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【イマ旬!ハリ・レポ】『X-MEN:アポカリプス』ポスター騒動に見るアメリカ社会

日本では8月11日(木・祝)に公開予定の『X-MEN:アポカリプス』。

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『X-MEN:アポカリプス』 (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
『X-MEN:アポカリプス』 (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
  • 『X-MEN:アポカリプス』 (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
  • 『X-MEN:アポカリプス』 (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
  • 『X-MEN:アポカリプス』本ポスター (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
  • 『X-MEN:アポカリプス』ポスター (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
  • 『X-MEN:アポカリプス』 (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
  • 『X-MEN:アポカリプス』 (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
  • 『X-MEN:アポカリプス』 (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
  • 『X-MEN:アポカリプス』 (C)2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
日本では8月11日(木・祝)に公開予定の『X-MEN:アポカリプス』

全米では一足お先に公開されて大ヒットを記録したが、この映画の宣伝ポスター(ならびにビルボード)がエラい物議を醸し、6月に入ってから配給会社20世紀フォックスの責任者が公に陳謝するという事態となり世界的ニュースとなった。

問題となったポスターには、「強者のみが生き残る」というキャッチフレーズとジェニファー・ローレンス演じるミスティークが本作の悪役アポカリプスに首を絞められ絶体絶命!…というシーンが使われていた。一瞬見ただけだと何の変哲もない普通のビルボードに見えるのだが、そこが大きな間違いの発端だった。

映画『グラインドハウス』などで知られる女優ローズ・マッゴーワンを筆頭とする、女性の人権問題や女性に対する暴力問題に敏感な人たちが、「女性が男性に首を絞められているシーンを映画の宣伝に使用するなどもってのほか!」と立ち上がったのだ。ローズはそんな人たちの怒りを代表するかのように、有名業界紙「Hollywood Reporter」を介して20世紀フォックスにこんな公開状を突きつけた。

「(抜粋)こんなに失礼な広告を出すことに社内で異議を唱える人がいなかったなんて、正直言ってバカげています。仮にこの画像が、黒人男性がが白人男性に首を絞められていたり、ゲイの人がそうではない人に乱暴をされていたりするものだったら、どうなると思いますか。きっと大問題になることでしょう。おたくのスタジオは、向こう2年間女性監督を使った劇場作品が皆無という話しですが、せめてこの広告を差し替えてくれませんか」。

この皮肉たっぷりだが辛辣な公開状は、20世紀フォックスのオシリに火をつけることとなった。実は、問題のビルボードやポスターは、今年に入ってから長々と4か月ほど市民の前に姿をさらしていたのである。その間、使用されている映像が不適切であるとアメリカ国内のみならず国外からも苦情が届いていたにもかかわらず、20世紀フォックスはその対応に出なかった。そして今回、セレブであるローズが業界紙を使って直に配給会社に訴えたことで、やっと謝罪に踏み切ったのである。

実のところ、筆者が初めてこのニュースを知ったとき「みんな神経過敏になりすぎているのではないか」と思った。だが、映画業界でこんなことが起きている間にアメリカ国内では「宗教上の理由であればLGBTの人たちへのサービスを拒否してもよい」という法律が南部の州で可決されたり、トランスジェンダーの人たちが性転換後の自分の性にあった公衆トイレを使用できないという問題が起きたりしていた。どれもこれも人を思いやれない心から派生した恥ずべき状況だ。そして先日フロリダ州オーランドで起きたゲイ・クラブでの銃乱射大量殺人事件。暴力の最悪の極みといえる。

アメリカには暴力に対して不感症の人間が増えていっているように思えて仕方がない。今回の『X-MEN:アポカリプス』のポスター事件に関しても、映画を通じて社会に大きな影響を与え得る大手映画会社たるものが、セレブに詰め寄られるまで女性の人権を憂いた市民からの苦情を4か月以上も無視したという事態はその証ではないか。女性への暴力を容認する無神経さは、人間全てに対する暴力に対して無神経なのと同等のはずだ。人は誰もが平等であり、お互いを尊重して生きなければいけないのにX-MENのポスターのキャッチフレーズのように「強者のみが生き残る」社会になってしまうのか。

このコラムを書いているうちに、問題のポスターに映るミスティークが世界の弱者たちを象徴し、彼女の首を締め付けるアポカリプスは、社会の中で弱者をつぶしていく心ない強者たちの象徴に思えてきた。
《text:Akemi Tosto》

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