※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

恋に傷ついたすべての者にエールを。『君は愛にふさわしい』

恋とはかなりやっかいだ。

最新ニュース コラム
PR
注目記事
(C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
(C) LES FILMS DE LA BONNE MERE (C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
  • (C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
  • (C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
  • (C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
  • (C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
  • (C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
  • (C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
  • (C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
  • (C) LES FILMS DE LA BONNE MERE
恋とはかなりやっかいだ。天にも昇るような喜びをもたらしたかと思えば、この世の終わりとも思える絶望をも突きつける。それでも、人は人に惹かれ、恋をせずにはいられない。そんなやるせなさと切なさ、理屈ではとうてい説明できない感情を描くことは、アムールの国、フランス映画界のお家芸ともいえるもの。そんな美しき伝統の系譜に、新たに加わったのが、新進クリエイターであるアフシア・エルジ監督が自ら脚本と主演も務めた映画『君は愛にふさわしい』だ。愛する恋人レミの裏切りにより深く傷ついたリラが、傷つけられた相手でも諦められず、揺れ動く気持ちを繊細に映し出す。



カンヌ国際映画祭やストックホルム国際映画祭など世界各地の映画祭で絶賛された『君は愛にふさわしい』。監督にして脚本、主演を手がけたアフシア・エルジという才能が瑞々しい感性で切り取っていくのは、恋に傷ついた経験を持つ誰もが共感できるリアルなエモーション。フランス映画は、恋によって引き出された感情をむきだしのまま、かつ叙情的に切り取ることで、説明のつかない人の想いをリアルに表現することをひとつのスタイルとしている。だが本作は、愛に寛容で、自由奔放、そして官能的な“ザ・フランス映画”らしさを継承しつつも、これまでとはひと味違うフレンチ・シネマの魅力を表出させた。

失恋の痛みを、友人と語り合う恋愛論やパーティで紛らわしたり、呪術師を頼ったり、他の誰かとデートしたり、時には出会ったばかりの人と体を重ねたり。ビデオチャットやマッチングアプリを駆使した付き合いなどを通して、現代のパリっ子たちの現代的かつ開放的な恋愛事情をも映し出す。同性愛や複数でのラブシーンなどエロティックな要素を取り入れたタブーのない映像表現も、彼女の師匠であるアブデラティフ・ケシシュ監督の代表作『アデル、ブルーは熱い色』を思わせるモダンなムードをまとっている。


だが、そういった設定以上に本作に新鮮味を加えているのは、どう気を紛らわそうとしても辛い恋を見限ることができず、後にも先にも動けなくなったリラが、前に進んでいくために必要な“命綱”のようなものをたぐり寄せる姿を描いているからだ。リアルな感情を切り取るフランス映画では、予定調和的なエンディングはあまり好まれない。観る者の感情を限定することを嫌うからだ。本作は、主人公の行く末こそ決め込んでいないが、痛みを経てヒロインが大切な何かを見つけていくであろう未来を、美しく暗示してくれている。

それに一役買っているのが、フリーダ・カーロの詩の一篇。映画のタイトルにもなっている「君は愛にふさわしい」だ。エルジ監督は、この詩にインスパイアされて本作を制作。「誰もが経験したことがあるもの。理解できるものが何もないときに、何が起こっているのかを理解しようとする女の子についての物語」と本作を称している。「別れた後には、否定や希望、嫉妬、怒りがあり...ほとんどがコントロールできなくなる。リラは不可解な行動をします。それは苦痛が狂気につながるから。彼女の身近な人からのアドバイスは何の役にも立たず、彼女は聞く耳を持たない。効き目はないし、心は閉ざされたままで解決策は何もない。全てはリラ次第なんです。助けを求めはするが、それは何の役にもたたない。彼女は自分と自分の意志に頼ることでしか乗り切ることができないのです」

失意の中で、フリーダの言葉だけがリラの心に届くのはきっと、ズタズタになった自尊心を救えるものは何かを教えてくれた唯一の存在だからなのだろう。大切なのは、自分自身が尊敬に値すると信じること。そこから生まれた自由な精神のみが、自らを救う。それがフリーダからのメッセージなのだ。


劇中で紹介される詩には、「愛」とは「敬意」のひとつの表現であることが、美しく優しい言葉で綴られている。そこには、波乱に富んだ人生と愛の日々を送りながらも、尊厳を手放さなかったフリーダの凜々しい精神が読み取れるのだ。その詩は、恋愛で傷つき俯いていたどれだけの人々に、顔を上げる勇気を与えてきたことだろう。
 リラにもそのきっかけをくれるフリーダの詩は、いわば恋する者へのエールだ。この詩にインスパイアされた本作にも、同様の優しさがある。だからこそ本作は、アンニュイなムードに満たされたフランス映画を好む人だけでなく、今まさに切ない恋心に引き裂かれそうな人々、これから恋を知る若い人々にも観て欲しいと願っている。


本作のように、映画愛好家はもちろん、初心者までも虜にしそうな作品を観ていると、
フランス映画を「ちょっと難解で苦手」、そんな風に思っている若い人にも、ぜひもっと身近に感じてほしいと思う。気軽にアクセスできるTVで放映されるとなれば、親しむ機会も増えそうだ。

カンヌ国際映画祭やストックホルム国際映画祭など世界各地の映画祭で絶賛された『君は愛にふさわしい』は、9月24日(木)からAmazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」で独占日本初公開されるという。通常は劇場公開された作品を最速で放送。だが本作は特別にスターチャンネルの配信&放送で初公開が決まったという。本作公開を記念して、強い女性たちを描いてきた各時代の作品『エヴァの匂い』 『モーガン夫人の秘密』 『愛人/ラマン』も特集放送される。

STAR CHANNEL MOVIESは、日本初の映画専門チャンネルとして、長年にわたり数多くの作品を放送し続けてきたスターチャンネルの映画レーベル。独自の視点で世界中からセレクトされた世界の新作が家に居ながらにして、観られるのだから嬉しい限りだ。お家時間をもっと充実させたい今、世界の良質映画がラインナップされたスターチャンネルで、自宅を特等席にしつらえてみてはいかがだろう。


『君は愛にふさわしい』を観る
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

+ 続きを読む

特集

【注目の記事】[PR]

特集

page top