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【インタビュー】ほとばしる情熱と愛情をたたえ、中川大志が懸けた10代の集大成「自分にとっての代表作」

過ぎ去りし日に想いを馳せてもらえば、中川大志の端正な表情は柔らかくなり、自然と笑みがこぼれた。最新出演映画『坂道のアポロン』について話を始めると、瞳に情熱と愛情をたたえ、まるで自分だけの宝物をそっと分けてくれるように、丁寧に、丹念に言葉を紡ぐ。

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中川大志『坂道のアポロン』/photo:You Ishii
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過ぎ去りし日に想いを馳せてもらえば、中川大志の端正な表情は柔らかくなり、自然と笑みがこぼれた。最新出演映画『坂道のアポロン』について話を始めると、瞳に情熱と愛情をたたえ、まるで自分だけの宝物をそっと分けてくれるように、丁寧に、丹念に言葉を紡ぐ。そして、最後にはこう言った。「本当に、自分にとっての代表作だと思います」と。

2009年に芸能活動をスタートさせ、来年で10周年を迎える中川さんは、着実に重ねたキャリアや色っぽい風貌とは裏腹に、未だ19歳。走り抜いた10代の日々の集大成となったのが、『坂道のアポロン』で演じた川渕千太郎役だった。オファー時には、「何で自分にこの役がきたんだろう…?」と不安と疑問を迎えて挑んだというが、演じるにつれ、かけがえのない「分身」のようなキャラクターになったと話す。作品のために投じた10か月という長い準備期間、そして1か月半の長崎での撮影が、中川さんにもたらしたかけがえのない経験とは――。

中川大志『坂道のアポロン』/photo:You Ishii
小玉ユキによる同名人気コミックを映画化した『坂道のアポロン』は、昭和の長崎県佐世保市を舞台に、都会から転校してきた生真面目な薫(知念侑李)が、同級生の千太郎や律子(小松菜奈)と友人になり、やがてドラムを愛す千太郎に導かれるまま、ジャズピアノでセッションを行い、友情を深めていく青春映画だ。中川さんは、原作でも1~2の人気を争う、一見、粗野で腕っぷしが強いワルという人物に扮した。千太郎役に面食らったとは、中川さんの弁。

「過去に千太郎のような役をいただいたことがなくて、自分が千太郎をやるイメージが全く浮かばなかったんです。初めてやらせていただくビジュアルだし、チャレンジでもありました。原作を読みながら、“どうやって演じよう”と思っていましたけど、イメージがない役を与えてもらえることはそうそうないので、楽しみ半分、不安半分というのが、最初の気持ちでした」。

『坂道のアポロン』(C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館
千太郎は、ただの不良じみた男の子ではない。魅力の秘訣は繊細な内面にあるのでは、と中川さんは分析した。「千太郎は、明るくて太陽みたいな男ですけど、バックボーンとしては複雑で、孤独も抱えている。だからこそ、人の痛みに寄り添えるキャラクターでもあるんですよね。ギャップを大事に、いろいろな表情を見せられるように意識していました。あと、千太郎は、とにかく男女問わず惚れる男。薫が千太郎に心を奪われたように、原作のファンの方の心を奪うような人物でないといけなかったんです」と、役に寄り添う。予告編で流れている千太郎の精悍なたたずまい、反して、あふれ出る涙の場面からも、中川さんがいかに誠実に役作りをしたかが見て取れる。

また、『坂道のアポロン』を語る上で外せないのは、やはり音楽だろう。千太郎はドラム演奏に非常に長けており、ジャズのセッションをこよなく愛している。つまり、演じる中川さんの演奏シーンにうそがあれば、観客は一気に白けてしまうし、ブーイングの火種になる。何とも高いハードルだ。中川さんも、「『坂道のアポロン』を映像化するにあたって、ジャズを避けては通れない。絶対に中途半端なことはできないし、音楽や、作品を愛している人たちに失礼にならないように、全力で覚悟を決めて臨まないといけなかった」と語気を強めた。

『坂道のアポロン』(C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館
ドラム経験ゼロで、素人だった中川さんの本格的な奮闘の日々は、撮影10か月前からスタートした。

「最初の半年間はずっと基礎練習をして、ジャズでよく出てくるフレーズやビートをとにかく叩いていました。撮影に入る3か月くらい前に、ようやく劇中の曲を練習し始めて。最初、僕の元に送られてきた音源が『My Favorite Things』と、文化祭でやるメドレーだったんです。聴いていて“めちゃくちゃ格好いい!”と鳥肌が立つくらいテンションが上がって…! でも冷静になると“そういえば、これ自分がやるんだ…”と(笑)。素人の僕に、こんなに難しいことをさせてくれるなんて、それだけ懸けてくださっていると感じたので、ますます燃えました」。

『坂道のアポロン』(C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館
よどみなく、にこやかに話すが、スティックを持つ手の平は血豆でにじみ、越えられない技術の壁に、何度ももがいたことだろう。中川さんのプロ意識は、次の発言からも感じ取れる。「結果、丸々5曲覚えて、自分のものにしました。ただ上手く叩けるということではなく、あたかもその場で生まれている音楽、アドリブで叩いているように見せないといけないので、本当に難しかったです。だから最初は、できないところは割り切って“寄りで撮らない”としていたんですけど…、やっているうちにそれがどうしても嫌で(苦笑)。全部やりたくなってしまったんです。三木監督に “どのアングルからでも撮ってください”といえるくらいに仕上げたくて、必死でやりました」。

中川さんが過酷なドラム練習の10か月を乗り越えられたのは、知念さんの存在も大きかった。知念さんも同じく、ジャズピアノを弾くという命題が与えられており、すさまじいレッスンを重ねた。「知念くんとは、それぞれ別で練習していたので、連絡を取り合って“どれくらい進んでいるの?”みたいなやり取りをしていましたよ(笑)。知念くんにすごく感化されて、負けられない思いで練習していました」。そして、撮影直前になり、中川さんと知念さんは初めて音合わせを行った。「その日のことはいまでも忘れられません」と中川さんは声を弾ませる。

中川大志『坂道のアポロン』/photo:You Ishii
「初めて合わせたときの感覚が、すごく楽しくて、ドキドキして。僕が台本で読んでいたもの、漫画で読んだもの、アニメで見たもの…『坂道のアポロン』の中で、キャラクターが本当に楽しそうにキラキラした笑顔で演奏している、客観的に見ていたものが、一緒にセッションしたときに自分のものになったんです。“ああ、こういう思いだったんだ”とすごく感じました。音楽は言葉が要らないんですよね」。音楽で会話することを身をもって感じた中川さんと知念さんの生のセッションは、演じるという概念さえ超え、千太郎と薫による息の合った絆の結晶となった。到底10か月で成したとは思えないほど、ほぼ吹き替えなしの完璧な演奏シーンができあがり、説得力を持って物語をリードする。

饒舌だった中川さんは、何かを思い出したのか、一瞬口をつぐんだ後そっとつぶやいた。

「自分たちも…錯覚するんですよ。佐世保でずっと1か月半撮影していると、“俺たち、もしかしたらここで育ってきたのかな”って。小玉先生が生み出したキャラクターですけど、本当にその時代を生きていたように感じながらやっていました」。だから、我々もスクリーンで本物の千太郎たちに会える。

中川大志『坂道のアポロン』/photo:You Ishii
改めて、6月14日で20歳を迎える中川さんにとって、10代最後の劇場公開作品を『坂道のアポロン』で締めくくったことは、かけがえのない出来事として刻まれた。「映画って、その瞬間を切り取って、ずっと残っていくものだと思うんです。いまふり返っても、自分でも“この千太郎には会えないんだな”という思いがあるから、あの瞬間にしか出せないものがあって、その瞬間にしか生まれない奇跡がいっぱい映っている作品になりました。役者をやってきた中で、映画の中に自分の分身というか…千太郎を置いてこられたので、10年経っても、20年経っても絶対に忘れない作品だし、自分にとっては宝物のようなキャラクターです。本当に、自分にとっての代表作だと思います」。

中川大志『坂道のアポロン』/photo:You Ishii
《text:Kyoko Akayama/photo:You Ishii》

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