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全世界がダマされた衝撃の実話、架空の天才美少年“作家”はなぜ生まれたのか?

マドンナ、ウィノナ・ライダー、コートニー・ラブなど、名だたるセレブたちがかつて夢中になった“偶像”の天才作家にまつわる真実を描いた『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』。

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『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited
『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited
  • 『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited
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  • 『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited
  • クリステン・スチュワート-(C)Getty Images
マドンナ、ウィノナ・ライダー、コートニー・ラヴ、「U2」ボノ、マリリン・マンソン、カルバン・クラインなど、名だたるセレブたちがかつて夢中になった“偶像”の天才作家にまつわる真実を描いた『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』

アメリカ文壇に彗星のごとく現れた若きカリスマ作家が、実はふたりの女性が創り出した“虚像”だったというニュースは、当時、世界中を駆け巡った。J・T・リロイはなぜ、どのようにして生まれたのか。そのふたりの女性を、クリステン・スチュワートとローラ・ダーンという、それぞれいまキャリアの最盛期にいる2大女優が見事に演じきっている。

ふたりの女性が創り出し、世界的熱狂を生んだ
“J・T・リロイ”とは?



18歳で執筆したデビュー小説「サラ、神に背いた少年」が瞬く間にベストセラーとなり、続く「サラ、いつわりの祈り」は映画化され、2004年のカンヌ国際映画祭で上映された作家“J・T・リロイ”(ジェレマイア・ターミネーター・リロイ)。出版社の関係者でさえ正体を知らなかったJ・T・リロイが、ついにその姿を現したとき、シャイで謎めいた“彼”にメディアやセレブはもちろん、世界中が熱い視線を送ることになった。

ところが実際は、小説を書き、電話で対外的なやりとりをしていたのは40代の女性ローラ・アルバート(ローラ・ダーン)であり、記者会見や映画のプレミアなどに登場していたのは、ブロンドのウィッグに大きなサングラスで素顔を隠したローラのパートナーの妹サヴァンナ・クヌープ(クリステン・スチュワート)であることがわかる。“J・T・リロイ”とは、ローラとサヴァンナがふたりで創りあげた実体のない架空の作家だったのだ。

2000年代に世界を揺るがせたこの一大スキャンダルは、2017年に日本公開されたドキュメンタリー『作家、本当のJ.T.リロイ』などでも度々紹介されてきたが、本作はサヴァンナ本人が自身の体験を綴った原作をジャスティン・ケリー監督とおよそ9年かけて脚本にし、製作総指揮も担当。“J・T”として好奇の視線と熱狂を受けとめてきたサヴァンナ側から初めて描かれる、“嘘のような本当の話”が紐解かれていく。

『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited
自伝的といわれる“J・T・リロイ”の小説といえば、幼いころから実の母親やその交際相手に虐待され、長距離トラック運転手を相手に女装の男娼となったことや、アライグマのペニスの骨で作ったネックレスをお守りのように首から下げていることなど、極めてショッキング。ローラは、同性愛小説で知られるデニス・クーパーの作品に登場するような美少年になりきって記したというが、中性的な容姿のサヴァンナはまさにそのイメージにぴったりだった。

さらに“J・T・リロイ”が特別だったのは、幼少期のトラウマを吐露した自伝的小説だけでなく、その神秘的な容姿や振る舞いに魅了されたセレブたちにとって、“彼”との交流自体がステイタスといえるものとなっていったからだろう。

そんな“彼”に、マドンナは当時ブームになっていたユダヤ教の神秘主義思想であるカバラの本をプレゼントし、レジェント的ミュージシャンのトム・ウェイツはインタビューをしたがった。ガス・ヴァン・サント監督は“彼”の才能に惚れ込み、米コロンバイン高校銃乱射事件を題材にした2003年のカンヌパルム・ドール&監督賞W受賞作『エレファント』の脚本作りに誘ったほど(共同製作としてクレジットされた)。

誰もが喉から手が出るほど欲しがった「サラ、いつわりの祈り」の映画化権は、『サスペリア』('77)の巨匠ダリオ・アルジェントの娘で“J・T”のファンだった女優アーシア・アルジェントが獲得、監督とサラ役を兼ねた。

ちなみに、同作で“J・T”の分身のような主人公の少年を演じたのは、いまでは海外ドラマ「リバーデイル」でお馴染み、子役時代のコール・スプラウスと双子の兄ディラン。そのほか、マリリン・マンソンジェレミー・レナーらに加え、“J・T”と友人関係にあったウィノナ・ライダーもノンクレジットでカメオ出演。

『作家、本当のJ.T.リロイ』 (C)2016 A&E Television Networks and RatPac Documentary Films, LLC. All Rights Reserved.『作家、本当のJ.T.リロイ』より本人画像
しかも、映画のPRのため、サヴァンナは“J・T”として、ローラは彼のマネージャーに扮して、来日も果たしている。来日時には日本のセレブたちもパーティに参加し、マスコミや映画関係者もみな一様にダマされた。次なるカリスマを求めていた世界が、“J・T”を時代の寵児に祭りあげてしまった、ともいえるかもしれない。

実力派ローラ・ダーン×クリステン・スチュワート、
必見の演技合戦!


『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited
幻のはずの“J・T”ことサヴァンナを、本作でリアルな存在として感じることができるのは、ケリー監督も「彼女に演じてもらいたかった。ドリームキャスト」と打ち明けるクリステン・スチュワートが演じたからこそ。

1990年生まれで9歳のころ子役デビューしたクリステンは、『トワイライト』シリーズ(’08~'12)で一躍世界的スターとなり、ロバート・パティンソンとのカップルは世界中の憧れとなった。しかし、映画監督ルパート・サンダースとの不倫騒動でバッシングにも遭い、その一挙手一投足がニュースになる大熱狂の渦中と、手のひらを返したような奈落の底の双方を経験している点は“J・T”に翻弄されたサヴァンナ本人の人生に重なる。

『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited
また、劇中にはサヴァンナのボーイフレンドが登場するが、「私はオープン」だと彼女は言う。男性とも女性とも交際する性的指向と、自分自身と“J・T”の間を行き来するジェンダーの揺れは、交際相手との関係を堂々と明かし、女優として多彩な役柄に挑み続ける現在のクリステンそのもののようでもある。

そして、父ブルース・ダーン、母ダイアン・ラッドという俳優一家に育ち、デヴィッド・リンチ監督のミューズを経て、『ジュラシック・パーク』シリーズや『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』といった超大作にも出演、『マリッジ・ストーリー』で3度目のオスカーノミネートを受けているローラ・ダーンの振り幅も圧巻だ。電話で会話する“J・T”から、赤毛のウィッグを被った英国なまりのマネージャー、作家、ミュージシャンと変化(へんげ)するローラ・アルバートを体現する彼女は、目を見張るほどにそっくり。

『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited
さらに、ひとつの人格を共有するこの奇妙な関係に発展をもたらし、亀裂を入れるきっかけともなるのが、『サラ、いつわりの祈り』を映画化したアーシアをモデルにしたキャラクター、エヴァであることは何とも皮肉。“J・T”になりきったサヴァンナを翻弄する、奔放で押しの強い女優エヴァを演じるのはダイアン・クルーガー。どこか『マリー・アントワネットに別れをつげて』(’12)を彷彿とさせる彼女にも、注目してみてほしい。

『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited

舞台はパリ、カンヌへ…
全世界を巻き込んだ大騒動、その結末は?


『ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』 (C) 2018 Mars Town Film Limited
最初はたった1度限り、50ドルでの頼みごとに過ぎなかった。ローラの口真似をしながら自己紹介の練習をしていたサヴァンナが、さらしを巻いて胸を隠し、少年のような出で立ちで何度も人前に出ていくうちに“J・T・リロイ”という虚構を物にしていく様は、本作の大きな見どころとなっている。

ローラが生み出した“J・T”という別人を演じながら、サヴァンナは自分の中で確実に成長していく、スリルとはまた違う“何か”を目の当たりにする。それは自己実現といってもいい、ある種の目覚めだ。ローラの常軌を逸したミッションに共鳴し、協力したのは、サヴァンナもまた生来のアーティスト=表現者だったからだろう。

一方で、“J・T”が小説の中で告白した性的虐待はローラ自身の体験だったことも忘れてはならない。彼女はトラウマから身を守るために、自分とはまるで真逆のアバター、金髪の美少年の“J・T”を生み出した。「様々な役割になりきるって最高よ」と劇中でもうそぶく。そんなローラが「私の中からJ・Tが出ていってあなたの体へ入るのを感じた」と確信を持って世に解き放ったのが、サヴァンナだった。自身を投影した“J・T”が注目を集めれば集めるほど、ローラも過去から解き放たれていったに違いないのだ。

こうして、ふたりのアーティストが共同作業で“J・T・リロイ”という作品を創りあげていったのだから、その作品が一人歩きを始めたら混乱とトラブルは避けられない。しかも、映画『サラ、いつわりの祈り』の製作が進むに連れ、ロサンゼルスからパリ、そしてついにはカンヌへと、“作品を披露する舞台”の場はますます大きくなっていく。

2006年に「ニューヨーク・タイムズ」がスクープするまで続いた狂宴は、一体ふたりに何をもたらしたのか? そして全てが明らかにされたとき、ふたりはどんな選択をしたのか?

「フィクションはウソだけど真実を超える時がある」そう堂々と言い放った“J・T”と、実際に交流があったコートニー・ラヴも出演を果たしている本作。女性ヒーロー誕生譚を描いて大ヒットした『キャプテン・マーベル』にも起用された、コートニー率いるバンド「HOLE」の「セレブリティ・スキン」が、“仮面”をかなぐり捨てたふたりのごとく痛快にラストを飾るのは象徴的だ。

『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』公式サイト

『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』は2月14日(金)よりシネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開。

<提供:ポニーキャニオン>
《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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