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「同期のサクラ」「凪のお暇」ほか仕事・家族・恋愛…自分を重ねながら夢中になった2019年ドラマ

毎クールに必ず1本はある、“お仕事ドラマ”。今年は特に豊作で、とりわけ同期や家族との関係、恋愛、結婚・育児との兼ね合いなど日常生活と社会の中で何かしらの課題を抱えた女性たちが、右往左往しながらも前を向いていく姿が数多く描かれた。

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「同期のサクラ」ビジュアル1(C)日本テレビ
「同期のサクラ」ビジュアル1(C)日本テレビ
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  • 「同期のサクラ」第10話 (C) NTV
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  • 「家売るオンナの逆襲」
  • コナリミサト「凪のお暇」(秋田書店「Eleganceイブ」連載)(C)コナリミサト(秋田書店)2017
毎クールに必ず1本はある、“お仕事ドラマ”。今年は特に豊作で、とりわけ同期や家族との関係、恋愛、結婚・育児との兼ね合いなど日常生活と社会の中で何かしらの課題を抱えた女性たちが、右往左往しながらも前を向いていく姿が数多く描かれた。


北川景子の“万智”が自身の結婚生活と向き合う
「家売るオンナの逆襲」(NTV)


「家売るオンナの逆襲」
「私に売れない家はない!」や「GO!」の決め台詞を繰り出し、家を売りまくってきた不動産営業の三軒家万智(北川景子)。2016年のレギュラー放送を経て2017年5月のスペシャル版「帰ってきた家売るオンナ」で屋代課長(仲村トオル)と結ばれた万智は、2019年、2年ぶりにテーコー不動産へと戻ってきた。

今回はライバル・留守堂(松田翔太)が登場し、2人の家売り合戦や、足立(千葉雄大)とのいわゆる“ふどうさんずラブ”も話題となったが、注目したいのは万智と屋代の結婚生活だ。結婚しても、“サンチー”こと万智の「家を売るために」昼夜問わずに猛進するところは相変わらず。いまでも「課長」、そして「三軒家くん」と呼び合っている。


「私は課長のもとしか帰るところはありません、妻ですから」と話していた万智だったが、留守堂とのバトルが白熱するうちに家庭をないがしろにしてしまい、屋代の気持ちが揺れ動き(?)不倫騒動が勃発。いくら食事が用意してあっても、一緒に食べなくては意味がない。「人に家を売ってる間に、自分の家が崩壊しちゃう」と屋代がこぼしたのは本音に違いなく、万智は自分自身の問題に直面することに。

家を売るため万智が顧客に向かって放った言葉が、時にはそのまま自分に返ってくることもある。社内で女性が輝くための「ウーマン・プロジェクト」が発足した際には、万智は女性だけが仕事と家庭を両立させながら“輝くこと”を要求されると言及。共働きの夫婦とは、共に働きながら、共に生きること。そんな思いから生じた提案が、ワーキングマザーと子どもを生まないことを選択した同僚の家選びを見事に取り持つことになった。

留守堂との決着も含め、実は全ては、万智が万智のままでいながら「家を売る」ことと、妻であること(そして母になること)にどうバランスをとっていくか、という物語でもあった。この鮮やかなストーリーテリングはさすが大石静・脚本。1月からは吉高由里子主演「知らなくていいコト」が控えており、こちらも楽しみだ。


吉高由里子の“結衣”に学ぶ、たおやかな働き方
「わたし、定時で帰ります。」(TBS)


吉高由里子「わたし、定時で帰ります。」のプレミアム試写会&舞台挨拶
吉高由里子が「定時で帰る」だけでなく、それぞれキャラの立った登場人物たちの働き方を描いた群像ドラマとしても話題を呼んだ本作。過去のトラウマから入社以来、残業ゼロ生活を貫いている東山結衣(吉高さん)が効率的に仕事をこなし、定時になるときっちり退社。行きつけの中華料理屋でビールを嗜み、恋人・諏訪巧(中丸雄一)との余暇も大切にする姿は、ノー残業デーであっても、なかなか定時に帰りづらい空気がある中で憧れをもって視聴者に受け入れられた。

そんな結衣の周りには、部下にも自分にも厳しすぎるあまり、追い詰められてしまう三谷(シシド・カフカ)や、サービス残業どころか、深夜まで仕事をしてオフィスに寝泊まりする吾妻(柄本時生)、双子を出産後、育休明けでも以前と変わらず仕事ができることを証明しようとする賤ヶ岳(内田有紀)、SNSに撮影裏をアップしたことから炎上、クライアントと揉めて出社拒否になる新入社員・来栖(泉澤祐希)、クライアントからセクハラ・パワハラを受けている派遣のデザイナー・桜宮(清水くるみ)といった面々が。

向井理「わたし、定時で帰ります。」のプレミアム試写会&舞台挨拶
元婚約者・種田(向井理)はワーカホリックである一方、その弟・柊(桜田通)は引きこもり中。パワハラ発言を繰り返す福永部長(ユースケ・サンタマリア)は、論外の低予算で納期ぎりぎりの仕事を引き受けてくる。毎週描かれる、こうした働き方模様にも「自分を見ているよう」「耳が痛い」「リアル過ぎてつらい」などの声が寄せられた。

結衣には、体を壊してしまった種田や、高度経済成長期から家族を顧みず仕事に没頭してきた父親に対する複雑な思いもある。自分自身悩みながらも、その都度たおやかに、腐ることなく1つ1つの問題に向き合っていく結衣の姿は、吉高さんの好演も相まって共感を呼んだ。

ユースケ・サンタマリア「わたし、定時で帰ります。」のプレミアム試写会&舞台挨拶
何よりこのドラマのすごいところは、例え“ブラック上司”といわれた福永であっても、彼らがそれぞれに抱いている働く理由を否定しなかったことだ。働き方改革などの以前に、「何のために働いているのか?」への答えは十人十色であること、1人1人違っていて当たり前という大前提が、きちんと描かれていた。だからこそ、共に知恵を出し合い、協力し合い、補い合うのだと。このドラマに貫かれている、そんな包容性が観る者を惹きつけたのかもしれない。

このドラマ以降、「きょうは定時で帰ります」と宣言する人が増えたように思うのは気のせいではないだろう。


“凪”黒木華の人生リセットストーリー
「凪のお暇」(TBS)


コナリミサト「凪のお暇」(秋田書店「Eleganceイブ」連載)(C)コナリミサト(秋田書店)2017
コナリミサトの原作漫画同様、黒木華がフワフワ、モフモフのパーマで大島凪になりきった「凪のお暇」は、黒木さんや高橋一生、中村倫也らキャストたちのハマりっぷりもあって、2019年の夏を席巻した。職場の人間関係にSNS疲れ、母親からのプレッシャーなど、グサグサ刺さりまくった人は数知れず!? 初回無料見逃し配信の再生数がTBSドラマの過去最高記録となったという。

「物捨てて、引っ越ししたくらいで人生リセットできてたまるか」。その第1話の慎二(高橋さん)の言葉はもっともだ。しかし、空気を読むことに疲弊しきった凪はもう、そうするしかなかった。前の職場や彼氏=慎二とつながっているスマホを解約し、布団と自転車以外の家財道具を手放すほどの荒療治が彼女には必要だった。時には、“自分かわいさ”にスパッと断ち切ってもいい、そう凪が教えてくれた。

ところが不思議なもので、そうして行き着いた先で自由気ままに生きているゴン(中村さん)や、同じように生きづらさを抱えている坂本さん(市川実和子)、毎日の暮らしを大事にする緑(三田佳子)、白石親子(吉田羊&白鳥玉季)、スナック「バブル」のママ(武田真治)らと出会うことができたのだ。


こうした個性的な登場人物のキャラ立ちに加え、凪やゴンの節約料理や、凪のゆったりしたお暇ファッション、ゴーヤ、黄色の扇風機などの美術セットに音楽といった、世界観の作り方も巧みで、あのアパート「エレガンスパレス」が癒やしの魔法に包まれているかのようでもあった。凪たちが抱える現代の悩みの深刻さを、どこかファンタジーな世界が見事に中和してくれた。

あのまま押しつぶされそうな空気の中で暮らしていたら、絶対に出会わなかったであろう人たちとの関わりの中で、凪はもちろん、似た者同士の慎二も変わっていき、ゴンも、坂本さんも、“アダハラ”(足立ハラスメント)とまで呼ばれた足立さん(瀧内公美)までも、それぞれに化学反応が起こって“おいしい空気”が伝播していく様子は、爽快で尊くもあった。

そして、お暇には必ず終わりが訪れるもの。ちょっぴり頼もしくなった凪にさよならすることが、あれほど嬉しく、寂しく感じるとは思わなかった!


“サクラ”高畑充希が見つけた本当の“力”とは
「同期のサクラ」(NTV)


「同期のサクラ」第10話 (C) NTV
空気を読みすぎて病んでしまった凪ちゃんの後にやってきたのは、最初から空気を読む気のない(?)、忖度知らずの主人公・北野桜(サクラ)だった。「過保護のカホコ」遊川和彦のオリジナル脚本のリアルとトンデモのボーダーをギリギリで演じられる高畑充希だからこそ体現できた役で、同期を演じた百合(橋本愛)、葵(新田真剣佑)、菊夫(竜星涼)、蓮太郎(岡山天音)という個性のバランスも絶妙だった。

そもそも同期に目をつけるのは、新しい着眼点だ。たまたま同じ地域に住んでいた義務教育と、たまたま同じ偏差値だった高等教育を経て、一社会人となって出会うのは、出身地も、学歴も、価値観もバラバラ。ただ、その理由は様々だろうが、多かれ少なかれ、その場所で何かを成し遂げたいという夢を持って集ったはずだ。そんな同期社員たちの10年間という月日を、よりコメディタッチのHuluスピンオフも含めて丁寧に積み上げてきたことは、特に8話以降、“仲間”がサクラに向けて語る言葉に重みを与えてくれた。

「同期のサクラ」第10話 (C) NTV
最終回の舞台は、2020年3月。副社長となった黒川(椎名桔平)の誘いを受けたサクラが花村建設に復帰するところから始まる。いままで、“それはおかしい”と思ったら「スゥーッ」と息を吸い、相手が誰であっても逐一、口にしてきたサクラ。そして、その度にサクラを説得し、巧みに手綱をとってきたのが人事部長だった黒川だ。そのサクラなりの正しさ、自分らしさは“力”があれば貫くことができる、という黒川にすっかり感化されたサクラは、会議でも自分の意見が通るようになり、かつてない高揚感を仕事で得ていく。だが、そんなサクラを心配して集まった同期とは衝突、サクラは孤独を実感することになる。

「同期のサクラ」第10話 (C) NTV
「私には夢があります」と入社当時から言い続けてきたサクラの夢の一つ、「故郷の島に橋を架けること」は叶わなかった。だが、「一生信じ合える仲間を作ること」、そして「その仲間とたくさんの人を幸せにする建物を作ること」という夢はまだ消えてはいない。同期だけでなく、人事部時代から見守ってくれたすみれ(相武紗季)や、サクラに感化された隣人の脇田(草川拓弥)、そして偶然声をかけられた、かつての自分そっくりの内定者(美山加恋)の姿にも戒められるように、自分が持っている“力”=仲間に気づいたサクラには思わず拍手を送りたくなった。

「同期のサクラ」第10話 (C) NTV
その“力”は「空気は読まないけど、人の心を読もうとするサクラが大好き」という百合の言葉にも集約されている。「はい、同期」と最後に写真を撮った後、それぞれ別々に歩んでいくラストシーンも「ひじょーにいい!」


戸田恵梨香の“喜美子”、“女だてらに”に抗う
「スカーレット」(NHK)


「スカーレット」NHK提供
NHK連続テレビ小説「スカーレット」は、滋賀県信楽を舞台に女性陶芸家・川原喜美子(戸田恵梨香)の人生を描いていくが、これがまた、かなり波瀾万丈な物語だ。戦後まもなく、両親と2人の妹と暮らす喜美子の家は貧しく、頑張り屋で、手先が器用で聡明な喜美子は子どものころから一家の働き手のひとりだった。お父ちゃん(北村一輝)は「女に学問は必要ない」という考えの持ち主で、幼なじみの照子(大島優子)や信作(林遣都)が高校へ進学する一方、中学を卒業した喜美子は15歳で単身、大阪へ。下宿屋で住み込みの女中をしながら、仕送りすることになる。

下宿屋では、仕事に厳しい大久保さん(三林京子)にみっちり仕込まれながらも、個性豊かな人々と都会の生活の中で美術学校へ行くことを決める喜美子だったが、あるとき、お父ちゃんによって強引に信楽に連れ戻されることに…。大阪時代、特に大きな影響を喜美子に与えたのは、新聞記者としてバリバリ働いていたちや子(水野美紀)だ。報道も、陶芸も男性社会。「だから女は」「女のくせに」「女だてらに」、ちや子さんも相当言われてきたはずであり、喜美子はちや子にだけ本音の涙を見せたことも。

地元の丸熊陶業で、日本画家のフカ先生こと深野心仙(イッセー尾形)のもと修行し、火鉢の絵付け師として働き始める喜美子だったが、なんと信楽初の女性絵付け師として会社のPRに利用されることに。新聞社から取材を受けるも、不本意ながら“マスコットガール・ミッコー”と名付けられてしまうのだ。

やがて一人前の絵付け師になった喜美子に、並外れた陶芸の知識と技術を持つ、真面目で素朴な青年・八郎(松下洸平)との出会いが! 陶芸にすっかり魅せられた喜美子と八郎は引かれ合い、八郎の作品が陶芸展で入賞したことで無事結婚。喜美子は、陶芸家となった八郎を支える日々を送ることに。

この八郎は、お父ちゃんとは真逆ともいえるキャラクターだ。朝夕2時間、職務以外に2人きりで陶芸をしているところを誰かに見られたら「何を言われるか、わからん」「僕にとって川原さんは女や」と喜美子の身を案じる。しかし、いざ陶芸のことになると厳しい目も持ち、もの作りの基本のキを喜美子に伝えようとする。

作陶に励む川原喜美子 (第1回放送より) 連続テレビ小説「スカーレット」(C)NHK
貧しさや運命のいたずらだけではなく、“お父ちゃん”をはじめとした旧態然とした価値観とも闘い続けてきた喜美子は、これからは八郎と二人三脚で陶芸に挑んでいくわけだが、果たしてどんなことが待ち受けているのか。自分のやりたいことを職業にし、食べていく難しさを、おそらくこれからも実感していくことになるはず。労働とその対価についても突っ込んでいくドラマだけに、今後の展開にも期待したい。


ほかにも、大河ドラマ「いだてん」では、日本人女性初のオリンピック選手・人見絹枝(菅原小春)をはじめ、男性主体のルールや価値観の中で闘う女性スポーツの先人たちが描かれ、涙を誘った。

また、前期の朝ドラ「なつぞら」では、日本のアニメーション黎明期にアニメーター・なつ(広瀬すず)が結婚・出産し、夫(中川大志)が家事を担うなど、結婚しながら仕事を続けていくことの難しさが語られていた。

桜井ユキ主演の「だから私は推しました」は、30歳間近のOLがリア充を装う日々に疲れ、地下アイドルというのめり込めるものに出会ったことで人生が変わっていく異色の成長物語だ。

ときに自分自身を重ねつつ、一緒に泣いて、笑って、救われて…。明日への活力と一歩踏み出す勇気をくれたドラマたち。年末年始に、改めてふり返ってみては?
《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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