歩んでいる人の演技なので」と初共演の感想を語る。「すごく勉強にもなりました。自分はもともとどうなりたかったのか。それをもう1回、目の前に突きつけられました。たけしさんは実際に“ダルマ”と同じくらい僕にとっては謎な存在で、自分にとっての命題みたいなものをポーンと投げかけてくださる。それは観客として観ているときもそうだったし、実際お会いしてお仕事しても、やっぱりそういう存在ですね」。たけしさんが出演しなければ、「物語の背景にあって、描けない最大の謎であるダルマが前面に出てくることはなかったでしょうね」と西島さん。「たけしさんが参加してくださったのは『MOZU』のチームにとって、信じられないような幸運です」。

大きな謎の正体にたどり着き、ついに完結する『MOZU』。倉木を演じきり、この作品で得たものは? 「本当にいろんなものを得ています。自分のやる気が空回りしているのを、抑えなきゃいけない現場もありますが、今回は『俺はここまで作品に身を捧げられる』とスタッフと勝負するみたいな(笑)。そんな現場はなかなかないです。役に没頭する方向であれば何をやってもいい。だから悪役の人たちも、あり得ないぐらいの演技をしているわけで。『やっていいんだ』と思えたのはありがたいですね。僕が幸運なのは、その後もそういう現場がまた続いていることです。映画だけじゃなくドラマでもCMでも本気でやれる現場が続いている。もしかしたら、きっかけは『MOZU』なのかなと思っています」。

のめり込む現場というと、思い出すのは2011年の主演作『CUT』だ。イラン出身のアミール・ナデリ監督のもと、肉体と精神を極限まで追い込む役を演じた。「そうですね。アミール・ナデリとの出会いは本当に大きくて。『役を作るためのエベレストに登った俳優たちは何人かいる』と。『おまえはおまえのやり方で登ればいいけど、どうやって登ったかを参考にするのは悪いことじゃないから、演技が素晴らしかったと思う映画をもう1回見直して、彼らがどんな作業をしたのか、ルートを調べろと言われて。それを実行して、1回整理し直したというか。思いつくことは全部やろうという姿勢で、ここまで来たというのはありますね。ただ、たけしさんには『崩せ』と言われていて(笑)。羽住さんには『そのままもっと行け』と言われるので、どうしよう』と困ったように笑う。「わかんないですけどね。でも両方できたらいいな、と思います。崩しつつ構築する…って、よくわかんないですけど(笑)」。
《text:Yuki Tominaga/photo:Nahoko Suzuki》

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