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【MOVIEブログ】Cinemage: 風を味方に、太陽を敵に(前)

自分なり映画へのオマージュ、Cinemage。
今回はラブストーリーへのオマージュ・ストーリーです。

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自分なり映画へのオマージュ、Cinemage。
今回は、とあるラブストーリーへのオマージュ・ストーリーです。

「風を味方に、太陽を敵に」(前)

俺にはいつも思っていることがある。

「どうして世の中の歌はこんなにもラブソングだらけなんだろう?」

例えば最近売れている歌のランキングを見てみても、トップ10のうち全ての歌がラブソングであって、これを仮にトップ100にしてみても、100曲の中にラブソングじゃない歌が入ってくるのは恐らく10曲あるかないかだろう。なんでなんだ? そんなに世の人は愛に飢えているのか? 「君のために」「あなたといたい」「好きなのに」「逢いたい」「忘れない」そんな歌詞ばかりが溢れている。ほとんどのラブソングがメロディとリリックを変えただけの量産品。なんでそんな歌に惹かれるのか? 歌というものはイコール・ラブソングなのか? 本当に不思議でならない。

かくいう俺は特定の愛する人がいるわけではないが、特に愛に飢えているということもない。俺が愛を注ぐのはただ一つ。歌だけだ。俺は歌を歌う。自分が歌いたいことだけを歌う。だから俺の歌にラブソングは一つもない。むしろ、愛なんかなくても生きていける、そんな歌の方が多い。人生のこと、友達のこと、世界のこと。そんなことを自分の言葉で歌っている。

イカロスの翼にのせて
果てなき地へと駆り立てる
緑の大地と青い空
風を味方に、太陽を敵に
色鮮やかなこの世界を航っていく♪

こんな歌を毎日家の近くの公園でギター1本で歌っている。誰かに聞いて欲しいわけではない。ただ、歌いたいから歌っている。ギターから紡ぎ出されるコードに自分の言葉をのせて自分のメロディとリズムで歌う。こういうことが自分に出来ることが最高に嬉しいし、誇らしい。人生の毎日が同じように見えて、実は同じ日なんて一日たりともないことを知っているから、毎日違う歌を歌っている。そんな俺の歌には誰も足を止めたりはしない。歌っている本人が誰にも届けようとはしていないから当然と言えば当然のことだろう。だが、歌っている俺には他の誰にもできない、あることができる。

俺には人の色が見える。

人間というのは人それぞれに自分の色を持っていて、赤の人もいれば、青の人もいる。それは魚に色んな姿の魚がいるように、人にも色々な色がある。歌っているときにはそれが見える。なぜだかは分からない。いつからなのかも覚えていない。でも、人の色が見えるのと言うのは面白いもので、人によって実に様々な色があるのだが、同じ人でも日によって色が変わることもある。昨日は赤かったのに今日は青かったり、歌っているときの俺に見える世界は実にカラフルだ。


それまでの俺に見えてきた中でもっとも多かった色は緑だった。黄緑のような明るい緑から黒に近いような深い緑まで、緑と言ってもその幅は実はとても広いのだが、大半の人は大体この緑の部類に属している。人間というのは草のようなものなのかもしれない。

それでは、逆に少ない色は何色か? そんなことを考えながら色に関する歌を歌っていたあるとき、自分の目の前を今まで見たことのなかった色が通り過ぎた。その人は背の高い、スラッとした、ロングスカートの似合う女性で、近くのものには目もくれずに遠くを見据えながら歩いている感じの人だった。服はとても華やかな服を着ていたが、その人の色は白だった。純白というのにふさわしい新雪のような白だった。

その人は俺のことを一瞥もすることなく通り過ぎていった。

(つづく)
《text:Yusuke Kikuchi》

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