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【シネマモード】時代の“記録”に…『無伴奏』70年代ファッションに注目

流行というのは、時代を映し出す鏡。追う者にとっては楽しいもので、気にしない者には少々やっかいではありますが、ファッション、食、音楽、思想…

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『無伴奏』(C)2015 「無伴奏」製作委員会
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流行というのは、時代を映し出す鏡。追う者にとっては楽しいもので、気にしない者には少々やっかいではありますが、ファッション、食、音楽、思想…、そこで生まれたものたちが、後に時代考証する際に、大いに役に立つわけです。

映像作品においては、特にそう。特定の時代の空気を視覚的に表現できる、とても効果的な“ツール”になり得ます。映画『無伴奏』で描かれる1969~71年は、学園紛争が盛んな時代。女子高3年生のヒロイン響子は、青春期特有の空虚感と大人への憧れで背伸びしています。自分たちの学校でも、制服廃止闘争委員会を立ち上げ、隙あらば学校でシュプレヒコールを上げているのです。

少女と大人の間という、あいまいな時を過ごしている響子は、同年代の若者たちと出会うことでひとりの女性へと成長していくわけですが、この年代の少女たちといえば、恋とおしゃれが最大の関心事。学園紛争の真似事で選んだのは、制服廃止闘争。おしゃれする自由が認められるべきなのだと訴えるのです。その真意は実のところ、おしゃれ願望とか、制服のデザインが嫌とかいうよりも、決められた服を着せられるという押し付けへの反発。そこには、制服が流行を無視して存在し続けるということも関係しているはず。私が通っていた学校の制服は、幼稚園から高校までほぼ同じデザインで、しかも長年変わっておらず、15年間もそれを着続けた身としては、早く脱ぎたい(卒業したい)と思ったものですが、潜在的には、大人からの干渉されることへの嫌悪というようなものがあったのかもしれません。響子同様に。

時代感も、深層心理も見事に隠してしまう制服を脱ぎ捨てたいと望む響子が出会うのが、渉やその友人・祐之助、その恋人・エマ。少し大人びた彼らのファッションは、響子の私服姿よりもよりこなれていて、メイク、ヘアスタイル、ファッションなどを観ていると、時代を感じさせ、ノスタルジックな気分になります。レザーのジャケット、ダッフルコート、タートルネックのニットにポロシャツ、そして白いシャツ。いずれも定番アイテムながら、襟の大きさ、袖のデザイン、色使いなど、ちょっとした違いで時代の流行を映し出すのです。なかでも、一番おしゃれなエマのファッションが、最も時代の空気を映し出していると言えるでしょう。彼女が纏っているのは、当時流行のアイテムばかり。白いロングブーツ、おへそがのぞくショート丈のトップスとマイクロミニスカートのツーピース、サイケ柄、大きなイヤリングなど、まさに70年代。おしゃれな人って、時代の“記録”になるのね…とつくづく感じました。

少し前までは、「高くてもいいから定番アイテムは良いものを買いなさい、一生モノだから…」などと言われたものですが、実のところ、シンプルなニットだってシャツだって、身頃のフィット感や襟の空き具合、裾や丈の長さ、素材使い、色などが、その時代を生きる人々の気持ちに合うように変化しています。それが例え、ちょっとした違いだったとしても実は大きな印象の違いを生むことはご存じの通り。けっこう奮発して買った一生もののはずなのに、数年後、何だかシルエットがもたついているとか、肩が大きすぎるとか、ほんの微妙な違いで“今”着るには野暮ったすぎて手放す…という経験をお持ちの方もいるのでは?

自分に降りかかればやっかいな違いですが、ただそんな微妙な違いこそ、映画では舞台となる時代の空気感を再現できる美味しい部分。映画作りとは、コツコツとディテールを積み重ねて生まれる世界を写し取るもの。『無伴奏』で、それを実感してみてください。
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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