多くの人がぶつかるビザの壁をどう乗り越えるか?
――多くの外国人が、アメリカでの就労に関して直面する大きな“壁”ですね。
はい。できる限りのことはしたので、諦めて日本に帰国することも考えました。そんな時、車を運転していたら偶然、映画・TVスタジオのキャリアフォーラムの広告を見つけたんです。もうどんな可能性も試してみようと足を運びました。ところがそのフォーラムはクリエイティブ系の仕事をする人に向けたものではなかったんですけど…(苦笑)。でもそこで、ワーナーブラザースの人事の方にダメ元でポートフォリオを広げて、熱意を見せたんです。そしたら、私のアプローチに圧倒されながらも私がデザインした手作りの名刺を受け取ってくれて、その半年後に奇跡的にその人事の方から「新しくできたTVマーケティングのクリエイティブ部門に空きがあります」と連絡があったんです。そしてクリエイティブ・ディレクターとの面接の機会をいただき、ワーナーブラザースの「World Wide Television Marketing 」という部署で働き始めることになりました。
過去の経験から、労働ビザの依頼を採用面接の時点でするのは難しいことを学んだので、その時は、OPTという学生終了後1年だけ働けるビザで仕事を始めました。心の中では、大手の映画スタジオであれば、ビザを出してくれるんじゃないかという思いで、自分のスキルをアピールするために必死に働きました。そして半年後、タイミングを見てクリエイティブ・ディレクターに労働ビザのスポンサーになることを依頼したんです。
ところが期待は裏切られ、この部署ではビザのスポンサーはできないと断られました。労働ビザのスポンサーになる会社はお金の負担と厄介な手続きが必要となるので、新しい部署ではそこまでする余裕がないとの理由でした。ただその時「でもこの部署であなたをキープしたいので、もし自分でなんとかビザを手配できるのであれば、引き続き採用することを約束します」という言葉をいただきました。その言葉を信じて、なんとかしてビザを自分で取得しようという思いが募りました。そこで、広告や口伝で探した弁護士に相談に行き、やっとの思いで自分でデザイン会社を起業して、投資家ビザを取得することができました。
ただし投資家ビザの更新はとても難しかったので2年後、新しい弁護士をまた探し、結果的に通常は困難と言われているアーティストビザの取得に成功しました。アーティストビザとは科学や教育、事業、スポーツの分野における活躍が顕著な外国人や芸術、映画、TVの分野で優れた才能を持つ人に発行されるビザで、それまでの仕事の成果を見てくれたクリエイティブ・ディレクターをはじめ、他の上司も私のアーティストビザの取得を支援してくれました。