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【映画と仕事 vol.10】『佐々木、イン、マイマイン』プロデューサー・汐田海平が新サービス「uni」をはじめたワケ  映画と観客の幸せな関係とは――?

映画業界に携わる人々にその仕事内容について話を伺う【映画お仕事図鑑】。連載10回目となる今回は、映画の製作から宣伝、さらには「uni」を通じた映画にまつわる発信まで、多岐にわたって活躍する汐田海平さんに話を聞いた。

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「Shake,Tokyo」汐田海平代表
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映画館を人でいっぱいにするために――失われつつある“評論”の役割を別の形で果たしたい



――特に「uni」の活動について、どのようなことをしているのか教えてください。

「uni」は、基本的には僕を含めて映画関係者と映画インフルエンサーのチームで構成されていまして、デザイナーやWEBに強いメンバーもいるので、その気になれば宣伝含めても全部を自分たちでできるチームです。

具体的な活動としては、決してWEBに特化しているというわけではなく、もともとはリアルなイベントをやるチームを作りたかったんです。でも昨年、それを始めようかという時期にコロナ禍が直撃してしまい…、そこでまずはオンラインでできることをやろうということになりました。

いまは、SNS上でキャンペーンを行なったり、受託した仕事だけとしてではなく、自分たち発信でいろんな活動をしてるんですけど、全ての活動に共通するコンセプトは「同じような映画が好きな人同士を繋げる」ということです。

人が繋がれば、そこにコミュニケーションが生まれるし、ひとつひとつの映画に対しての言葉も増える。そこでのやり取りを通じて、映画をより深く楽しんでもらえる状況になると思います。映画を観て、そして話すということが、映画をより立体的に楽しむことに繋がっていくと思うので、まずは、ある作品を「好き」だと言う人がいたとき、その人たち同士を繋げるためのキャンペーンや企画をやっていきたいなと思っています。

基本的にはTwitterとLINEをメインで活用していて「ハッシュタグキャンペーン」というのをやってます。このハッシュタグを使っている人は、ある程度、同じような映画が好きだということで、映画好きの仲間を探せるようになっています。それ以外ではオンラインでのトークイベントなどをZoomやYouTubeなどでやっています。

――宣伝活動というよりは、インフルエンサーによる自主的な発信をベースに繋がっているということでしょうか?

自主的な発信も多いですが、宣伝会社、映画会社からの依頼を受けて、試写会をやることもあります。

試写会って、宣伝さんからしたら、すごく重要な宣伝ツールで、そこで映画を観る人たちは、劇場公開前に最初に作品を観るお客さんなので、より多くの人に作品が広がるようないい口コミがほしいし、良いお客さんに観てほしいんです。「uni」は、Twitterや約8,500人が登録している公式LINE(7月26日現在)を通じて、その映画に合う観客、その映画にハマりそうな人を試写にお呼びするお手伝いをしたり、試写会でトークイベントなどを行ない、「uni」のメンバーとお客さんのコミュニケーションを生み出すこともできます。

――ニュースなどを通じて、広く作品の情報を広めるのではなく、インフルエンサーらを通じて、その作品に合うファンに作品を“届ける”という、まさに従来のWEBメディアとは違う形でのコミュニケーションですね。

あくまでも個人の集団なんです。それぞれのメンバーが思っている課題への取り組みやこういうイベントがあったらいいんじゃない?ということを実際にやっています。

――昨年、結成されてさらにこの6月に新たなメンバーが加わりました。メンバーについては汐田さんが勧誘を?

もともと、映画アクティビストのDIZさんと「やりたいね」と話してたのがきっかけです。それ以前からイベントに出演していただいたりしてて、DIZさんが「映画好きの人を繋げたい」というピュアな思いを強く持っていることも知っていたので、実現できることがないかなと思っていたんです。

当初、僕自身は、映画ファンが作るWEBメディアみたいなものをイメージしていたんですが、状況や過程を想定しながら話し合う中でイベントをやりながら人々を繋げていく方がいいという結論に至りました。DIZさんは既に映画のイベントをやっていて、そのメンバーにタカヒロさん(コネクター)、アリサちゃん(マーケター、プランナー)もいて、でも彼らだけではできないこともできるようにしたいということで、そこに映画宣伝のプロである琴美さん(PRコーディネーター)を誘って5人でスタートしました。

そこに今回、新たにもっちゃん(プランナー)、harucaさん(デザイナー)、しんのすけさん(サポートプランナー)、キミシマユウキさん(パーティーメイカー)という、インフルエンス力もあって、クリエイティブも強いメンバーに加わってもらって、より大きなものを動かせるチームになったと思います。

今回の新たなメンバーはひとりひとり「uniに入りませんか?」と勧誘しました。

uni
――インフルエンサーを通じて作品と人をつなげるとなると、ターゲットはやはり若者層となるのでしょうか?

現在の「uni」のフォロワーさん、LINE登録者の75%は女性で、年齢層は20代前半が一番多く、その次が20代後半、10代後半ですね。おそらく既存の映画メディアだともう少し年齢層は高めなので、若い映画ファンとコミュニケーションを取れることは強みかなと感じています。

ただターゲティングはそこまで重要視していなくて、あくまでもミッションは「映画が好きな人を増やす」ということだと考えているので、最初から「この層を狙って当てていく」ということを決めてはいないです。

純粋に映画ファンを増やしていくとなると、新しく映画を好きになるのは若い人たちが多いのは当然ですけど、最初からターゲットを決めて、その層が喜ぶことをやっていこうとは考えていません。「uni」のメンバーが好きなこと、やりたいことをやって、それによって結果的に好きな人が増えていくということが大事だと思ってます。

フォロワーや登録者を見ていると、年間に数百本も映画を観るような、かなり映画好きの人もいれば、地方に在住の方で、シネコンで年に数本観ているという方もいるし、本当にいろんな方がいますが、ポジティブに映画を楽しもうとするひとが多い気がしますね。

――最初に大学での評論から映画の世界に入られて、その後、作品の制作なども手がけられてきて、いま現在、「uni」でやろうとしていることは、映画の仕事の中でもかなりタイプの異なることですね?

評論から始まっているということで言うと、そもそもいま「評論」というジャンルそのものが、成立しにくくなっている現状があります。もともと、僕は評論が持っている機能ってすごく尊いもので、大事なことだと思っていて、お客さんに声を届けるだけでなく、作り手を育てていくという、両方に向けた言葉を紡いでいく仕事だと思っています。

ただ、その評論がいまほとんどなくなってしまっている。これだけSNSなど、情報の出口が多様化し、点在化したことで、ひとつの強い言葉が短くなってしまって、まとまった長い言葉でインフルエンスするというのが難しい状況になってしまったんですよね。僕自身、大学の頃からそうなっていくのを感じていて、評論をあきらめたのはそれも理由のひとつです。この先、評論家をやっていくとなると、相当の頭の良さ、特殊な能力がないと無理だぞって。

とはいえ、評論が持つ機能を果たすことは、いまやっているプロジェクトや事業を通してできるかもと思い、やっています。作品を作るということもそうだし、「uni」や「SHAKE」といったプロジェクト、事業など、いくつかのことをやっていく中で、結果的に評論しているのと近い役割を果たせる可能性があるのではないかなと。

いろんな思いがあって、評論の道をあきらめて、いまこうした活動をやっていますが、改めて考えると、自分の中にやりたいことのある種の一貫性は存在していて、いくつもの「点を打つ」ということなんだなと感じています。

「汐田ってヤツは、なんで映画を作ったり、uniをやったり、SHAKEをやったりしてるんだ?」って一見、バラバラなことをやっているように思えるかもしれませんが、実は僕の中で「映画業界がこう進んでいけばいいな…」と思っているものがあって、その流れを作るための僕なりの評論的な活動をしているつもりです。僕自身「評論の力」を信じていて、その役割はすごく大きいものだと思っているので、評論の持つ「お客さんを育て、作り手を育て、業界の流れを作る」という機能を別のやり方で挑戦しています。

――新体制の「uni」として、今後どのような活動を行なっていく予定なのか教えてください。

メンバーにSNSや新しいメディアに強い人が多いので、オンライン活動に重きを置いているように見えますが、僕らは「映画館で出会う」ということにすごく強い思いを持っていて、むしろそれができるならSNSも要らないと思っているんです。あくまでもツールとしてインターネット、SNSを活用してます。

僕自身、同業のいろんな人に「で、uniって何やってんの?」ってよく聞かれます。謎の集団みたいに思われがちなんですけど、決して難しいことをしようとしているわけじゃなくて、映画ファンを増やし、映画館に来る人を増やす試みだと。

いまはまだ、コロナ禍もあってなかなか難しいですが、自分たち発信のリアルなイベントも考えています。

とはいえ、既に映画が好きな人に喜んでもらうことだけを考えてたら、全体数は増えてはいけないんですよね。素敵な文化やカルチャー、コミュニティが日本にはたくさんあって、そのうちの何割かが映画を好きになってくれたら、映画ファンが増えるかもしれません。

もともと「あんまり映画は見ないけど本や音楽が好きな人」の何%かに映画館に来てもらえたらと考えて、コラボレーションで何かをやる。いままで映画業界に関わってこなかった人を巻き込む、映画をもっとソーシャルなものにしていくというコンセプトを突き詰めたいと思っています。

映画業界に限らず、どの業界も内に内にと閉じてしまいがちです。それによってジャンルが強固になる部分もあるけど、いまは外に外にが必要な局面と思っていて、映画をソーシャルにつなげていく動き、きっかけを生み出せたらと思います。

その一環として「uni」でやろうと考えているのが「子どもたちと映画を観る」ということ。映画好きを増やすコンセプトの一環でワークショップもやろうと思っています。

子どもと映画を作るというワークショップはあっても、子どもと一緒に映画を観て、感想を言うというワークショップって実は多くないんですよね。「uni」のメンバーで言うと、しんのすけさんは、若い人に向けて映画を発信していて、専門学校の先生もやっているので、そうした素養もある人です。子どもたちに映画の楽しさを知ってもらうというのは、新体制になった「uni」でやりたいことです。

――この記事で「uni」の活動について初めて知ったという読者も多いかと思います。最後に改めてメッセージをお願いします。

何よりもみなさんに楽しんでほしいと思っています。映画館に来たら絶対に楽しいよ!という活動をやっているので、ぜひそれを知っていただければと思います。

映画業界の同業者のみなさんには「よくわかんない存在」に見えているかもしれないですが(笑)、ちゃんと考えた上で、いろいろやりたいと思ってるので、どんどんコラボしていきましょうとお伝えしたいです。僕らはとにかくオープンに、ソーシャルでいたいと思っているので、一緒にやれそうなこと、お手伝いできそうなことがあればぜひお声がけください!

――『佐々木、イン、マイマイン』に続き、「Shake,Tokyo」として新しい作品を作る予定はあるんですか?

やります! 新作、動いています! ぜひお楽しみに!

CANVAS×uni「映画を見る、伝えるワークショップ」
■映画感想動画の作り方:8月23日(月)~24日(火)13:00 ~16:00
■映画ポスターの作り方:8月26日(木)~27日(金)13:00 ~16:00

Shake,Tokyo(シェイクトーキョー株式会社)
https://www.shake-tokyo.jp/

【uni】公式サイト
https://www.uni-cinema.com/

【uni】公式Twitter
https://www.uni-cinema.com/

【uni】公式Instagram
https://www.uni-cinema.com/

【SHAKE】公式サイト
http://shake-cinema.com/
《text:Naoki Kurozu》

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