力強さに圧倒! 歌姫シンシア&ジャネール、人種差別と戦う女性たちを熱演

ミュージカル女優シンシア・エリヴォと、個性派アーティスト、ジャネール・モネイ。『ハリエット』(6月5日公開)では、2人の熱き共演が堪能できる。

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『ハリエット』(C)2019 Focus Features LLC.
  • 『ハリエット』(C)2019 Focus Features LLC.
  • 『ハリエット』(C)Universal Pictures
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  • シンシア・エリヴォ (C) Getty Images
現地時間2月9日に行われた第92回アカデミー賞。日本のみならず世界を席巻中のポン・ジュノ監督による韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞ほか4部門を制し、歴史的快挙を成し遂げたメモリアルな授賞式となった。

アワードでは各賞の最優秀作品が発表される以外にも、趣向を凝らしたステージパフォーマンスが目を楽しませてくれるが、その中でも強烈な印象を残したのは2人の歌姫の存在だ。

その歌姫とはミュージカル女優シンシア・エリヴォと、個性派アーティスト、ジャネール・モネイ。奴隷解放活動家ハリエット・タブマンの激動の人生を活写した『ハリエット』(6月5日公開)では、2人の熱き共演が堪能できる。

奴隷から「英雄」へ
知られざる真実の物語『ハリエット』


『ハリエット』(C)Universal Pictures
米・メリーランド州で奴隷の子として産まれたハリエット・タブマンは、19世紀半ばに活躍した実在する奴隷解放活動家だ。秘密結社「地下鉄道」の“車掌”として、奴隷州から自由州へと逃亡する奴隷を誘導する係を担い、手助けした人数は70人以上。南北戦争では自ら黒人兵士を率いて戦い、750人以上もの奴隷を解放している。

本作は6歳の頃から奴隷として過酷な労働を強いられていたアラミンタ・ロス(通称ミンティ)の決死の脱走劇と、ハリエット・タブマンと名を変え「英雄」となっていく姿を真正面から描いた知られざる真実の物語だ。

『ハリエット』(C)Universal Pictures
雄大な平原や木々生い茂る森を駆け抜け、時には濁流にも飛び込み自由を勝ち取ったハリエット。命の危険も顧みずに、家族や仲間のために組織を先導した彼女の崇高なる志と不屈の精神は、いまなお残る不平等と不寛容な社会を生きる現代人の心に深い感銘を与えることだろう。

ハリエットを熱演そして熱唱!
シンシア・エリヴォ


シンシア・エリヴォ (C) Getty Images
今回、不屈の魂を持つハリエットに扮したのはミュージカル女優として活躍中のシンシア・エリヴォ。ブロードウェイデビューとなった「カラーパープル」で演じた主人公セリー役が高く評価され、主要な演技賞で主演女優賞を受賞したほか、トニー賞では最優秀主演女優賞に輝いている。

また今年1月には三浦春馬と共演した「シンシア・エリヴォ ミュージカルコンサート featuring マシュー・モリソン&三浦春馬」が東京で開催されたのも記憶に新しい。

スクリーンデビューはジェフ・ブリッジス、クリス・ヘムズワースと共演した犯罪サスペンス『ホテル・エルロワイヤル』(2018年)。そして三本目の映画出演にしてタイトルロールを務めた本作では、歴史に名を残す女性活動家を熱演したほか主題歌を熱唱し、アカデミー賞(主演女優賞、歌曲賞)でWノミネートの快挙に!

本作では虐げられている仲間たちのために奔走するハリエットの勇猛果敢ぶりを骨太に活写する一方で、妻として、家族の一員として愛する人たちを守りたいと願う彼女の根底に流れる“人間的な温もり”にも焦点を当てている。

『ハリエット』(C)Universal Pictures
また、13歳の時に頭がい骨陥没の重症を負わされ、生涯ナルコレプシー(強い眠気に襲われる睡眠障害の一種)の後遺症に苦しめられたというハリエット。多くの奴隷の逃亡を成功させた彼女は尊敬を込めて「黒人たちのモーゼ」と呼ばれていたが、劇中では彼女が常人とは少し違う神秘的な存在としてとらえられていた一面も映し出す。

そんなハリエットを全身全霊で体現したシンシアの“魂の演技”に、圧倒されることだろう。

そして演技と同じく強烈な印象を残すのが、シンシアが歌う主題歌「スタンド・アップ」。アカデミー賞授賞式では歌曲賞にノミネートされた候補者たちが素晴らしいパフォーマンスを披露したが、満を持して登場したシンシアは抜群のカリスマ性を発揮してステージを支配。そのパワフルな歌声には世界がくぎ付けに!

シャーリーズ・セロン&シンシア・エリヴォ (C) Getty Imagesシャーリーズ・セロン&シンシア・エリヴォ

気高き奴隷制度廃止論者マリーを好演!
ジャネール・モネイ


ジャネール・モネイ (C) Getty Images
ジャネール・モネイは歌手、作曲家、音楽プロデューサー、モデルと複数の分野で活躍する、エキセントリックでフューチャリスティックな個性派アーティストだ。ソウルやポップほか多彩なジャンルを繰り出すシームレスな楽曲構成が魅力で、初来日となった昨年夏の「FUJI ROCK FESTIVAL '19」ではその見事なパフォーマンスと共にメッセージ性の高さも絶賛されている。

またアカデミー賞授賞式においてはオープニングの“スペシャル・パフォーマンス”として登場。ステージ後半ではアリ・アスター監督作『ミッドサマー』を彷彿とさせる衣装をまとい、自身のヒット曲「Come Alive」を主張と共にエネルギッシュに披露し、会場は熱気の渦に!

ジャネール・モネイのパフォーマンス/第92回アカデミー賞授賞式 (C) Getty Images
ジャネールはNASAを支えるヒロインをモチーフにした『ドリーム』(2016年)でスクリーンデビュー。その後も第89回アカデミー賞で作品賞ほか3冠に輝いた『ムーンライト』(2016年)や彼女を模したバービー人形も登場するロバート・ゼメキス監督作『マーウェン』(2018年)に出演するなど、女優としても着実に作品を重ねている。

そんなジャネールが本作で扮するのは、奴隷制度が廃止されているペンシルベニア州へと逃れてきたハリエットをかくまう、気高き奴隷制度廃止論者マリー・ブキャナン。

自由の地フィラデルフィアで自由黒人として暮らすマリーは、ハリエットが“車掌”として活動する際に怪しまれないようドレスを与え、レディとしての立ち居振る舞いを教え込む。出会った瞬間は警戒しあっていた2人が、尊敬と友情の念で結ばれる印象的なシーンもお見逃しなく。

『ハリエット』(C)Universal Pictures
後年は婦人参政権運動に参加するなど女性の地位向上にも尽力し、「アメリカ史で最も有名な10人」に選ばれたこともあるハリエット・タブマン。オバマ政権時代には、彼女の肖像がアフリカ系アメリカ人として史上初となる新20ドル札に採用されることが決定している。だが、婦人参政権運動100周年となる2020年に予定されていた新紙幣の発行は、トランプ政権となった現在では事実上膠着状態に…。

自由への渇望と不屈の精神を描く『ハリエット』。本作が訴えかけてくるテーマを、いまこそ噛みしめたい。《text:足立美由紀》
《text:Miyuki Adachi》

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