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【ネタバレあり】『ユンヒへ』小樽は“暖かな色合い”に…ぬくもりが溢れる世界観の裏側

『ユンヒへ』で小樽パートの美術を担当した日本人スタッフが、雪国で暮らす人々の生活とぬくもりが溢れる世界観と、その撮影秘話を語った。

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『ユンヒへ』ゲストハウス (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
『ユンヒへ』ゲストハウス (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
  • 『ユンヒへ』ゲストハウス (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
  • 『ユンヒへ』ジュンとマサコの家 (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
  • 『ユンヒへ』マサコのカフェ (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
  • 『ユンヒへ』マサコのカフェ (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
  • 『ユンヒへ』マサコのカフェ (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
  • 『ユンヒへ』ジュンの部屋 (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
  • 『ユンヒへ』マサコのカフェ (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
  • 『ユンヒへ』マサコのカフェ (C)2019 FILM RUN and LITTLE BIG PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

韓国のシングルマザーのユンヒが、長い間、連絡を絶っていた初恋の女性ジュンから1通の手紙を受け取ったことから始まるラブストーリー『ユンヒへ』。本作でユンヒはジュンが暮らす北海道・小樽へと旅立つが、小樽パートの美術を担当した日本人スタッフが雪国で暮らす人々の生活とぬくもりが溢れる世界観について語った。


>>『ユンヒへ』あらすじ&キャストはこちらから

本作で日本パートの美術を担当したのは、美術/セットデザイナーの福島奈央花氏。演劇やダンスを中心に舞台美術家として活動した後に映画・広告・MVなどにも携わり、映画では『佐々木、イン、マイマイン』(内山拓也監督)の美術や『劇場』(行定勲監督)の舞台美術などを担当してきた。

福島氏が本作で主に手掛けたのは、小樽パートで登場するジュンと伯母のマサコが暮らす家ジュンの自室ジュンが経営する動物病院マサコがオーナーのカフェ、そしてユンヒとセボム親子が旅の途中で宿を変えたゲストハウスなど。それぞれの場所ごとに込められた美術的こだわりが伝わる、文字通り貴重な裏話が明かされている。

※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。

●暖色系の日本パート/寒色系の韓国パートの色分け


作品の美術については事前に、イム・デヒョン監督と韓国側の美術監督キム・ジニョン氏を交えた、オンラインミーティングが行われた。福島氏によると、その意見交換の中で日本のシーンと韓国のシーンでは、空間の色に違いを出していきたいという内容が話し合われたという。偶然にも、キム・ジニョン氏は韓国パートではユンヒとセボムの住む自宅寒色系のトーンで提案し、福島氏は小樽のジュンとマサコが住む家を温かみのある暖色系だと想定していた。それらの案は採用され、福島氏は、小樽の象徴ともいえるステンドグラスやシーンごとに配色を考えた花といったふうに、日本パートにおける美術の細かなプランを構築していったという。

●「驚きと尊敬の念を抱いた」ロケハン時の意外なエピソード


本作のクランクインを約1か月先に控えた2018年12月中旬に、イム・デヒョン監督をはじめメインスタッフたちとロケハンを開始。その後は韓国チームとはリモートでやりとりを進めながら撮影に向けての準備に入ったそう。そのロケハンで監督と初めて会った福島氏は、彼と交わした印象的なやりとりについてこう語る。

「その時、監督からスタッフやキャストに配布する台本の表紙のデザインについて、 “どのデザインがこの台本のイメージに合うか一緒に考えて欲しい”と相談を受けたのです。パターンはいくつかあり、どれも本当に素敵なデザインでした。クランクインが迫る時間のない中でも、こういったことにも一つ一つ丁寧に向き合う監督の姿勢を見て、驚きと共に尊敬の念を抱きました」と裏話を挙げる。その上で、福島氏は「このように監督の映画に対する深い愛情を感じられたことが、この映画を作るにあたり本当に大きかったです」とふり返った。 

●自然な暖かさを意識した照明


ジュンとマサコが暮らす家、ジュンの動物病院、マサコのカフェ、ホテルやバーなどで共通しているのが、照明として蛍光灯ではなくランプが多用されている点。福島氏によると、イム・デヒョン監督と照明監督からは「自然な暖かさの照明にしていきたい」という要望があったといい、このため、どのようなランプを採り入れるかについても事前に監督や照明監督にイメージの共有をしたという。

その狙いを福島氏は、「真冬の真っ白な雪景色を背景に温かみのあるランプを掛け合わせることで、外の冷たさと室内の暖かさ、その空気や温度のコントラストを表現したいと考えたのです」と明かす。

また、窓から差し込んでくる光の見せ方にもこだわりが。マサコのカフェとユンヒ&セボムが滞在するゲストハウスには、それぞれ窓ガラスにステンドグラス風のデザインを施したという。小樽の有名な硝子業者である北一硝子からインスピレーションを受けた福島氏は、一からデザインを起こした上でそれぞれの窓に彩りを与えていった。

●ジュンとマサコの家のこだわり


ジュンとマサコが暮らす家で、1階のリビングはその人間性や趣味の面でマサコの個性を見せることを重視したそう。そのカーテンは手作りで、マサコが好きなものに囲まれた、暖かさに包まれたような雰囲気のリビングとなっている。その上で、2階にあるジュンの部屋にある古い本棚や座卓も、その家にもともとあったものであることをイメージして配置されたという。 

福島氏は、これについて「ずっと昔からそこにあったようなどこか懐かしい雰囲気を大切にしたかったので、ジュンの部屋も座の空間にすることや、日本にしかないこたつ文化を取り入れるのはどうかと監督と事前に話し合いながら、イメージを固めて行きました」とポイントを明かす。

劇中登場するジュンの自室は、彼女がユンヒに向けて手紙を書いているシーンとして登場するが、他の場面と比べてもジュンが自身を素直に解放させている空間であるようにも感じられる。ジュンを演じた中村優子は、この部屋について、「部屋に入った時の第一印象は、マサコに守られたすごく温かくて居心地のいい部屋だというものでした」と第一印象をふり返る。

さらに、「例えば、ジュンが手紙を書いている座卓は、“もしかしたらマサコがずっと使っていた物をジュンも気に入って使っているのかもしれない”と想像させてくれます。ジュンの部屋ではあり、彼女らしくはあるんだけど、かえってリビングよりも、いかに彼女がマサコに無意識の中でも助けられ、支えられ、温めてもらっているのか…そんなマサコとの関係性をごく自然に漂わせてくれる空間だと感じていました」と、福島氏らが考え、作り上げたイメージを中村さんもそのまま感じ取っていたようだ。

●セボムへの想いが詰まったゲストハウス


一方、韓国から来たユンヒとセボムが小樽の旅の途中で、宿を変えた先が「ゲストハウス憩」だ。このゲストハウスは、ふたりに先んじて小樽入りしたセボムのボーイフレンド、ギョンスがセボムを想って選んだ宿ともいえる。福島氏はそれを踏まえて、「ギョンスは、セボムに喜んでもらえるようなゲストハウスを選んだのではないかと思うんです。だから、最初にふたりが滞在していた老舗旅館とはうって変わって、リメイクが趣味である彼らしく、彩りがあり、手作り感のあるゲストハウスの空間を提案しました」と明かす。

このゲストハウスの実際のオーナーからは、事前に壁の張替えや塗り替えも含めて自由にアレンジすることを許可されていたそうだ。そこで、オーナーが多く持っていた日本のアンティークの家具を生かし、その家具と彩りのあるゲストハウスの空間の融合を目指したという。一方で、温もりのある”手作り”にこだわるために、看板製作や全ての壁面の塗替えは外注せず、美術チームのスタッフが自ら手掛けた。

●ジュンの動物病院のポイントは?


ジュンが勤める動物病院は、暖色系の照明や木製のベンチ、花や様々な動物の置物など、温かみを感じられる空間であるのが印象的だ。福島氏によると、ロケ地となった動物病院の室内はもともとブルーの壁だったという。そこで、「ジュンとリョウコ(ジュンに想いを寄せる女性)の静かなふたりの会話の時間を、温もりのある印象にしたいと考え、暖色の色の壁面を作ることにしました。また小樽の一つの象徴でもあるステンドグラスを、額や小物などに取り入れています」とポイントを明かす。

●撮影中、一番印象に残ったシーンは?


さらに、福島氏が美術を施したのは室内シーンだけではなかった。小樽を代表する観光地で、本作の中でも重要なシーンのひとつが繰り広げられる小樽運河は、ロケハン当時、運河全体にブルーのLEDイルミネーションが施されていたという。イム・デヒョン監督と福島氏は、この運河を「どうにかして、暖色のイルミネーションに変えたい」と考え、韓国から膨大な量の照明を取り寄せた。そして、そのシーンの撮影当日、猛吹雪に襲われる中で運河にイルミネーションを施す作業が始まった。

長さ400mにも及ぶ運河の装飾であったが、施工当日は韓国、日本のほかのセクションのスタッフまで自主的に運河に集まり、スタッフ総出で運河全体に暖色系のイルミネーションを施したそう。「悪天候の中大変な作業ではありましたが、スタッフ皆の運河のシーン作りへの想いを改めて強く感じた、非常に心に残る光景でした」と福島氏は語っている。

『ユンヒへ』はシネマート新宿ほか全国にて公開中。

《シネマカフェ編集部》

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