【シネマモード】『最高の花婿』の監督が語る、愛する人と幸せになる大切さ

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『最高の花婿』フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督(C)JiroNakajima
  • 『最高の花婿』フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督(C)JiroNakajima
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  • 『最高の花婿』 - (C) 2013 LES FILMS DU 24 - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - TF1 FILMS PRODUCTION
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本国フランスで、5人に1人が観たという大ヒット映画『最高の花婿』。フランスのロワール地方に暮らす、典型的なブルジョワ階級のヴェルヌイユ夫妻は、3人の娘たちがアラブ系、ユダヤ系、中国系の移民2世と結婚し、ちょっとした異文化摩擦に直面していて混乱中。末娘くらいはカトリック教徒と結婚して欲しいと望みを託していたものの、連れてきた相手は…。

タブーぎりぎりの人種&異文化ネタ、そして笑いと涙を盛り込んで描かれるのは、いま、混迷を深める世界が知りたい、全人類が平和的に共存するための大きなヒント。ここには、違いを知り、尊重することで、人生が喜びに満ちていく様がコメディタッチで描かれているのです。久々に大笑いした本作の秘密を探ろうと、来日したフィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督を直撃してきました。

本作のきっかけとなったのは、あるフランスの統計を知ったことだったと言います。
「僕が見た統計資料によると、フランスは人種間混合結婚で世界一だというんだ。別の調査資料では、20%近くが異なった民族・人種・宗教間での結婚という数字が出ている。ほかのヨーロッパ諸国では、わずか3%に過ぎないというんだ」

では、この作品はフランス社会の縮図なのでしょうか。
「喜劇だから誇張したところはある。ただ、夫婦は地方のブルジョワ保守主義者たちの典型だ。でも、花婿たちは移民たちの代表でもない。社会的には成功しているからね。今回は、ブルジョワ家庭出身の娘たちと移民二世の息子たちが結婚するストーリーなので、社会的な階層もそれほど離れていない者たちを描くことになったんだ。ひょっとすると、階層が違えばもっと難しい問題が出てくるかもしれない。そもそも、フランス映画でイスラム、ユダヤ、中華系の移民コミュニティが肯定的に描かれることはあまりない。だから、僕が肯定的に描いて行こうと思ったんだよ」

劇中には、婿たちが互いの文化をからかい合い喧嘩になるというシーンも。タブーぎりぎりの表現が多いものの、人々がなかなか口にできない本音を代弁しているようで、かえって誠実な作品という印象を抱きます。ただ、制作側としては、どこまで描いていいものか、判断は難しかったはず。
「確かに、シナリオを書いている段階から、これはタブーなのかなと考えるシーンもあったんだ。最初はおそるおそる卵の上を歩く様な感じだったな。ただ、共同脚本家とは、この段階で自己検閲してしまったら映画は面白くならないだろうと話したんだ。根底に善意があり、キャラクターが魅力的で、役者におかしみがあれば、きっと上手くいくはずだと一種の賭けに出た。すると、ふたを開けてみたら大成功というわけだよ」

監督の意図したところを、観客はしっかり汲み取ったというわけです。
「白人の知識階級から、ちょっとクレームがあったくらいかな(笑)。移民のコミュニティからのクレームはなかった。伝えようとしているメッセージそのものはポジティブだからね」

白人の知識階級からあったクレームとは?
「保守層からは、まるで人種を混成させることがすべていいかのように描いていて短絡的すぎる、左派からは差別的だと言われたよ。それぞれ気に入らないところがあったんだろうけど、少数派だね。聞く耳を持たない人たちに特に反論はしないよ。大方のフランス人たちは、きちんとメッセージを受け取ってくれた。嬉しいよ」

4人の婿には、フランス人でありながら、文化背景が違う俳優たちが集まりましたが、撮影中の雰囲気はどうだったのでしょう。
「花婿役には、初めて仕事を一緒にする俳優ばかりがキャスティングされた。でも、タブーぎりぎりのちょっと差別的な発言を交わす仲間として、あっという間に共犯者意識を共有することができたんだ。これはすごい驚きだったよ。花婿には、ユーモアがあって男性的にも魅力的な人物であってほしかったから、それを念頭に置いてキャスティングしたんだ。父親が、人種も文化も違うけれど、これだけ魅力的ならばしょうがないか、と思うようにね。ユーモアがあって、魅力的な俳優たちが出演すれば、女性のお客さんも来るかな…なんて下心もあったけれどね(笑)」

確かに、4人の花婿たちは、それぞれが個性的でチャーミング。まるで、各文化圏のイケメン代表といった様子です。自分なら誰を選ぶかな…と、つい意味不明な空想に浸ってしまったりして。そんな楽しみ方も本作の魅力のひとつです。

そんな本作を観ていると、違いがあってもそれを乗り越えて人は共存できるのだという希望が見えてきます。カトリックを信仰する伝統的なフランス系中流家庭の出身で、アフリカ系女性との結婚を経験している監督に、異文化間結婚のコツを聞いてみると。
「コツは……あまりないかな。愛があれば! まあ、結婚というのは、異文化間でなくても難しいからね(笑)」
それにしても、他国に比べて、異文化間カップルが多いなんて、フランスは何が違うのでしょう。
「理由の一つとして、フランスが移民を多く受け入れてきた背景があると思う。植民地も多かったからね。イギリスにも植民地政策があったけれど、フランスは同化政策をとっていたから、移民が国に溶け込みやすかったんじゃないかな。だから、異文化間結婚も多いんだと思う」

アムール(愛)の国だから、愛に寛容だというところも理由でしょうか?
「本質的には、それもあるよ。昔と違って、いまでは気軽に離婚もできるし (笑)。僕たちは、相手を自由に選べる権利を勝ち取っているんだ。だからといって、異文化間結婚を特に奨励しているわけではないんだよ(笑)」
つまりは、“愛する人と幸せになろう、誰にでも、その権利がある!”ということ。
「そう、それがメッセージなんだ!」

映画は観る人や時代によって違った意味が生まれるもの。本作は、2014年に作られた作品ですが、2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロ後に公開される日本では、よりパワフルなメッセージを受け取る観客も多いはず。
「ほんとうにそうだね。この映画を通して伝えたかったことは、何があっても負けずに、障害や問題を乗り越える人間の強さ。テロのせいで、生き方を変える必要はない。そんなこともこの映画を観て感じ取ってもらえたら嬉しい。テロ後、日本人観光客は激減しているけれど、ぜひフランスに来て、サン・ジェルマン・デ・プレあたりでワインを飲み、ロアール城を訪ねてほしい。それを期待しているよ」
《text:June Makiguchi》

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