話題の韓ドラはエミー賞受賞の海外ドラマを意識!?「ある日~真実のベール」「調査官ク・ギョンイ」

英ドラマ「Criminal Justice」を原作にした「ある日~真実のベール」、アジア版「キリング・イヴ/Killing Eve」を目指した「調査官ク・ギョンイ」に注目。

韓流・華流 コラム
「ある日~真実のベール」(C)2021.Chorokbaem Media/The Studio M.all rights reserved
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  • ベン・ウィショー Photo by Stuart C. Wilson/Getty Images
  • リズ・アーメッド/第93回アカデミー賞 Photo by Chris Pizzello-Pool/Getty Images
  • 「キリング・イヴ」(C)Sid Gentle Films

「愛の不時着」「梨泰院クラス」の次に名前が挙がるほど、日本でもヒットした「サイコだけど大丈夫」。主演を務めた韓国の人気俳優キム・スヒョンが次に挑んだのは、Amazon Prime Videoで日韓同時配信された、韓国の司法制度に斬り込む社会派犯罪ドラマ「ある日~真実のベール」だ。

身に覚えのない殺人で一夜にして容疑者となった大学生の冤罪と、彼に手を差し伸べ、真実を追う冴えない弁護士の物語――。どこかで聞いたような設定だと思ったら、2008年にイギリスBBCで放送され、主演ベン・ウィショーが国際エミー賞を獲得した「Criminal Justice/クリミナル・ジャスティス」(原題)の韓国リメイク。同作は2016年にアメリカHBOでも「ザ・ナイト・オブ」(別題:ナイト・オブ・キリング 失われた記憶)としてリメイクされており、主演のリズ・アーメッドがエミー賞を受賞。インドでもリメイクされている。

また、「調査官ク・ギョンイ」(Netflix配信中)は、「グレイズ・アナトミー」のサンドラ・オーと映画『最後の決闘裁判』『フリー・ガイ』の注目俳優ジョディ・カマーが主演するBBCアメリカ制作の人気ドラマ「キリング・イヴ/Killing Eve」の“アジア版を目指す”との触れ込みで期待を集めた作品。パク・チャヌク監督『親切なクムジャさん』や「宮廷女官チャングムの誓い」で知られるイ・ヨンエの4年ぶりのドラマ主演作になる。ここ1~2年、コロナ禍の影響もあって韓国ドラマに親しむ層は広がってきたが、いま欧米のTVドラマファンも気になるに違いない、この2作品に注目してみた。

「ある日~真実のベール」 Amazon Prime Videoにて配信中


大学生のキム・ヒョンスはある日、個人タクシー営む父親のタクシーを“拝借”して友人のパーティーに向かう途中、偶然乗車してきた魅惑的な女性ホン・グクファ(ファン・セオン)と知り合い、一晩を共にする。だが、翌朝目覚めてみると、彼女は凄惨な姿で刺殺されていた。

自分は何もしていない――。彼女の勧めで口にしたアルコールとドラッグで記憶があいまいなまま、ヒョンスは逮捕され、一夜にして殺人事件の容疑者となってしまう。見た目はスマートだが、嘘や駆け引きとは無縁、愚直な青年役は主演キム・スヒョンの得意とするところで、韓国ドラマならではの“泣き”の演技も含め、混乱と困惑の中で真実にすがる姿を繊細な感情表現で見せている。

そんなヒョンスの弁護を引き受けるのが、留置場に入り浸り、真実よりも生活のために“顧客”を探すどん底の三流弁護士シン・ジュンハンだ。今作では、このジュンハンを演じるチャ・スンウォンがすこぶるよい。足先にまで広がったアトピー性皮膚炎に悩まされ、サンダル姿で拘置所や裁判所をうろつき、キム・スヒョンが小柄に見えるほどの体格(188cm)でありながら飄々とした佇まいで可笑しみを与えている。性別違和を抱える刑事を演じたノワールアクション『ハイヒールの男』(2014)や、冷酷な組織のボスを演じた近作の映画『楽園の夜』(2021)からの変貌ぶりに驚く人も多いだろう。

弁護士ジュンハンは、ヒョンスの生真面目な人柄を知るにつけ、彼の無実を信じて真実を追うことになる。意識の変化の1つのきっかけは、別居中の娘の存在だ。娘の学校の職業体験授業で、“右手に罪の重さを量る天秤を持ち、左手には断罪のための剣を持つ”ギリシア神話に登場する正義の女神像について話すうち、弁護士としての誇りを思い出していく。その像が目隠しをしているのは理由があり、「罪を裁くときには人の外見や職業、性別などに偏見を持たない」という意味が込められているという。

この言葉から思い出すのは、パキスタン系イギリス人のリズ・アーメッドが容疑者となる学生、イタリア系アメリカ人のジョン・タトゥーロが弁護士を演じたHBOリメイク版だ。もともと「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」の故ジェームズ・ガンドルフィーニの渾身のプロジェクトだった本作は、9.11後、リズ自身も普段から訴え続けているイスラム教徒への偏見や差別の問題が色濃く描かれていた。

韓国版の主人公ヒョンスも、決して裕福とはいえないが、何とか大学に通いながらそれなりに遊ぶ友達もいる、ごく普通の男子学生だ。証拠品としてタクシーを押収されたため仕事を奪われた父親や、心配し憔悴する母、学校で校内暴力に遭い転校した妹など、家族への思いは、自身の無実と流されるまま法的権力に従うこととの葛藤を浮かび上がらせる。弁護士ジュンハンのヒョンスへの思いやりが父性のように映るのも、より韓国的かもしれない。


「愛の不時着」「地獄が呼んでいる」キャストも出演


さらに、本作の脇役陣には話題になった韓国ドラマに出演していたキャストが揃っている。ヒョンスは刑務所内で執拗な暴行や脅迫に遭うが、それを行うのが「愛の不時着」北朝鮮第5中隊のピョ・チス役や「ヴィンチェンツォ」の質屋役で人気となったヤン・ギョンウォン。今回は、“人のいい”イメージを裏切る狂気をまとっている。

刑務所の中で絶対的権力をもち、ヒョンスに何かと目をかけ“生き方”を伝授するト・ジテを演じるのは、韓国版「ゲーム・オブ・スローンズ」ともいえるKゾンビ時代劇「キングダム」の陰のヒーロー、ヨンシン役で知られ、『悪人伝』ではマ・ドンソクを襲うシリアルキラーを演じたキム・ソンギュ

ジュンハンと組む新米弁護士ソ・スジンは、「D.P.-脱走兵追跡官-」で短い登場ながら印象を残し、「悪い刑事~THE FACT~」「悪魔がお前の名前を呼ぶ時」に相次いで起用されて“怪物新人”と呼ばれるイ・ソル

そして、ヒョンスを起訴したい検事部長アン・テヒ役は、「地獄が呼んでいる」で最初に“試演”を中継されるシングルマザー役が記憶に新しいキム・シンロクだ。韓国ドラマ“あるある”の1つである、「様々な作品で見かけるバイプレイヤーに心惹かれがち」現象は今作でも顕在。海外ドラマ版を鑑賞済みで展開をわかっていても、こうした俳優たちの演技やケミストリーにいつの間にか引き込まれている。

「調査官ク・ギョンイ」 Netflixにて配信中


「キリング・イヴ」では、サンドラ・オーがMI6の捜査官イヴ、ジョディ・カマーが連続殺人事件の裏側で浮かび上がる暗殺者ヴィラネルを演じている。追う者と追われる者がコインの裏表のように共依存のような関係にあり、お互いの思考・行動を読み合うスリリングな展開や、ジョディ演じるヴィラネルの奇抜なキャラクターが大人気に。エミー賞に多数ノミネートされ、2019年にジョディが主演女優賞を受賞している。

今作「調査官ク・ギョンイ」でイヴに当たるのが、イ・ヨンエが演じる元刑事の保険会社調査官ク・ギョンイ。夫を亡くしてからというもの部屋に引き籠もってビデオゲームにハマり、アルコールが燃料のようなキャラクターだ。「イ・ヨンエ様やりすぎでは!?」とも思うが、この振り切れ具合が夫の生きていたころとのギャップを際立たせる。「キリング・イヴ」ではシーズン3冒頭の、大切な者を失ったイヴを思い起こさせる。

韓国ドラマでは「イカゲーム」の脱北者カン・セビョク(チョン・ホヨン)といい、「マイネーム:偽りと復讐」のユン・ジウ(ハン・ソヒ)といい、「地獄が呼んでいる」のミン弁護士(キム・ヒョンジュ)といい、ボロボロでトラウマと傷を抱えながら闘う女性が昨今の流行なのかも。しかも、華やかなキャリアウーマンや財閥の妻でもない、子どもの受験や夫の浮気に悩むセレブ主婦でもない40代女性が主人公になることは珍しい。

そして、そんなギョンイに元刑事としての“生きがい”を再びもたらすのが、ヴィラネルにあたる連続殺人犯ケイことソン・イギョン。名優キム・ユンソクの初監督映画『未成年』で絶賛され、「キングダム」ではゾンビよりも恐ろしい王妃役を演じたキム・ヘジュンが喜々として演じている。

ヴィラネルといえば、死に瀕した人の瞳から生気が失われていく瞬間を好むサイコキラーだが、ケイは自然死や事故死に見せかける手口は同じでも、義憤に駆られたように罪深き者たちを殺害している。そして、代わりに“殺してあげる”から別の殺人を手助けしてね、と被害者に仕向けていくのだ。一応、ゴヌク(イ・ホンネ)という仲間はいるものの、それも代理殺人で手懐けた関係。

また、レズビアンであるヴィラネルはシンパシーを感じたイヴにおそらく恋愛感情を抱いているが、ケイが唯一愛情を寄せていたのは親代わりの叔母ジョンヨン(ペ・ヘソン)のみ。その死以降は、自身の殺人の法則を無視して暴走し、無差別殺人を繰り返すようになり、やがて親愛の情はギョンイに向かっていく。

イ・ヨンエと「賢い医師生活」俳優のケミ


一方、ギョンイには、後輩の保険会社チーム長ナ・ジェヒや、優秀なチーム員ギョンス、ゲーム友達のサンタという仲間がいる。いずれも、素っ頓狂だが頭脳明晰で観察眼や推理力がずば抜けたギョンイを慕う者ばかり。ジェヒを演じるのが、「賢い医師生活」で主人公の妹イクソンを演じたクァク・ソニョン。ギョンス役は「D.P.-脱走兵追跡官-」のチョ・ヒョンチョル。サンタは新鋭のペク・ソンチョル。さらに、ギョンイにとっても、ケイにとっても宿敵となる女性を、「賢い医師生活」ロサ役のキム・ヘスクが演じている。ギョンイの亡き夫役は同じく「賢い医師生活」ガンヒョン先生役のチェ・ヨンジュンであり、ちょっとした同窓会状態だ。

このチームの手助けで導くギョンイの推理は、ときに演劇やアニメでデフォルメされ、OSTもクセになるクールさがある。観終えてみると、「キリング・イヴ」の要素はあれど似て非なるものであると気づく。むしろイ・ヨンエ版「SHERLOCK/シャーロック」で、「メンタリスト」なのかも? ぜひシーズン2を期待したい。

《text:Reiko Uehara》

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