映画から学ぶ「#Black Lives Matter」運動の重要性 “いま”こそ観るべき映画5選

これまでにも数々の映画やドラマで描かれてきた人種差別とその抗議活動。その理解の手助けになる、“いま観るべき”映画を5作品をピックアップ

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『ドゥ・ザ・ライト・シング』 (C) APOLLO
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  • 『ビール・ストリートの恋人たち』 (c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
  • 『ビール・ストリートの恋人たち』 (c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
米ミネソタ州ミネアポリスで、白人警官に膝で首を押さえつけられ亡くなった黒人男性ジョージ・フロイドさんの事件を受け、人種差別抗議運動「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」がかつてない高まりを見せている。

ビヨンセ、リアーナ、レディー・ガガ、アリアナ・グランデ、セレーナ・ゴメス、ビリー・アイリッシュら数多くのセレブが声を上げ、Netflix、Amazon、A24からディズニーなども次々に抗議を表明し、現地時間6月2日(火)には「#BlackOutTuesday」としてSNSが漆黒に染まるかつてない規模のムーブメントに発展。マイケル・B・ジョーダン主演『黒い司法 0%からの奇跡』が、アメリカ国内の全デジタル・プラットフォームで無料レンタル可能になるなど、エンタメ界も次々に賛同の声を上げている。


6月3日、イギリス・ロンドンで行われた抗議デモには『スター・ウォーズ』シリーズの若きスター、ジョン・ボイエガの姿もあり、「今後自分のキャリアがどうなってもいい」と時に言葉を詰ませながらパワフルに訴える姿が話題となっている。ボイエガは、『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグロー監督が1967年のデトロイト暴動の中で起きた白人警官による黒人青年たちへの理不尽な暴行や殺人を描いた『デトロイト』にも出演しており、根深い人種差別への強い思いがうかがえる。


これまでにも数々の映画やドラマで描かれてきた人種差別とその抗議活動。その理解の手助けになる、“いま観るべき”映画を5作品をピックアップした。

『ドゥ・ザ・ライト・シング』ラブ&ヘイトが交錯するブルックリン


『ドゥ・ザ・ライト・シング』 (C) APOLLO
そもそも「Black Lives Matter」と名づけられた抗議活動は、2013年フロリダ州で起こった黒人の高校生射殺事件をきっかけに生まれ、広がったもの。だが、“決して”そこが始まりではない。

今回の事件で名だたるセレブたちが次々にSNSでコメントを述べる中、スパイク・リー監督は自身が初めてアカデミー賞脚本賞の候補となり、注目を集めるきっかけとなった1989年の映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』のシーンを使用した短い動画「3 Brothers-Radio Raheem, Eric Garner And George Floyd.」をSNSにアップした(※注:当該映像には実際の事件の様子が含まれる)。

“3 Brothers”の最初の人物Radio Raheem/ラジオ・ラヒームは、『ドゥ・ザ・ライト・シング』で白人警官によって警棒で窒息させられたキャラクターだ。うだるような暑さが続くブルックリンの黒人街を舞台に、リー監督自らピザ屋で働くアルバイトのムーキーを演じた本作は、住人たちの日常の姿を生々しく描きつつ、街に暮らす黒人たちとイタリア系、ヒスパニック系、韓国系それぞれに鬱屈したヘイト感情が表面化していく様もつぶさに捉えた。そのヘイトのベクトルは人種的なものだけでなく、老人や知的障がいを抱える者にも向かっていた。

『ドゥ・ザ・ライト・シング』 (C) APOLLO
そしてある日、巨大なラジカセで「パブリック・エネミー」の「ファイト・ザ・パワー(権威と闘え)」を大音量で流し、アイデンティティーを主張していたラジオ・ラヒーム(ビル・ナン)が、そのピザ屋で悲劇に巻き込まれてしまう…。

ヘイト渦巻く街で、サミュエル・L・ジャクソンが“愛”を語るラジオDJを演じているほか、マーティン・ローレンス、ジョン・タトゥーロ、ジャンカルロ・エスポジート、ロージー・ペレスらの若き日の姿にも注目。

『ドゥ・ザ・ライト・シング』 (C) APOLLO
『ブラック・クランズマン』で第91回アカデミー賞脚色賞を受賞した際も「レッツ・ドゥ・ザ・ライト・シング!(正しいことをしよう)」と叫んでいたスパイク・リー監督。Netflixで6月12日より配信される『ザ・ファイブ・ブラッズ』では、『ブラックパンサー』のチャドウィック・ボーズマンらを迎え、ベトナム戦争の視点から人種差別を描いていく。

Netflix、U-NEXTなどで配信中


『ビール・ストリートの恋人たち』家族を守りたいだけなのに…


『ビール・ストリートの恋人たち』 (c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
『ドゥ・ザ・ライト・シング』のエンドロールは、キング牧師とマルコムXという2大活動家の言葉で幕を閉じるが、今作は、彼らと同時代の作家・詩人・活動家であるジェームズ・ボールドウィンの小説「ビール・ストリートに口あらば」をアカデミー賞受賞『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督が映画化。

ボールドウィンは、キング牧師とマルコムX、そしてNAACP(全米黒人地位向上協会)ミシシッピ州支部のメドガー・エバースという、いずれも暗殺された3人から人種差別を紐解いたドキュメンタリー『私はあなたのニグロではない』(サミュエル・L・ジャクソンがナレーション)の原作者でもある。

今作では1970年代のニューヨーク、ハーレムが舞台。デパートの香水売り場で働く唯一の黒人女性19歳のティッシュは妊娠が分かるが、22歳の恋人ファニーは無実の罪で刑務所の中にいた。もとはといえば、ファニーがティッシュの身を守るために白人警官ベル巡査と揉めたことがきっかけ。後日、その巡査の偽りの証言により、彼がレイプ事件の犯人にされてしまったのだ。被害を訴えたシングルマザーの女性は故郷プエルトリコに帰ってしまったことから、ティッシュや家族はファニーを救うために手を尽くそうとするが…。

『ビール・ストリートの恋人たち』 (c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
『ムーンライト』と同じ撮影監督による映像や、音楽、オードリー・ヘプバーンを意識したというレトロファッションに包まれた恋人たちの、幸せに溢れた日々があまりにも対照的で、儚く、切ない。また、プエルトリコへ“闘い”に向かう母を演じてアカデミー賞を受賞したレジーナ・キングは、アメコミで人種問題を真っ向から描いた「ウォッチメン」の主演も記憶に新しい。

『ビール・ストリートの恋人たち』 (c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
ビール・ストリートとはルイジアナ州ニューオリンズにある通りで、ボールドウィンの言葉によれば、彼の父やルイ・アームストロングが生まれた「アメリカのすべての黒人の故郷」だという。このカップルだけでなく、幾多の黒人たちの歴史を見てきた象徴=ビール・ストリートに“口あらば”、いまのこの状況に何を語るだろうか。

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『ディア・ホワイト・ピープル』“差別などありません”を痛烈批判


『ディア・ホワイト・ピープル』 (C) APOLLO
大ヒット作『クリード チャンプを継ぐ男』やマーベル作品『マイティ・ソー バトルロイヤル』に抜擢される以前に、テッサ・トンプソンが主演を務めた2014年の作品。その後、「親愛なる白人様」としてドラマ化もされた青春社会派コメディ。今回の事件が起きたミネアポリスに位置するミネソタ大学がロケ地となっている。

アメリカ有数の名門ウィンチェスター大学(架空)は、多様性の名のもとに人種に関係なく学生寮を振り分ける試みを行っていた。「人種差別はない、あるとしてもメキシコ系」という白人の総長。そして、学生であるその息子も「今アメリカで一番苦労しているのは高学歴の白人男性だ」などと言い放つ。

『ディア・ホワイト・ピープル』 (C) APOLLO
「親愛なる白人の皆さんへ」と学内ラジオで語りかける“サム”ことサマンサ・ホワイトは、そんな建前にツッコミを入れ、断固抗議し、ついには選挙で寮長に選ばれる。だが、それに端を発し、白人学生たちが“均質化された黒人のイメージ”を表現した仮装パーティを開催したことで、混乱が起き…。

日本でも少し前に話題となった“ブラックフェイス”問題を想い起こさせるパーティは、決してフィクションではなく、その実態がエンドロールでも紹介されている。また、“スパイク・リーとオプラ(・ウィンフリー)の怒れる子どもみたい”と揶揄される主人公サムが配布する冊子のタイトルが、スティービー・ワンダーとポール・マッカートニーのコラボ曲「エボニー&アイボリー」をパロディした「エボニー&アイビー」だったり、ようやく日本公開される『ハリエット』の黒人奴隷解放者ハリエット・タブマンのことなど「白人は気にかけない」というセリフがあったりと、たっぷりの皮肉に満ちながら、黒人たちもまた様々な志向を持つことを示唆する。

『ディア・ホワイト・ピープル』 (C) APOLLO
加えて、サンダンス映画祭やインディペンデント・スピリット賞で高い評価を受けた今作や、劇中でも言及されたタイラー・ペリーが女装する人気シリーズ『マデアおばさん』など、黒人が主人公の映画はよほどのスターでない限り日本にはなかなか上陸しない理由も思わずにはいられない。

Netflixにて配信中


『ブラインドスポッティング』立場によって見えるものは違う


『ブラインドスポッティング』(C)2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED
カリフォルニア州オークランドを舞台に、黒人青年のコリンと幼なじみのヒスパニック系白人のマイルズの関係を通じて、今回のように繰り返され続ける事件を描く。オークランドといえば、『ブラックパンサー』の冒頭とラストに象徴的に登場し、かつてマイケル・B・ジョーダンが主人公を演じた『フルートベール駅で』の射殺事件は目と鼻の先で起こった。

この街で生まれ育った引越会社で働くコリンは、1年間の保護観察期間の残り3日間を無事に乗り切ることだけを考えていた。だがある夜、白人警官に追われた黒人男性が背後から撃たれ死亡する現場を目撃。時を同じくして相棒のマイルズは、“妻と子どもを守るため”との名目で銃を購入した。

『ブラインドスポッティング』(C)2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED
その日以来、銃撃された見ず知らずの男性のことが頭から離れなくなってしまったコリン。刑務所には二度と戻りたくないし、恋人とも仲直りしたい、人生を立て直したい彼はあと2日、1日と保護観察が終わるまで怯えながら待つことに。

その一方で、急進的組織“ブラックパンサー党”結成の地としても知られる街は急速に変わりつつあり、近隣のシリコンバレーから流れる富裕層に合わせてバーガーショップがヴィーガンバーガーを売り始めたり、ブラックカルチャーに憧れる“ヨソ者”たちが増えたりすることにマイルズは苛立っており、危なっかしくて仕方がない。

『ブラインドスポッティング』(C)2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED
同じ出来事に直面しても、見えているものはそれぞれに違うことを示すタイトル「ブラインドスポッティング=盲点」のごとく、この2人の立場の違いが次第に顕在化していく。実際に高校からの友人である、コリン役ダヴィード・ディグスとマイルズ役ラファエル・カザルはさすがのコンビ力で、脚本も共に手掛けている。2人が書いたクライマックスに吐露されるコリンの心情は、いまこそ直視すべきもの。

『ブラインドスポッティング』(C)2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED
各種配信サイトにてレンタル配信中


『ヘイト・ユー・ギヴ』友の死に声を上げる女子高生


『ヘイト・ユー・ギヴ』 (C) APOLLO
『フルートベール駅で』の事件をヒントした「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ」を、『しあわせの隠れ場所』の製作陣により映画化。今作も劇場未公開作品ながら、いま改めて高い関心が寄せられている1作。

主人公は私立学校に通う、スターという名の黒人の女子高生。白人のボーイフレンドや白人の友人たちの前では、地元にいるときとは別人のように振る舞っている。父は元ギャングで、スターや兄弟は白人社会を生き抜いていく術を教え込まれてきた。

『ヘイト・ユー・ギヴ』 (C) APOLLO
しかし、地元でのあるパーティの帰り、幼なじみのカリル(『デトロイト』のアルジー・スミス)に車で送り届けてもらう途中、目の前で彼が白人警官に射殺されてしまう。警察はカリルがドラッグの売人だったことを問題視し、警官の行為を正当化しようとしていた。真実の“目撃者”であるスターは、抗議活動を行うという黒人女性弁護士(イッサ・レイ)に賛同していくが…。

『ヘイト・ユー・ギヴ』 (C) APOLLO
今作でも理不尽な暴力によって植え付けられたヘイトは、その次の世代にも脈々と受け継がれてしまう負の連鎖を浮き彫りにする。

とはいえ、今作が現代的なアップデートともいえるのは、ひとりの女子高生スターがその負の連鎖に待ったをかける存在となること。スターとカリル、そしてもう一人の幼なじみを繋いでいたのは、「ハリー・ポッター」というグローバルに支持された白人の文化であることも新しい。ハリーの得意技は「武器よ去れ」だ。前述のジョン・ボイエガも、スピーチで「平和的な、組織的な抗議を」と強調している。

『ヘイト・ユー・ギヴ』 (C) APOLLO
そして、カリスマ性を感じさせるスター役アマンドル・ステンバーグの好演もさることながら、ギャングのボスに扮したアンソニー・マッキーにも注目したい。マーベル作品のヒーロー、ファルコンとしてもお馴染みの彼は、ボイエガと同様『デトロイト』にも出演していた。名声を手にしてなお、彼らがこうした作品にも出演し、声を上げ続ける意義こそ“重要”なのだ。
《text:Reiko Uehara》

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