【映画と仕事 vol.6 後編】プレゼンの連続!過酷なコンペティションを経て…ハリウッド在住の日本人デザイナーが語る映画ポスター制作

映画の世界に携わる人たちにお仕事の内容について根掘り葉掘り聞く「映画お仕事図鑑」。連載第6回目となる今回、ご登場いただくのは、海を渡りハリウッドで映画のポスターのデザイナーとして活躍されている暁恵ダニロウィッチさん。

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映画のタイトルやコピーは手書きしたものをMACに取り込んで加工することがよくあります。
  • 映画のタイトルやコピーは手書きしたものをMACに取り込んで加工することがよくあります。
  • インスピレーションとなっている主人の作品の一つです。
  • 暁恵ダニロウィッチさん
  • 暁恵ダニロウィッチさん
  • いつも私の仕事を支えてくれているアーティストの主人です。カルフォルニアは山も海もあるので、頻繁にハイキングやキャンプに行きます。
映画の世界に携わる人たちにお仕事の内容について根掘り葉掘り聞く「映画お仕事図鑑」。連載第6回目となる今回、ご登場いただくのは、海を渡りハリウッドで映画のポスターのデザイナーとして活躍されている暁恵ダニロウィッチさん。

インタビュー【後編】では現在、在籍している映画・TVの広告デザイン会社GRAVILLISのポスター制作の仕事の詳細についてお聞きします。

暁恵ダニロウィッチさん

アイディア出しとプレゼンの連続! 過酷なコンペティション


――「GRAVILLIS」でのお仕事、ポスターデザインの流れについて詳しく教えてください。

まず“ブリーフィング”というのがあって、クリエイティブ・ディレクターとアート・ディレクターから「こういう仕事が来ました」という説明があります。そこで、映画の趣旨やテーマ、ターゲットなどマーケティングに関する情報、また作品によってはスクリーニング、台本、そして写真が渡されます。

それをもとに各デザイナーがそれぞれ、作品について調べ、アイディアシートというものを作ります。これは、インターネットや本などから、その自分のポスターデザインのアイディアに役に立ちそうな素材を集めてスクラップにしたもので、それを参考にラフなポスター案を作ります。これをアート・ディレクターに見てもらうんですが、私はひとつの作品で5つくらいの案を提出して、3案通れば良い方で、「まだ足りない」と言われたら、さらにいくつかの案を出します。

そこでOKが出た案に関しては、アート・ディレクターがさらに上のクリエイティブ・ディレクターにプレゼンをします。クリエイティブ・ディレクターからもOKが出たら、実際に制作にとりかかります。

制作は基本的にPhotoshop(※画像編集ソフト)を使うんですが、最近はみんながPhotoshopを使うので飽きてきているというのもあって、手でペイントしたり、紙を切り貼りしたり、面白い加工をすることが流行っていますね。映画のロゴもデザインするんですが、既存のフォントを使うのではなく、自分で書いてみたりもします。私も書道の筆を使ってみたりとか、いろんな工夫をするようにしています。

映画のタイトルやコピーは手書きしたものをMACに取り込んで加工することがよくあります。
ひとつの作品に参加しているデザイナーは、私一人ではなく何人かいて、クリエイティブ・ディレクターはそこでOKを出したいくつかの案について、クライアントにプレゼンをします。そこでクライアントが「この案とこの案で」とOKを出した案は、さらにもうひとつ上のステージに上がっていく感じで、ラウンド2、ラウンド3…という風に勝ち抜き戦で進んでいきます。

当然、映画スタジオが仕事を依頼している会社はひとつではなく、いくつかのデザイン会社がコンペティションに参加しています。作品の規模にもよりますが、常に3~5社の代理店が、それぞれ20くらいの案を最終的なクライアント(=スタジオ)にプレゼンすることになるんじゃないかと思います。だから、クライアントは100案くらいの中から選択することになるんです。なので自分のアイディアが最終的に採用されることは、本当に、本当に限られてます。そんなことを毎日、毎日、繰り返してます(笑)。

――凄まじい競争率ですね…。

本当にすごいです…(苦笑)。だから、選ばれたときはすごく嬉しいですね。ただ、そこに行き着くまでに、いくつもの関門をくぐり抜けなくてはいけなくて、そのプロセスで自分だけでなくいろんな人の手が加えられるし、修正の依頼も来るわけです。例えば最近、ある有名な女優さんが出演している作品で自分の案が選ばれたんですけど、その女優さんの顔が笑っていないので、笑わせてくれという依頼があって、CGを使って無理やり笑わせたり(笑)。顔や手の向きを変えたり、服の色を変更することもよくありますね。

作品によっては予算がなくて、(劇中の)写真の撮影ができなかったという場合もあって、予告編の動画の中からスクリーンショットで画像を抜いたり、場合によっては写真を使わずにイラストにしてしまうこともあります。

――ちなみに仕事の受注は基本的にコンペティション形式なんでしょうか? 映画会社から直接、指名されることはあるんですか?

そういうこともありますね。ハリウッドで働く人の割合はいまだに白人が高いですが、私がいるGRAVILLISの社長は黒人で、もともと音楽業界にもいた経験があり、そうしたコネクションもあります。スパイク・リー監督や個人的に繋がりのあるミュージシャンが制作に関わっている作品の仕事をつながりで受注するケースもあると思います。

うちの会社に限らず、ハリウッド全体で見ても、コネクションの存在というのはすごく大きいと思います。このスタジオの作品はいつもあのデザイン会社が受注しているというケースもよくあります。私自身、ワーナーという大きなスタジオにいて、見てきた部分もありますが、(実力第一、成果主義と思われがちな)アメリカでも、仕事において人間関係が左右する部分はすごく大きいです。とはいえ、大きなスタジオの場合、予算も潤沢なので、その予算が(コンペティションなど)いろんな形で配分されるんです。だから、先ほども言ったようにコンペで最後まで勝ち抜く確率は決して高くはないんですが、勝ち目は少なくともコンペ自体にはうちの会社もどんどん参加するわけです。

《text:Naoki Kurozu》

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