【インタビュー】公私にわたるミューズ、キム・ミニが語る名匠ホン・サンスのすごさ「本当に面白い」

第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された、アジアを代表する名匠ホン・サンス監督の最新作『それから』。主演をつとめるキム・ミニは、R18指定作品『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)の妖しくミステリアスなお嬢さん役の大胆演技で国際的に評価を高めた。

韓流・華流
キム・ミニ - (C) Getty Images
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  • キム・ミニ&ホン・サンス監督-(C)Getty Images
  • 『それから』(C) 2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.
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  • キム・ミニ - (C) Getty Images
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第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された、アジアを代表する名匠ホン・サンス監督の最新作『それから』。主演をつとめるキム・ミニは、R18指定作品『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)の妖しくミステリアスなお嬢さん役の大胆な演技で国際的に評価を高めた。現在ではホン・サンスの新たなるミューズとして、2015年の『正しい日 間違えた日』以降、4作品で主演を務めている。そんな彼女が監督のすごさを語るインタビューが、シネマカフェに到着した。

いま世界から最も熱い視線を注がれる名監督×名女優コンビ


キム・ミニとホン・サンス監督の初タッグ作『正しい日 間違えた日』はロカルノ国際映画祭グランプリを受賞、続く『夜の浜辺でひとり』では韓国俳優史上初となるベルリン国際映画祭女優賞に輝く快挙を達成。また、『クレアのカメラ』ではフランスの大女優イザベル・ユペールとの共演を果たしており、いまキム・ミニには世界中から熱い視線が送られている。

キム・ミニ - (C) Getty Images
ホン・サンスとの4度目のタッグとなる最新作『それから』は、妻に浮気を疑われ、窮地に立たされている社長ボンワン(クォン・ヘヒョ)と、彼が経営する出版社に勤めることになったアルム(キム・ミニ)が織りなすヒューマンドラマ。出勤初日早々、社長の妻が会社を訪れ、アルムを夫の不倫相手と決めつけ騒ぎ立てる。同じ日の夜、彼女の前任者であり、社長の愛人であった女がひょっこり戻ってきたことで、事態は思わぬ方向へ…。

カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、かつてロベルト・ロッセリーニとイングリット・バーグマン、ジャン=リュック・ゴダールとアンナ・カリーナ、小津安二郎と原節子といった名監督と名女優のコンビが生み出してきた名作に連なる作品として喝采を浴びた。

『それから』(C) 2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

キム・ミニ「本当に面白い」、予測不能の撮影を明かす


キム・ミニは、「この映画は前作『夜の浜辺でひとり』とは全く違います。『それから』でのわたしは、ストーリーから一歩引いた観察者の役割です。一番はじめにストーリーを聞かされたとき、私の演じるアルムはそんなに重要な人物じゃなさそう、これって本当に主役といえるのかしら、と思いました」と言う。

「ホン・サンス監督はシナリオをちゃんと書きません。ストーリーを聞かされてもこれから話がどう変わってゆくか予測もつかないし、そもそも監督にだって分かっていないんです。主役なのか、そうでないのかってことすら結局分からない。実は、アルムという人物にもっと重要性を持たせようと監督が決めたのは撮影がある程度進んでからなんです。彼がすごいのはそういうところなんですね」と明かすキム・ミニ。

「最後のシーンでアルムが会社に戻って、ボンワン社長とのとあるやりとりですべてがひっくりかえる、まさにどんでん返しです。最後になって過去と現在が同時に立ち現われてくる。こういうところが本当に面白いんですよ」。

『それから』(C) 2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

シナリオを書かないホン・サンス監督と “あうん”の呼吸


ホン・サンス監督が『それから』を撮るきっかけとなったのは、“家に帰りたくない男”の存在を知ったことから。昨今、日本でもまっすぐ家に帰らない“フラリーマン”が話題となっているが、本作の舞台に使った極小出版社の主人が「家から逃れるため」に早朝4時半に事務所に出勤し、深夜まで帰らない、という生活に監督が衝撃を受けたことからスタートしているという。

監督といえば、場所と俳優だけ決めて、撮影する日の朝までシナリオを書かないことで有名。とはいえ、主演女優としてこの物語の真実を知っていたのか、それとも最後の瞬間まで、監督は主演女優にも映画の全容を隠していたのか、気になるところ。すると、キム・ミニからは「わたしが彼に質問しても決してはっきりと答えてくれません。いつも『どうなるかよく分からないな』と返ってくるだけ。彼自身が知らない以上、わたしが知っているわけはありません」と超然とした回答が…。

キム・ミニ&ホン・サンス監督-(C)Getty Images
毎朝、監督からはその日の撮影分のシナリオを渡されて、シーンについて少し話すだけで撮影に入るそうだが、『それから』にはワンシーン・ワンカットで撮られた長回しのシーンも多々。とくに、キム・ミニ演じるアルムとクォン・ヘヒョ演じるボンワン社長が、信仰や人生観について語り合う場面の撮影には苦労をしたらしい。

「あの日、シナリオを受け取ったのは朝の10時。約5分間のワンシーン・ワンカットになる予定でした」とキム・ミニ。「陽が差している時間は限られていたので、結局そのシーンは2テイクしか撮れませんでした。私は監督に、演技に満足いかないのでもう一度やらせてほしいと頼んだのですが、『いや、これでいい』と言われました。翌日もう1回チャンスをくれることもあるのですが、このシーンに関してはダメでした。結局その2つのテイクのうち最初のものが選ばれました」と明かしている。

本作の見どころ、たった2テイク!ワンカット長回しシーンの裏側は…


しかし、この場面は、まさかそんな即興的に撮られたとは思えないほど完成度の高いワンシーンであり、『それから』の大きな見どころの1つともなっている。実生活でも恋人同士であることを公言しているキム・ミニとホン・サンス監督のこと、プライベートな会話が基になっているのではと邪推してしまうが…、キム・ミニは「こんな会話を交わしたことなど全くありません」ときっぱり。

『それから』(C) 2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.
では、どうして、ごく自然な会話劇となったのか、その答えは監督の演出にあったようだ。「朝の10時にシナリオを渡されて『じゃあこのシーンについてちょっと話をしよう』ということになりました。日常の会話で話すような事柄ではないですから、当然覚えるのに相当苦労しました。信仰や神について監督はたっぷり1時間くらいかけて自分の考えを説明してくれました。内容を理解していないとセリフだって覚えられないですから」。

これまでも優れたタッグ作を世に送りだしてきた2人だが、こうしたホン・サンス監督の丁寧な演出の積み重ねで、キム・ミニとの信頼関係は確固たるものとなったのだろう。公私にわたるミューズのキム・ミニを得た恋愛映画の名手は、最新作『それから』では人間ドラマの名手へと昇華したとの評価が高まっている。

本作は、まさに監督と女優の幸せなコラボレーションから生まれた名作といえそうだ。

『それから』は6月9日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。

名匠ホン・サンス×女優キム・ミニ 作品一挙公開
6月16日(土)~ 『夜の浜辺でひとり』
6月30日(土)~ 『正しい日 間違えた日』
7月14日(土)~ 『クレアのカメラ』
いずれもヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開
《text:cinemacafe.net》

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